着任前講座 最新が分かる10の学校事情(9)保護者トラブルと対処


月刊『教員養成セミナー』前編集長 教育ジャーナリスト 佐藤 明彦

自分が担任する学級にモンスターペアレントがいたらどうしよう…。着任を控えた人の中には、そんな不安を抱いている人もいることでしょう。確かに、保護者から寄せられる苦情に学校が追い詰められるような話は、現職の先生からも時々耳にします。

以前、夜の10時から明け方まで延々と校長室に居座り、校長と教員を罵倒し続けた保護者の話を、ある学校関係者から聞きました。その保護者は、トラブルが起きるたび、「こんな学校初めてだ!」との捨てぜりふを吐き、転校を繰り返していたそうです。

ある先生からは、児童を座らせようと肩に手をかけたところ、「息子が首を絞められた」と弁護士を連れて学校へ乗り込んできた保護者の話も聞きました。他の児童の証言もあって先生の嫌疑は晴れましたが、状況次第では職を失いかねない事態といえます。

保護者トラブルに関する公的な調査データはありませんが、多くの関係者は「増えている」と言います。背景には、保護者の権利意識の高まりや教員の社会的地位の低下、保護者や子供の多様化などがあるのではないかと言われています。最近は、保護者トラブルのための相談窓口を設置する教育委員会も増えています。

しかし誤解してほしくないのは、「モンスター」と呼ばれる保護者は、ごく一握りにすぎない点です。多くの保護者は教員と良好な関係を築き、教育活動に協力的です。はなから敵対心むき出しでくるような保護者は、1校に1人いるかいないかです。

個人的には、教員になる人には「モンスターペアレント」という言葉を使ってほしくありません。「モンスター」は人格を否定する言葉ですし、この言葉を平気で使うようになれば、保護者との間に壁が作られていきます。

保護者からの苦情の中には的を射ていて、きちんと耳を傾ければ学級経営にプラスになるものも少なくありません。正当な苦情を「面倒」と放置した結果、トラブルに至るケースもあります。そうした保護者に「モンスター」のレッテルを貼るようなことは、決して許されないことだと思います。

学級経営や学習指導は、保護者の協力なくして円滑に運ぶことができません。なかなか難しいかもしれませんが、できる限り保護者と真摯(しんし)に向き合い、子供の成長という目標を共有しながら、良好な関係性を築いていっていただきたいと思います。