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しつけの一環であるとして実父母による子への虐待や大人の子供への暴力が問題になっています。しつけと暴行・虐待についてあなたの考えを教えてください。
○回答
心身共に優位にある大人がしつけを理由に暴力、虐待を行うことは断じて許されない悲しい行為です。
しつけは、集団生活を円滑に送るためのマナーであり、子供が人の関わりの中でより良く生きていく上で不可欠なものです。高度成長期の経済発展、少子高齢化、価値観の変化で、しつけの捉え方も変わったように思います。
経済的な豊かさの中で、子供への過干渉や進学競争の激しさから、勉強さえしていれば他はどうでもよいという風潮もみられます。しつけは社会の変化に応じて変わるもので、江戸、明治、昭和という時代や士農工商といった職業、立場によって考えも違ってきました。
しかし、いつの時代でも変わらない不易があり、私ども日本人よりも外国からの旅行者に評価されているしつけを含む江戸しぐさなどの文化があります。子供の幸せのためにもしつけにこだわるのは大事です。
【コメント】
しつけ、虐待、あなたの考えが論述され結構です。厚労省は千葉県野田市の小学生が自宅で死亡して、両親が傷害容疑で逮捕された事件などを受け、児童虐待防止関連法案に体罰禁止の規定を盛り込む方針を固めました。
「しつけ」を口実にした虐待は認められない、と明確に示す狙いがあります。虐待はいじめること、むごい扱いをすることです。
×回答
「しつけ」は、社会経験の少ない子供にマナーやきまりを大人が教示することで、かつては当たり前に行われてきました。今日では、「しつけ」という文言も避けられている気がします。
幼くても大人が強いるのではなく、子供自ら考え、他と仲良くできることが大事であると考えます。「人のふり(振る舞い)見てわがふり直せ(振る舞いを正す)」育みが求められているのです。
心理学者の多湖輝先生は、「欧州では、きちんとした家庭の子供ほど、乗り物では立つ習慣が当たり前で、そこに親の教育的配慮を感じる。料金も大人並みに払っていない子供が座らないのは当然という社会的ルールの徹底と、発育期の子供の身体的バランス感覚や足腰の鍛錬のためにもなるという認識が社会全体に浸透している故だ」と述べています。
この両者の融合があれば暴行、虐待は防止できると考えます。
【コメント】
的確な論述です。ただ、残念な点はこれほど問題になっているしつけを理由とした大人による子供への暴行、虐待に対するあなたの考えがないことです。それがあれば満足です。
千葉大学名誉教授で東京都「心の東京革命」推進協議会会長を歴任された故・多湖輝先生はPHP文庫『しつけの知恵』の中で親が子供のしつけに深く心を砕く大切さを説いています。
アドバイザー・宮澤 義一 元公立学校長