【神谷正孝の教育時事2019(1)】教育時事理解の前提となる知識

kei塾主任講師 神谷 正孝

皆さんこんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。2020年夏に向けた試験対策として、第1回目の今回は、今年注目の教育時事について対策する際の前提となる基礎知識を理解するために、どのような段取りで資料を確認すべきかについて、解説します。

はじめに「教育振興基本計画」を見てみよう

まず、最初に確認しておきたいのは「第3期教育振興基本計画」です。2018年6月に閣議決定されたこの計画は、同年3月の中教審答申に基づいて策定されています。計画策定の背景に、「society5.0」の到来を見据えた社会構造の変化があることを押さえておきましょう。関連事項として「AI」や「グローバル化」などのキーワードのチェックも必要です。

計画では、これまでを総括するとともに、今後5年間に重点的に取り組むべき内容について具体的な施策を列挙しています。分量としては非常にボリュームがありますが、チェックすべき内容(=採用試験で問われる内容)は限られます。第1部を中心に背景とキーワードを確認しておきましょう。

押さえておきたい事項やキーワードとしては、「2030年以降の社会像の展望を踏まえた個人と社会の目指すべき姿と教育の役割」として示されている次のことが挙げられます。①自立した人間として、主体的に判断し、多様な人々と協働しながら新たな価値を創造する人材の育成②一人一人が活躍し、豊かで安心して暮らせる社会の実現③社会(地域・国・世界)の持続的な成長・発展――です。

このうち、①の「自立」「判断」「協働」「創造」というワードは、ただ覚えるのみならず、その実現に向けてどのような取り組みが求められるかや、どのようにして「自立」した「判断力」を備えた、他者と「協働」しながら問題の解決策や新しい価値を「創造」できる人材を育成するかという観点から、自分の具体的な方策についても考えておきましょう。

また、本計画では、5つの基本方針が示されていますが、そのうち「1. 夢と志を持ち、可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」「2. 社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成する」の2点については、(特に前者は)初等中等教育との関連性が高いので、確認しておくとよいでしょう。ただし、施策の具体的な内容は、ほぼ出題されません。

学習指導要領も確認しよう

次に確認すべきは、2017・18年改訂の学習指導要領(以下「指導要領」)です。これまでは、答申の穴埋めなど指導要領改訂の背景的な内容も多く問われていましたが、来春から順次全面実施になることを踏まえると、指導要領本文の内容に関わる「突っ込んだ問題」の出題も予想されます。また、面接や討論、論文などでは、より深く指導要領の内容について問われることも多くなるでしょう。

指導要領関連の押さえておきたいキーワードは「資質・能力の三つの柱」「カリキュラムマネジメント」「主体的・対話的で深い学び」などです。こうした内容と、指導要領改訂の背景でも述べられている「2030年以降の社会の変化」とを関連付けて理解するようにしましょう。

指導要領はどこを読むべきか、というのもよくある質問です。試験にそのままの形で出題されるのは、「前文」「総則」です。前文に示されている理念は、学校種でほとんど変わりません。前文で、指導要領とは、「理念の実現に向けて必要となる教育課程の基準を大綱的に定めるもの」とされています。

次の総則では全体に関わることとして、第1章については、「生きる力」の育成や「資質・能力の三つの柱」、各学校で取り組むべき「カリキュラムマネジメント」について示されています。まずは、指導要領本文でどのような書き方になっているのかを踏まえた上で、指導要領解説に当たるとよいでしょう。

このようにして総則を確認した後、「総合的な学習(探究)の時間」「特別の教科道徳」「特別活動」の章を読んでいくとスムーズです(各教科の細かい内容は、専門試験対策として必要になる場合もありますが、教職教養では範囲外です)。

両者を関連付けて理解する

前述の「教育振興計画」と「指導要領改訂」では、時系列では後者の方が先になりますが、要点をかいつまんで解説しているという点では、教育振興計画の方が概要理解に重宝します。

また、指導要領改訂の要点は、学習指導要領解説総則編の最初の部分にまとめられているので、早いうちに一読し、分からない言葉を確認しておきましょう。対策が進んでくると、何度も登場するキーワードやフレーズがあることに気付きます。そうしたワード・フレーズの内容を理解し、論文での記述表現や、面接などでの口述表現の際に、自分の言葉として使えるようになることが最終目標です。

下の文は,「第3期教育振興基本計画について(答申)」(平成30年3月 中央教育審議会)の一部である。文中の空欄に当てはまる語句を書きなさい。

○ 初等中等教育段階における,2030年以降の社会の在り方を見据えた育成すべき資質・能力については,「何を理解しているか,何ができるか」,「理解していること・できることをどう使うか」「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」という三つの柱で確実に育成するため,新学習指導要領の周知・ 徹底および着実な実施を進める。その際特に,( 1 )の視点からの授業改善(「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善)を推進することや,( 2 )・マネジメントを確立することなどが重要である。

○ また,質の高い教育の提供に向けたきめ細やかな指導の充実や,子供たち一人一人の状況に応じた教育の推進に取り組むとともに,一人一人がこれからの厳しい時代を乗り越え,新たな価値を( 3 )していくためには,「真の学ぶ力」(学力の3要素)を身に付けることが必要となる。この力を初等中等教育から高等教育まで一貫して育成する教育を行っていくことが求められていることを踏まえ,新学習指導要領の実施や大学入学者選抜改革,大学教育改革などの高大接続改革を着実に進める必要がある。

○ 確かな学力に加え,子供の健やかな成長のためには,( 4 )を育むことが不可欠である。このため,豊かな情操や規範意識,自他の生命の尊重,自己肯定感・自己有用感,他者への思いやり,対面でのコミュニケーションを通じて人間関係を築く力,困難を乗り越え,ものごとを成し遂げる力,( 5 )等の育成を図るとともに,日本の伝統や文化を継承・発展させるための教育を推進することが重要である。特に, こうした資質・能力を育む際には教職員と児童生徒との信頼関係が重要である。また,いじめや不登校など生徒指導上の諸課題について,校長が( 6 )を発揮し,専門家や関係機関・団体,家庭,地域と連携しつつ未然防止と早期発見・早期対応に学校を挙げて取り組むことや,各学校段階を通じて必要な情報を共有すること,さらには社会体験活動や( 7 )体験活動等も含め,児童生徒の多様な体験活動の機会を充実し,一人一人が自らの課題を乗り越えつつ,他者と( 8 )して何かを成し遂げる力を育てることなどが重要である。

○ さらに,体力は人間の活動の源であり,( 9 )の維持といった身体面のほか,意欲や気力といった精神面の充実にも大きく関わっている。このため,子供の頃から各教育段階に応じて体力の向上,( 9 )の確保,( 10 )の充実を図ることが重要である。

解答

1:主体的・対話的で深い学び  2:カリキュラム  3:創造  4:豊かな心  5:公共の精神  6:リーダーシップ  7:自然  8:協働  9:健康  10:食育

解説

6の「校長のリーダーシップ」以外は新学習指導要領のキーワードでもあるのでしっかりと押さえておこう。