【神谷正孝の教育時事2019(9)】STEAM(スティーム)教育

kei塾主任講師 神谷 正孝

Society5.0との関連をチェック

皆さんこんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。授業のオンライン化が急速に進んだり、新学期がここまでずれ込んだりするとは思いもよらず、初めての事態に不安を感じていらっしゃる方も多くいると思います。しかし、自力でなんともできない事態は受け入れるしかないと開き直って試験に臨みましょう。

今回は、集団討論や論文作成の基礎知識として押さえておきたい「Society5.0」と、その中で求められる人材育成としての「STEAM教育」について解説したいと思います。

Society5.0

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)として、わが国が目指すべき未来の姿として示されたのが、Society5.0の社会像です。内閣府の特設サイトによると、そこでは、以下のようなイノベーション(変革)が起こるとしています。

「IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞(へいそく)感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります」

Society5.0の到来により、求められる資質や能力、働き方などに大きな変化が起こると予測されます。その中で、これからの児童生徒に共通して求められる能力を「①文章や情報を正確に読み解き、対話する力」「②科学的に思考・吟味し活用する力」「③価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力」として整理しています(※)。

STEAM教育

教育再生実行会議第十一次提言で示された、「各教科での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科横断的な教育」をSTEAM教育といいます。

STEAMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学・ものづくり(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)の頭文字を組み合わせたもので、Society5.0の時代に幅広い分野で新しい価値を提供できる人材を養成することを目指しています。この推進に向けて、「総合的な学習(探究)の時間」、「理数探究」などにおける問題発見・解決的な学習活動の充実を図ることが提言されました。

STEAMの「A」については、国際的な定義もあいまいであり、中央教育審議会の審議では「芸術・文化・生活・経済・政治・倫理等も含め、広く定義すること」を提案しています(令和元年12月、中教審初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方―論点取りまとめ」より)。

*  *  *

Society5.0については、未来予測として押さえておきたい内容です。将来どのように社会が変化することを想定して、その社会をけん引できる人材の育成のために、どのような教育が求められているのかをひもづけるようにしましょう。

※Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会―新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォース「Society5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~(平成30年6月)」
【例題】
1.次に示すのは,中央教育審議会答申「教育振興基本計画について」で示された「5つの基本的方向性」のうち,「2.社会の持続的な発展を牽引するための多様な力を育成する」で述べられた内容として適切でないものを選びなさい。
    1. グローバル化の一層の進展が予想される中,日本が抱える社会課題や地球規模課題を自ら発見し,解決できる能力を有したグローバルに活躍する人材の育成が重要である。
    2. 言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくことができるよう,国内外の様々な場において,外国語で躊躇せず意見を述べたり,他者と交流し,共生していくために必要な力等を育成していくことが重要である。
    3. 英語をはじめとする外国語教育の強化に努めるとともに,豊かな教養や論理的思考力,我が国の伝統や文化への深い理解,世界の多様な文化の中で自他の違いを尊重し合いつつ,コミュニケーションを通じて,ともに問題を発見し解決する能力,困難を乗り越える強い精神力等を育むための教育の充実を図ることが必要である。
    4. グローバル化への対応は,主に大都市圏に限った課題であり,大都市圏が直接世界とつながる時代の中で,グローバルな視点をもって豊かな社会の創造・発展に積極的に貢献しようとする志を持った人材の育成が重要である。
    5. 意欲と能力のある若者たちが留学の機会を得られるよう,日本人生徒・学生の海外留学を支援するとともに,海外留学の魅力や意義,様々な支援の機会などについて,国が広く情報発信することで,若者の海外留学への機運を高めていくことが必要である。
解答 4
解説

4の部分は以下のように示されている。

「グローバル化への対応は,大都市圏だけの課題ではなく,地域が直接世界とつながる時代の中で,各地域においてもグローバルな視点をもって豊かな地域社会の創造・発展に積極的に貢献しようとする志を持った人材の育成が重要である。」

2.次の文章は文部科学省が平成30年に発表した,Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォース「Society 5.0 に向けた人材育成~ 社会が変わる、学びが変わる ~」の一部である。これを読んで後の問いに答えなさい。

Society 5.0 において我々が経験する変化は、これまでの延長線上にない劇的 変化であろうが、その中で人間らしく豊かに生きていくために必要な力は、これまで誰も見たことのない特殊な能力では決してない。むしろ、どのような時代の変化を迎えるとしても、知識・技能、思考力・判断力・表現力をベースとして、言葉や文化、時間や場所を超えながらも自己の( 1 )を軸にした学びに向かう一人一人の能力や人間性が問われることになる。

特に、共通して求められる力として、①文章や情報を正確に読み解き、対話する力、②科学的に思考・吟味し活用する力、③価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・( 2 )が必要であると整理した。

まず、知識・技能としての語彙や数的感覚などの学力の基礎に加え、人間の強みを発揮するための基盤として、文章や情報を正確に理解し、論理的思考を行うための読解力や、他者と( 3 )して思考・判断・表現を深める対話力等の社会的スキルなど、読み解き対話する力が決定的に重要である。

また、人と機械が複雑かつ高度に関係し合う社会となっていく中、科学的に思考・吟味し活用する力が不可欠となる。機械を理解し使いこなすためのリテラシーや、その基盤となるサイエンスや数学、分析的・クリティカルに思考する力、 全体をシステムとしてデザインする力がこれまで以上に必要な力となる。

加えて、現実世界を意味あるものとして理解し、それを基に新たなものを生み出していくことは、AI によって代替できない人間ならではの営みであり、AI の活用分野が爆発的に広がっていく新たな時代においてますます重要となる。自然体験やホンモノに触れる実体験を通じて醸成される豊かな感性や、多くのアイデアを生み出す思考の流暢性、感性や知性に基づく独創性と対話を通じて更に世界を広げる創造力、苦心してモノを作り上げる力、新しいものや変わっていくものに対する好奇心や( 2 )、実践から学び自信につなげていく力などが重要である。

問1 空欄に当てはまる語句の組み合わせとして適切なものを選びなさい。
    1. (1)主体性 (2)探究力 (3)協働
    2. (1)独立性 (2)探究力 (3)連携
    3. (1)主体性 (2)対応力 (3)協働
    4. (1)独立性 (2)対応力 (3)連携
    5. (1)主体性 (2)探究力 (3)連携
問2 ここで示されているような,Society5.0の時代に向けた教育を何というか,以下より選びなさい。
    1. EdTech
    2. STEAM教育
    3. SDGs
    4. リカレント・エデュケーション
    5. グローバル・コンピテンス
解答 問1:1  問2:2
解説

1:Education とTechnology を掛け合わせた造語で,テクノロジーの力で教育環境が変わっていく動き・トレンドのこと。3:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)。4:リカレント教育のこと。5:PISA調査で評価される「国際的な場で必要となる能力・力量」のこと。