【神谷正孝の教育時事2019(3)】「いじめ」の最新事情

kei塾主任講師 神谷 正孝

皆さんこんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。2020年夏に向けた試験対策として、第3回の今回は、生徒指導上の諸問題のうち「いじめ」の問題について取り上げたいと思います。

最新データの確認

2018年度文科省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(以下「問題行動調査」)」によると、いじめの認知件数として、小学校42万5844件(前年度31万7121件)、中学校9万7704件(前年度8万424件)、高等学校1万7709件(前年度1万4789件)、特別支援学校2676件(前年度2044件)集計されています。

全体では、54万3933件(前年度41万4378件)集計されており、過去最大の数字を記録しています。背景には、積極的にいじめを認知していこうとする各教育委員会や学校の姿勢の変化が考えられます。

しかしながら、児童生徒1000人当たりの認知件数を都道府県別に比較すると、宮崎県の101.3件に対して佐賀県の9.7件とかなりの差があります(全国平均は40.9件)。各自の受験自治体の状況がどのようになっているかを確認し、数字の意味や背景を考えておくことが大切です。

前年と比較して大きく数字が増えているのであれば、認知方針に大きな変更があったことが考えられます。もちろん、多く報告されているから、児童生徒の実態を細かく把握できているのでよいとか(実際にはいじめ防止対策が機能していない)、少なく報告されているからいじめ防止対策が奏功している(小さないじめが見落とされている可能性もある)などといった単純な話にはならないことに注意しておきましょう。

いじめ防止対策推進法

いじめ防止対策推進法が制定されたのは2013年です。この法律により、いじめの定義が「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と明確化されると共に、同法4条において「児童等は、いじめを行ってはならない」と規定されたことから、「いじめ」が不法行為と位置付けられました。同法のポイントは別紙のとおりです。

附則において「施行後三年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」との規定の元、成立した同法ですが、改正の動きは暗礁に乗り上げています。一連の改正を巡る要点は、本紙のバックナンバーを検索して確認しておきましょう。

同法改正の動きは、教員採用試験において最重要な項目であることは間違いありません。また、現在の状況について自分の考えを整理して、当事者の視点から回答できるようにしておきたいものです。

いじめ防止基本方針

同法11条に基づき策定されるのが「いじめ防止基本方針」です。2017年3月に改定改訂され、「いじめ」の定義から、「けんか」に関わる部分の記述の変更(「けんかを除く」の文言を削除)や「教職員がいじめの情報を学校内で情報共有しないこと」は、「いじめ防止対策推進法の規定に違反し得ること」を明記するなど修正が行われています。

学校におけるいじめ対策は、同法22条に規定する「学校いじめ対策組織」を活用した「組織的対応」を基調にする必要があることを押さえておきましょう。

【例題】
1.次の(1)~(5)の文で,いじめ防止対策推進法の条文の内容として正しいものには○印を,正しくないものには×印をそれぞれ書きなさい。
(1)この法律において「いじめ」とは,児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を継続的に感じているものをいう。
(2)学校は,当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実動的に行うため,当該学校の複数の教職員により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。
(3)学校の設置者は,基本理念にのっとり,その設置する学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。
(4)保護者は,その保護する児童等がいじめを受けた場合には,適切に当該児童等をいじめから保護するものとする。
(5)校長及び教員は,当該学校に在籍する児童等がいじめを行っている場合であって数育上必要があると認めるときは,学校教育法第11条の規定に基づき,適切に当該児童等に対して懲戒を加えるものとする。
解答 (1)× (2)× (3)○ (4)○ (5)○
解説(1)「継続的に」が不要。(2)「複数の教職員,心理,福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成される」が正しい。
2.「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定,平成29年3月14日最終改定)の改訂について,改正後の説明として適切でないものを,1つ選びなさい。
    1. 改正前の基本方針では「けんか」がいじめに定義からのぞかれるため,けんかに係る記述を改正(「けんかを除く」という記述を削除)し,「けんかやふざけ合いであっても,見えない所で被害が発生している場合もあるため,背景にある事情の調査を行い,児童生徒の感じる被害性に着目し,いじめに該当するか否かを判断するものとする」とした。
    2. 教職員が,いじめに係る情報を抱え込み,学校いじめ対策組織に報告を行わないことは,いじめ防止対策推進法の規定に違反し得ることを明記した。
    3. 児童生徒がいじめの問題を自分のこととして捉え,考え,議論することにより,いじめに正面から向き合うことができるよう,社会教育の充実について明記した。
    4. いじめの問題に関する正しい理解の普及啓発のため,保護者など国民に広く,いじめ問題やこの問題への取り組みについて理解を深めるべく,PTAなどの関係団体等との連携を図りながら,法の趣旨及び法に基づく対応に係る広報啓発を充実することを明記した。
解答 3
解説 「社会教育」ではなく「道徳教育」
3.次の文章は,「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日 文部科学大臣決定,平成29年3月14日最終改定)の一部である。(A)~(E)に当てはまる語句の組合せとして正しいものはどれか。

いじめは,単に( A )をもって安易に解消とすることはできない。いじめが「解消している」状態とは,少なくとも次の2つの要件が満たされている必要がある。ただし,これらの要件が満たされている場合であっても,必要に応じ,他の事情も勘案して判断するものとする。

① いじめに係る行為が止んでいること

被害者に対する心理的又は( B )な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)が止んでいる状態が相当の期間継続していること。この相当の期間とは,少なくとも( C )を目安とする。(略)

② 被害児童生徒が( D )を感じていないこと

いじめに係る行為が止んでいるかどうかを判断する時点において,被害児童生徒がいじめの行為により( D )を感じていないと認められること。被害児童生徒本人及びその保護者に対し,( D )を感じていないかどうかを( E )等により確認する。

A B C D E
1. 謝罪 物理的 1か月 深刻な苦痛 書面
2. 謝罪 身体的 3か月 深刻な苦痛 面談
3. 謝罪 物理的 3か月 心身の苦痛 面談
4. 和解 物理的 3か月 深刻な苦痛 面談
5. 和解 身体的 1か月 心身の苦痛 書面
解答 3
解説 平成29年改定の際に追記された事項である。確認しておこう。