神谷正孝の5分でわかる教育時事2018~2019(7)児童虐待 虐待の定義と通告義務を押さえる

kei塾主任講師 神谷 正孝

早いものでもう新学期を迎えます。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。試験日程も続々公開され、対策のタイムスケジュールが具体的になってきたのではないでしょうか。

さて、第7回目の今回は、現在社会で大きな話題になっている「児童虐待」について取り上げます。法的な部分も含め、しっかり確認するとともに、学級担任として、養護教諭として、この問題が生じた際にどのように取り組むのかを考えておきたいものです。

児童虐待の定義について

児童虐待の防止等に関する法律(以下、虐待防止法)第2条では、同法で規定する児童虐待を以下の四つに分類しています。すなわち、①身体的虐待②性的虐待③ネグレクト④心理的虐待――の四つです。虐待防止法では、児童福祉法などと同様に、児童の範囲を18歳に満たない者としています。注意しておきましょう。

①身体的虐待とは、殴る・ける・棒でたたくなどの身体に対する虐待行為で、報道されている虐待は、このケースがほとんどです。「虐待」という言葉から、真っ先にイメージされるのは、この身体的虐待ではないでしょうか。親の「しつけ」などと正当化されてはならない、命にもかかわる深刻な問題です。

②性的虐待とは、「児童にわいせつな行為をする/児童をしてわいせつな行為をさせる」ことで、直接的なわいせつ行為の他に、児童にわいせつ行為をさせることも含まれていることに注意しておきましょう。

③ネグレクトとは、「育児拒否」「養育放棄」の意で、「監護を著しく怠る」ことです。つまり自立できていない子供の身の回りの世話をしない、病気になっても病院へ連れていかない、食事を与えないなどの他、配偶者や同居人による、上述した①②の行為や後に述べる④の行為の放置もネグレクトに当たるとされています。

④心理的虐待とは、児童に対する暴言や拒絶的な態度をとることの他、児童の面前での配偶者や同居人に対する暴力(面前DV)も含みます。

児童虐待の通告義務

虐待防止法には、「虐待を受けたと思われる児童の発見者」に「通告義務」を課しています。福祉事務所や児童相談所へ直接通告する方法と、児童委員(民生委員)を介して通告する方法があります。

いずれにせよ、虐待か否かを判断する必要はなく、「虐待を受けたと思われる児童」を発見した者に義務が課せられています。

早期発見の努力義務

教員や保育士、医師などには、その職業柄「虐待を発見しやすい立場」にあるとして、虐待の早期発見について「努力義務」を課しています。

学校での生活の様子や、服装など、児童生徒が発するさまざまなサインや、児童の友人からの情報提供などを受けて、虐待が疑われる場合は、速やかに学校長へ報告するなど、組織の一員として対応していくことが大切です。

◇ ◇ ◇

教員採用試験では、虐待防止法の内容や、具体的な対応について問われることが多いようです。感傷的になるのではなく、虐待を発見し、早期対応するための方策について自分の問題と捉える必要があります。

なお、「誰かがしかるべき対応をするはず」「自分でなくとも他の人が通告するはず」という考え方が、対処の遅れにつながることもあると、認識しておきましょう。

政府においても、2019年3月19日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議「児童虐待防止対策の抜本的強化について」において、児童福祉法や虐待防止法などの改正、虐待防止策について具体的な方策を示しています。一読して学校教育に関わる内容を押さえておきましょう。

【例題】
例題1 次の問いに答えなさい。
(1)児童を家に閉じ込める,食事を与えない,重い病気になっても病院に連れて行かないなどの児童虐待を何というか。最も適切なものを,次のア~エから1つ選びなさい。
ア 身体的虐待  イ 心理的虐待  ウ 性的虐待  エ ネグレクト
(2)子どもをとりまく環境の改善を図るため,学校と連携して関係機関との調整・連携を図りながら,社会福祉士や精神保健福祉士の専門的な知識・技術を用いて支援を行う人を何というか。適切なものを,次のア~エから1つ選びなさい。
ア スクールカウンセラー  イ スクールソーシャルワーカー
ウ 社会教育主事  エ 臨床心理士
解答 (1)エ  (2)イ
解説 (1)は児童虐待の防止等に関する法律第2条を参照。(2)スクールソーシャルワーカーは、福祉の専門家としての役割の発揮が期待されている。
例題2 次の児童虐待に関する記述ア~オのうち,「児童虐待の防止等に関する法律」に照らして正しいものを選んだ組合せとして適切なものを1~5から1つ選びなさい。
ア:児童虐待とは,保護者から直接児童に向けられた暴力等の行為であり,児童の目前で配偶者に対する暴力が行われることは,児童虐待に含まれない。
イ:国及び地方公共団体は,学校の教職員が児童虐待を早期に発見しその他児童虐待の防止に寄与することができるよう,研修等必要な措置を講ずるものとする。
ウ:学校は,児童及び保護者に対して,児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない。
エ:児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,速やかに市町村や都道府県の設置する福祉事務所若しくは保健所に通告しなければならない。
オ:児童相談所長は,児童の一時保護を行おうとする場合において,当該児童が通学する学校の所在地を管轄する警察署長に対し援助を求めなければならない。
1.ア・イ    2.ア・エ    3.イ・ウ    4.イ・オ    5.ウ・エ
解答 3
解説
イ:児童虐待の防止等に関する法律第4条第2項「国及び地方公共団体は、児童相談所等関係機関の職員及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者が児童虐待を早期に発見し、その他児童虐待の防止に寄与することができるよう、研修等必要な措置を講ずるものとする。」に照らして妥当である。
ウ:児童虐待の防止等に関する法律第5条第3項「学校及び児童福祉施設は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない。」に照らして妥当である。

以下は誤りを含む。

ア:児童の面前でのDVも心理的虐待に含まれる。

エ:通告先は「保健所」ではなく「児童相談所」である。

オ:「当該児童が通学する学校の所在地を管轄する警察署長」ではなく「当該児童の住所又は居所の所在地を管轄する警察署長」である。また、「援助を求めなければならない」ではなく「援助を求めることができる」が正しい(児童虐待の防止等に関する法律第10条)。