教壇に立つ姿を想像させる
今回は面接を担当する面接官サイドに焦点を当ててみよう。面接官は何を考えているのか、それを分析してみるのも合格に近づく手だての一つかもしれない。
面接官は校長など管理職が中心
面接官はどのような人物なのだろうか。学校現場の校長、副校長、教頭、そして教育委員会の指導主事らが多いのを念頭におこう。これに加え、教育関係者とは異なった視点からの評価を加味するため、民間企業の人事担当者などを起用する自治体も少なくない。面接官は2~5人という場合が多いが、こうしたメンバーで構成される。
面接官が試験に際して思うのは、「この人物に自分の学校の児童生徒の教育を任せてよいか」「担任として学級を任せてよいか」ということだ。もしかすると次年度、同じ学校で勤務する可能性もある。そのために少しでも優秀な、学校現場に役立つ人材を採用したいと考えている。
同じ学校で一緒に仕事をしてもいいと面接官から評価されるための、面接時におけるポイントは何だろう。
「緊張しない」「あがらない」――、どちらも大事ではあるが、面接時は誰もが緊張するし、あがるものである。「面接に集中している」――、これが大事だ。
質問はしっかりと聞いて対応する
質問されている内容、何を聞かれているのか、これに集中していることが求められる。
受験者の中には面接官が聞いたことと、ずれた回答をする者が少なくない。例えば、「教育実習でしか、学校現場の経験はないのですか」の問いに、「大学では部活動に打ち込んでいました。でもそこから人間関係の大切さを学びました。教員としてそれを生かせると思います…」などと回答する。
本人としてはマイナスポイントを挽回し、少しでもアピールできるよう話しているのだろうが、「こちらの話をしっかり聞いていない」と評価されてしまう。
また、集団面接では話す時間より他の受験者の話を聞いている時間の方が長くなるが、このときの態度も大事。じっと静かにしている受験者も多いが、他の受験者の話を聞いてうなずくなど、面接に集中していることを示すことが重要だ。
受験者は、さまざまな質問を想定し、自分の体験から多様な答えを準備する。それを話したいという気持ちが強いだろうが、面接官は自分がした質問にきちんと回答してもらいたいという考えが強いようである。
面接官経験のある校長によると、「校長としては、実際の学校現場で自分の指示などをしっかりと聞けるのかどうか、また児童生徒の話をしっかりと聞いてあげられるのか、という判断になる」というのだ。何よりも質問に集中することがまずは大事だ。
回答は聞き手がストレスを感じない長さで
そして当然ではあるが、教職への強い動機、思いを示せることである。
面接時には、なぜ教員になりたいのかという強い気持ちを示す必要がある。教員は昨今の学校現場の状況から見て、精神的にも肉体的にもハードな職業であるといえる。そんなときに、強い気持ちが示せると、現場を預かる校長からも頼もしい人物として見られるだろう。
しかし、教職への強い思いだけでは十分ではない。自分の資質がどのように教員に向いているかを示せなくては、話にはならない。単に子供が好き、ではなく、資質を踏まえた上で、自分はいかに学校で活躍できる能力を備えているか、教員に向いている人物であるかを強調したい。
また、面接官側から見た好ましい回答のポイントは、簡潔な内容でかつ適切な長さであるということ。
面接官は、その日はおそらく1日中面接をしている。すなわち何十人もの話を聞いているのである。だらだらと要領の得ない、長い回答を聞かせられると、いくら優れた教育管理職であるといっても気分がいいものではない。何を話しているのか、頭に入ってこないのだ。
結論を先に述べ、分かりやすい内容で、かつ聞き手がストレスを感じない長さの回答を心掛けたい。これだけでも面接官の印象は、他の受験者よりずっとよくなる。
自分の思いと長所を売り込む
話し方も面接官の心を捉える重要なポイントである。
教員の仕事の軸は授業である。面接に際して校長は、その受験者が児童生徒に明瞭な言葉掛けをできるか、生き生きと教育指導ができるかどうかを見る。そのためには、下を向いてもそもそ話したり、聞き取りにくい発声になっていたりしてはマイナスになる。
小さな声もNG。これでは、その受験者が教員として生き生きと働く姿を想像できない。授業が上手な教員は、話の抑揚がはっきりしている。強調したい、心にとどめてほしいところで声を大きくするなどの工夫をしよう。さらに身ぶり手ぶりを加えると、より力強い印象を与えられる。
面接というと、受験者が質問を受けるので受け身の立場と思いがちだが、そうではない。自分は教員になりたい、こういう優れた点がある、と売り込みに来ているわけだ。だから積極的に自分の思いと長所を売り込まなくてはならない、というのがポイントだ。
教員になる夢がかなうまで、あと少し。気を抜かずに頑張ろう。