着任前講座 最新が分かる10の学校事情(10)「学力」を高める取り組み


月刊『教員養成セミナー』前編集長 教育ジャーナリスト 佐藤 明彦


論文試験の「定番テーマ」の一つに「確かな学力の向上」があります。論文対策において、このテーマで書いた受験者も多いことでしょう。「学力」を高めることは、学校教育において重要な課題の一つと捉えられています。

実を言うと、2000年ごろまでは現在ほど「学力向上」という言葉が、教育界で飛び交ってはいませんでした。むしろ「個性の尊重」や「特色ある教育」など、十人十色それぞれの良さを引き出す教育が叫ばれていたように思います。98年告示の学習指導要領で示された「生きる力」は、そうした考えに基づいたものでした。

そうした空気感が一変したのは、99年に『分数ができない大学生』という本が出版された頃からでした。世間的に学力低下への不安が広がり、「ゆとり教育批判」が吹き荒れました。その結果、02年には文科大臣が「学びのすすめ」と題した声明文を発表し、03年には学力向上を目的として学習指導要領の一部改正も行われました。今回の新学習指導要領で、文科省が「学習内容の削減はしない」と繰り返し強調していたのは、当時の苦々しい思いがあるからにほかなりません。

そうした経緯もあり、「学力向上」は重要課題と捉えられています。毎年4月には「全国学力・学習状況調査」が行われ、自治体単位でも独自の学力調査がさまざまな形で実施されています。大阪市が学力調査の結果を教員の人事評価に反映する方向性を示すなど、勤務する自治体や学校によっては、「学力向上」を強く意識した教育活動が求められる可能性もあります。

学力の定着は大切ですが、意識してほしいのは実社会とのつながりです。教科書の内容をやみくもにたたき込み、定期テストで瞬間最大風速的な成績を出させる指導は、実社会を生きる力とリンクしません。今後は少しずつ、知識・技能中心の学力が入試でも通用しなくなっていくことでしょう。

皆さんにも子供の頃、「なぜ勉強しないといけないのか」と考えた人がいるでしょう。その疑問は今も多くの子供が持っています。なぜそう思うのか、それは学習内容と実社会との間に乖離(かいり)があるからだと私は考えます。学んだことが「役立つ」と実感できれば、子供たちは主体的に、深く学ぼうとし、勉強することに疑問を抱きません。これから教師になる皆さんは、そうした視点を持って、「確かな学力の向上」に取り組んでください。

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