教員養成の立場から見た教員採用の課題 ―教員採用試験の倍率低下を考える(下)人材発掘・育成に丁寧に取り組む

帝京科学大学教育人間科学部教授 釼持 勉

今夏の教員採用試験倍率低下の状況を前回示した。ここに至るまでの経緯を明らかにしておきたい。

(1)人材育成が滞っている

教員の大量退職、大量採用時代を迎えて久しい。その中で「若手が若手を育成する」「指導体制の未確立」「教職に就いて間もなく退職」などの課題が改善されない。人材育成を担当する教員層が薄く、行き届かない状況も散見される。

(2)大学の出口論が明確にされていない

教員養成系大学はもとより、採用試験の合格が第一の目的となり、4月には教壇に立つ者を育成する感覚に乏しい。初任者は「学級経営が分からない」「学級をまとめるとは」「最初の保護者会では何をすればよいか」など多くの課題を抱えている。大学における教員養成のビジョンが問われている。

(3)教育委員会の入り口論は明確にされているか

教員採用・配置が主要目的であるが、4月に着任するまでの研修の在り方に工夫が求められる。合格者にしか事前研修の機会はない。学校によっては臨採など合格者以外の初任者が多く、同じスタートが切れない状況がある。特に、中学校においては、学級経営をほとんど学んでいないまま教壇に立つ初任者もいる。

(4)学校現場の入り口論は確立されているか

4月の着任時において、「何からすれば分からない」「名前の呼び方はどうすればよいのか」などのレベルの初任者が少なくないのが実情である。初任者に対しての「ゼロからの発信」、学校における育成計画が不可欠であるが、指導層が薄いため適切な指導が行われていない状況がある。

(5)「教師の働き方改革」は機能しているか

小・中学校の平均勤務時間が約11時間と公表されている。現在、現場において時間管理は推進されているが、元来それをしてこなかった教員にとっては効率よく仕事をする手だてはなかなか得られないものである。結果として、別の時間に校務を行うなど、非効率な現状がある。中学校の部活動では、国を挙げて外部人材の活用など進められてはいるが、マンパワー不足の解消には至っていない。

こうした状況の中で、教員の志願者増加の道筋を描くのは困難であろう。まず、関連各機関が「人材発掘・人材育成の青写真を描く」ことに丁寧に取り組む必要がある。現場では、教職に携わる者が「仕事を楽しむことは後輩の意識を変える力になる」ことを胸に、日々の教育活動に取り組みたい。

教員採用試験倍率低下は教員界に赤信号がともっている状況であることを認識してもらいたい。そして、その改善のために、第一歩を踏み出そう。

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