直前講座 合否を分ける教採対策10の「新常識」(2) 額面通りに受け取れない「競争倍率」

月刊『教員養成セミナー』前編集長/教育ジャーナリスト 佐藤明彦

各自治体から続々と、今年度実施試験の志願状況が公表されている。全体として言えるのは、志願者数が減少傾向にあること。採用見込み数を減らした自治体においても、志願者数の大幅減によって倍率が下がるという状況が、各地で見られる。

全国最多の志願者数を集める東京都では、小学校の競争倍率が2.7倍となり、前年度(3.6倍)より0.9ポイント下がった。中学・高校に至っては前年度の9.7倍から半分近い5.0倍にまで低下するなど、過去に類をみない大幅低下となった。大阪府も、中学校で5.9倍(前年度7.7倍)、高校で11.7倍と(前年度13.1倍)と、軒並み倍率を下げている。その他の自治体も、中学校と高校を中心に、志望者減が目立つ。

志願者減の背景は、大きく二つある。一つは、景気が良好で民間就活が「売り手市場」な点。もう一つは、教員の過重労働をめぐる報道により、「学校=ブラック」というイメージが広がっている点だ。そんな状況がここ1~2年続く中で、大学2年あるいは3年進級時に、早々と教職課程の履修から離脱した学生も多い。

2018年度実施教員採用試験の主な自治体の競争倍率等(全受験区分共通)

教員採用試験の倍率低下については、教員の質的低下を招き、公教育の基盤を揺るがしかねない事態だと、深刻に捉える人もいるだろう。一方で、今年度受験者の中には、倍率が下がったことに安どしている者もいるに違いない。しかし倍率の低下は、額面通りに受け取らない方がよい。倍率が半分になったからといって、難易度も半分になったという話には決してならないからだ。

そもそも、教員採用試験の受験者は、大きく3タイプに分かれる。一つ目は、大学入学時から揺るぎない思いで教員を目指し、着実に対策を積んできたタイプ。二つ目は、教員か民間かと揺らぎながら、3年の秋ごろに決断したタイプ。三つ目は、「何となく」教員免許を取得し、直前になって「取りあえず」志願したタイプだ。

中学校や高校の受験者の中には、2タイプ目、3タイプ目の者も多く、今年度はそうした者たちがこぞって民間就活へ回った可能性が高い。逆に言えば、試験対策をみっちりと積んできた1タイプ目の受験者数は、さほど変わっていないのではないかと推察される。

大学受験においても、倍率が大学の難易度(偏差値)と比例しているわけではない。教員採用試験も同様、倍率の上下に一喜一憂せず、「自分との戦い」を大切にすることが、合格への近道だと言えよう。