着任前講座 最新が分かる10の学校事情(4)「忙しさ」と時間外勤務の実情


月刊『教員養成セミナー』前編集長 教育ジャーナリスト 佐藤 明彦

学校の先生は忙しい――。教員志望者であれば、そうしたうわさは各方面から耳にしていることでしょう。実際、日本の教員の労働時間は、世界的に見ても長いというデータが、「OECD国際教員指導環境調査」により明らかになっています。

どのくらい忙しいかというと、1日当たりの平均労働時間が小学校11時間15分、中学校11時間32分(文科省「教員勤務実態調査」)。正規の勤務時間は1日7時間45分なので、毎日4時間近くも残業していることになります。月80時間程度。いわゆる「過労死ライン」に相当します。

もちろん、介護職員や長距離トラックの運転手など、それ以上に激務だといわれる職業もあり、教員だけが突出して長いわけではありません。しかし教員の場合は、実質的に超過勤務手当が支払われていないわけで、そうした中でこれだけの時間外勤務をさせている実情は、大問題だと言えます。労働基準法の順守をうたっている国が、裏側では膨大なサービス残業をさせており、早急な改善が必要です。

一方で、学校を「ブラック企業」のごとく報じる記事もありますが、この表現はやや行き過ぎているように思います。利益追求を目的に従事者に強いプレッシャーをかけ、半ば使いつぶしていくような組織風土は、学校にはありません。批判を恐れずに言えば、一部の教員には自主的に残業しているような状況も見られます。少なくとも「ブラック企業」のような殺伐とした雰囲気はないので、その点は心配しないでいただきたいと思います。

なぜ、「自主的に」残業するかといえば、少しでも良い授業、良い指導をしたいと考えているからです。子供の成長が見たい、喜ぶ顔が見たいとの理由で、多くの教員がプラスアルファの仕事に労を惜しみません。超過勤務手当が出るわけでもないのに、ある意味では非常に奇特な人たちです。裏を返せば、教員という職業には、それだけのやりがいや達成感があるのです。

とはいえ、公教育が教員の善意によって支えられている現状が、望ましいはずはありません。国もようやく重い腰を上げ、「スクール・サポート・スタッフ」や部活動指導員などの配置を進めています。こうした改革の成果がどのくらい出るかは未知数ですが、これから教員になる人は1人で仕事を抱え込まず、こうした人たちと連携・協力していく姿勢が求められます。