直前講座 合否を分ける教採対策10の「新常識」(1)「暗記型」では対応できない昨今の教員採用試験

月刊『教員養成セミナー』前編集長/教育ジャーナリスト 佐藤明彦

過去10年ほど、各自治体の教員採用試験を見てきた中で感じるのは、どの自治体も「秀才型」の教員を求めなくなったことだ。教育課題を表層的なレベルで捉えず、深く踏み込んで理解している人物、あるいは理解しようとする人物を求めるようになってきている。

例えば、面接試験の定番質問の一つに、「教師になろうと思った理由」があるが、卒なく回答したいなら、あらかじめ回答を文字に起こして、暗記して臨めばよい。しかし、昨今の面接試験の質疑応答は「1往復」では終わらないことが多い。「中学時代の恩師に憧れて」と回答すれば、多くの面接官は「なぜ、憧れたのか」「どこが優れていたのか」などと、もう一歩踏み込んで質問してくる。「暗記型」の対策で本番に臨んだ受験者の多くは、ここで痛い目に遭う。

同様の傾向は、筆記試験においても見られる。全国で最も多くの受験者を集める東京都の教職教養問題を見ると、「暗記型」の学習では対応できない問題が多い。教育法規の問題の多くは法律名や条文を覚えるだけでは正答できず、教育心理にしても、人物名と実績名をセットで覚えるだけで正答できない問題が多い。単語カードなどを使って真面目に勉強してきた受験者にとっては何とも疎ましいが、そうした「秀才型」を採用側が求めなくなったことの表れと言えよう。

背景には、学校現場における児童生徒の多様化、学校や教員が担う役割の肥大化などがある。児童生徒や保護者の言動、要求に対し、対応の模範や正解を安易に求めず、一歩踏み込んで本質に迫ろうとする対応力が、現場には求められているのである。

教員志望者に必要な心構えの一つは、「暗記型」の試験対策から脱却を図ることであろう。それこそ、現状の学校教育をさまざまな観点から俯瞰(ふかん)し、自分なりの課題を洗い出し、解決に向けてどう実践するかというレベルまで、教育観や教師観を深めておく必要がある。経験のない大学生にとっては容易ではないが、少なくとも「踏み込んで理解しようとする姿勢」を持っていない者は、振るい落とされると考えた方がよい。新学習指導要領が掲げる「社会に開かれた教育課程」や「主体的・対話的で深い学び」を実践する上でも、「暗記型」の秀才はいらないというのが、採用側のメッセージなのである。