kei塾主任講師 神谷 正孝
起きた場合の対処と未然防止について考える
仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。年が明けました。受験対策の計画を見直し、倍率の低下に油断することなく、今夏の試験にしっかりと備えましょう。第4回は、前回に引き続き、生徒指導上の諸問題のうち「暴力行為」について取り上げます。
最新データの確認
2018年度文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下「問題行動調査」)結果によると、暴力行為の発生件数として、全体では、7万2940件(前年度6万3325件)集計されており、大きく増加しています。
内訳をみると、小中学校での増加が目を引き、特に小学校では大きく増加し、学校種別で最も多くなりました(3万6536件、前年度2万8315件)。ここ数年の推移をみても、小学校のみが増加し続けていました。小学校なので、軽度の暴力行為が多いわけですが、低年齢化が気にかかるところです。
児童生徒千人当たりの発生件数を都道府県別に比較すると、島根県、青森県の13.6件を筆頭に神奈川県(11.5件)、岐阜県、高知県(10.5件)と続きます(全国平均は5.5件)。
政令市では、横浜市で20.5件、新潟市15.0件、相模原市13.4件と続き、平均値は都道府県に比べて高く8.1件となっています。平均値のみを比較すると都市部の問題と捉えられがちですが、実態はもう少し複雑なようです。
一方、愛媛県(0.6件)や鹿児島県(0.9件)では1件を割っており、各自の受験自治体の状況がどのようになっているかを確認し、高い数値が報告されている都道府県・市では、ローカルな問題として意識しておくことが大切です。
暴力行為の内訳は、毎年変わらず、最も多いのは「生徒間暴力」、次いで「器物損壊」「対教師暴力」「対人暴力」と続きます。発生件数の総数の増加の背景には、「生徒間暴力」の増加があります。
暴力行為への対応と未然防止
採用試験で暴力行為について問われる場合は、「実際に起きた場合の対応」と「未然防止」についてです。したがって、まずこの2点を踏まえて、具体策を考える必要があります。
前者については、対応の方向性はある程度決まります。生徒指導提要などの記述を参考に、学校として組織的な対応の在り方と、警察などの司法機関との連携について押さえておきましょう。
面接・論文などで具体的に場面設定された場合には、対応策を述べる前に、事案の軽重や緊急性についても考慮する必要があります。それにより対応の順序が変わります。また、後者については、長期的・継続的な視点から、日ごろの学級経営の在り方などに結び付けて述べるようにしましょう。
出席停止制度
学校教育法では35条において、「出席停止制度」について規定しています。これは、義務教育段階における措置で、性行不良などにより他の児童生徒の学習の妨げになる学齢児童生徒の保護者に対して、市町村の教育委員会が出席停止を命ずることができる制度です。
暴力行為などの問題行動に対しても、義務教育段階では児童生徒へ懲戒処分として「停学」を課すことができないため、義務教育履行の監督権を持つ市町村教委から保護者に対して出席停止を命令するという緊急避難的な措置です。こうした制度についても試験で問われることがあるので関連事項として押さえておきましょう(実際に出席停止が措置されたケースは非常に少ない)。