神谷正孝の5分でわかる教育時事2018~2019(4)新学習指導要領を攻略する(3)

kei塾主任講師 神谷 正孝

「児童生徒の発達の支援」をチェック

新年あけましておめでとうございます。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。ここから試験本番までは、あっという間です。しっかりと対策をしましょう。

さて、第4回目の今回も新学習指導要領の「総則」について確認します。

前回は、総則のうち「第2 教育課程の編成」「第3 教育課程の実施と学習評価」を取り上げましたが、今回は引き続き「第4」を確認していきます。

◆総則「第4 児童生徒の発達の支援」について

この項目は、新学習指導要領の基になった答申資料の中で示された「改善の6つの視点」のうちの一つである、「児童生徒の発達をどのように支援するか」という項目に即したものです。

学習指導要領では、まず、「児童[生徒]の発達を支える指導の充実」として、「①学級経営、児童[生徒]の発達の支援②生徒指導の充実③キャリア教育の充実④指導方法や指導体制の工夫改善など個に応じた指導の充実」の4点について示しています。このうち、③については、明確な形で「キャリア教育」を位置付けました。③以外は、以前から示されていた内容ですが、記述が見直されています。

そのキャリア教育ですが、「児童[生徒]が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図る」ことが示されています(高校は、「その中で、生徒が自己の在り方生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的かつ計画的な進路指導を行うこと」を付記)。キャリア教育は「特別活動」を要とすることが明確化されました。

続いて、「特別な配慮を必要とする児童[生徒]への指導」として、「①障害のある児童[生徒]などへの指導②海外から帰国した児童[生徒]などの学校生活への適応や、日本語の習得に困難のある児童に対する日本語指導③不登校児童[生徒]への配慮」が示されています(中学校では④「学齢を経過した者への配慮」として、夜間中学について示しています)。

①については、従来、特別支援学校で作成義務が課されていたものの、普通学校では「例示」にとどまっていた「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」について、普通学校における特別支援学級在籍児童生徒や通級指導を受けている児童生徒について、それらの作成を義務化しました(これら以外の児童生徒で特別な支援を必要とする児童生徒については作成を「努力規定」としています)。

③の不登校については、対応の基本方針である「連携ネットワークでの対応」を踏まえ、「保護者や関係機関と連携を図り、心理や福祉の専門家の助言又は援助を得ながら、社会的自立を目指す観点から、個々の児童[生徒]の実態に応じた情報の提供その他の必要な支援を行う」ことを示すとともに、長期欠席児童生徒について、その実態に配慮した「特別の教育課程」を編成することも示されています。

なお、高校において、「①特別な配慮を必要とする児童[生徒]への指導」については、2018年度より始まった「通級による指導」についても規定しています。これは重要な項目なので、しっかり押さえておきましょう。

◇ ◇ ◇

これまで3回にわたり学習指導要領の前文・総則を確認する中で、筆記試験の要点になりそうなところを中心にチェックしてきました。総則では、この後、「第5 学校運営上の留意事項」「第6 道徳教育推進上の配慮事項」と続きますが、一読して語句を押さえる程度でよいでしょう。次回からは、別の重要テーマを取り上げます。

【例題】

1 次の文は小(中)学校学習指導要領総則(平成29年告示)からの抜粋である。空欄に当てはまる語句を書きなさい。

学習や生活の基盤として,教師と児童[生徒]との( ア )関係及び児童相互のよりよい( イ )関係を育てるため,目頃から学級経営の充実を図ること。また,主に集団の場面で必要な指導や援助を行う( ウ )と,個々の児童の多様な実態を踏まえ,一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行う( エ )の双方により,児童[生徒]の発達を支援すること。
あわせて,小学校の低学年,中学年,高学年の学年の時期の特長を生かした指導の工夫を行うこと。
※中学校は「あわせて」以下は記載なし

解答 ア:信頼  イ:人間  ウ:ガイダンス  エ:カウンセリング

解説 学習指導要領総則「第4 児童(生徒)の発達の支援」より抜粋。ガイダンスとカウンセリングは以下の通り区別しておこう。

○ガイダンス:児童[生徒]の発達の特性や教育活動の特性を踏まえて,あらかじめ適切な時期や機会を設定し,主に集団の場面で必要な指導や援助を行う生徒指導の機能。
○カウンセリング:個々の児童[生徒]が抱える課題を受け止めながら,その解決に向けて,主に個別の会話・面談や言葉がけを通して指導や援助を行う生徒指導の機能。

2 個に応じた指導の一つの指導方法である「学習内容の習熟の程度に応じた指導」を行う上で,配慮事項として適当でないものを、次の1~5から1つ選びなさい。

  1. 学習集団の編成にあたっては,レディネステスト等を行い,児童生徒自身の自己評価に基づき,教師の助言を加え学習集団を選択させる。
  2. 児童生徒に対して,「学習内容の習熟の程度に応じた指導」の実施方法についてのオリエンテーションを行い,優越感や劣等感を生じさせない。
  3. 保護者会などを通して,「学習内容の習熟の程度に応じた指導」の導入理由や指導計画,期待される学習の効果等を事前に説明し保護者の理解を得る。
  4. 「学習内容の習熟の程度に応じた指導」では,活用を図る学習活動は行わず,知識・技能習得のための繰り返し学習を行う。
  5. 「学習内容の習熟の程度に応じた指導」を行う上で編成した学習集団が長期化・固定化しないように工夫し,学習意欲を低下させない。

解答 4

解説 知識・技能習得に特化されるものではない。なお、習熟の程度に応じた指導については、小学校学習指導要領解説に以下の記載があるので確認をしておこう(傍線引用者)。

学習内容の習熟の程度に応じた指導については,教科等により児童の習熟の程度に差が生じやすいことを考慮し,それぞれの児童の習熟の程度に応じたきめ細かな指導方法を工夫して着実な理解を図っていくことが大切であることから,これらの指導方法等が例示されているものであるが,その指導については,学級内で学習集団を編成する場合と学級の枠を超えて学習集団を編成する場合が考えられる。その実施に当たっては,学校の実情や児童の発達の段階等に応じ,必要な教科について適宜弾力的に行うものであり,実施時期,指導方法,評価の在り方等について十分検討した上で実施するなどの配慮が必要である。また,各学校で学習内容の習熟の程度に応じた指導を実施する際には,児童に優越感や劣等感を生じさせたり,学習集団による学習内容の分化が長期化・固定化するなどして学習意欲を低下させたりすることのないように十分留意する必要がある。また,学習集団の編成の際は,教師が一方的に児童を割り振るのではなく,児童の興味・関心等に応じ,自分で課題や集団を選ぶことができるよう配慮することも重要である。その際,児童が自分の能力・適性に全く合致しない課題や集団を選ぶようであれば,教師は適切な助言を行うなどの工夫を行うことが大切である。また,保護者に対しては,指導内容・指導方法の工夫改善等を示した指導計画,期待される学習の充実に係る効果,導入の理由等を事前に説明するなどの配慮が望まれる。なお,小学校は義務教育段階であるということを考慮し,基本的な学級編制を変更しないことが適当である。