【教員採用試験に向けて(6)】心情に寄り添った対応が求められる

神田外語大学客員教授 嶋﨑 政男
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クレーム問題とは

保護者からの学校への苦情・要求はあって当たり前で、そのこと自体に何ら問題はありません。「子を思う親心」に思いをはせれば容易に理解できることです。

「問題」となるのは、虚偽の申し立て・理不尽な要求や「子供の最善の利益」をそっちのけにした利得追求に奔走する「無理難題要求」です。

これを「クレーム」といいます。一時、「モンスターペアレント」という言葉が使われましたが、アメリカの「ヘリコプターペアレント」やイギリスの「フーリガンペアレント」同様、奥底に子供への愛情を満たしている親をモンスター呼ばわりするのは避けたいものです。

「ブラック学校」の杞憂(きゆう)

確かに、「モンスター」と称したくなるような事案に遭遇することがあります。特に、最近はいじめの問題を巡って、何らかの利益を求める「いじめ利得」、加害者とされる側を徹底的に追い込んだり、学校や教育委員会の機能を崩壊させたりする「いじハラ」ともいえる現象がみられます。

しかし、大部分の苦情・要求は子供溺愛が強く出すぎることがあっても、親として当然の行為と解することができます。

受験者は正しい理解を

クレーム問題を強調することは、「ブラック学校」の印象を強めてしまうのではないかとの懸念が聞かれます。しかし、教育現場に足を踏み入れる前に、クレーム問題への正しい知識・認識を得ておくことはワクチンの接種を受けることに匹敵します。

クレーム問題への基本姿勢

クレーム問題への基本姿勢は生徒指導の第一原則と共通します。「心理的事実(気持ち)の受容・誤った苦情・要求(客観的事実)への非共感」です。

こんな事例があります。小学2年生のA子さんの母親が遠足の写真を注文するために来校しました。母親は急ぎ担任のもとを訪れ、「なぜ、うちの子だけがブスに写っているのですか。あの写真、外してください」と大声を上げました。お母さんは「A子はかわいい」という思いでいっぱいだったのです。

「A子ちゃん、かわいいのに、この写真はどうしたんでしょうか」……。この一言で母親の表情は和んだことでしょう。ところが、この担任、客観的事実を滔々(とうとう)と話し始めたそうです。「30年以上のプロのカメラマンが写したんですよ」と。

厳しいクレームへの対応

クレーム問題が深刻化するのは、先の例で示したように初期対応での「ボタンのかけ違い」が圧倒的に多いようです。保護者の心情に寄り添った対応が求められます。

厳しい対応が予測されたら、絶対「一人で対応しない」ことです。

また、「困った親は困っている親」である場合も少なくありません。同僚に事情を話し、チーム対応に徹してください。要求を拒否すると激高する親もいます。「なぜ」と詰め寄られたら、「学校として決められているのです」と返答します。


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