【教員採用試験に向けて(7)】体罰と懲戒 体罰は「教育の破壊行為」である

神田外語大学客員教授 嶋﨑 政男
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絶対に許されぬ「体罰」

「体罰」について意見を求められることがあります。「絶対にしません」。これ以外の答えは宇宙の果てまで探しても見つかりません。

体罰は、児童生徒の心身に大きな傷を残す「人格・人権侵害行為」です。児童生徒および保護者との信頼を断ち切り、自らの指導力不足と教育観の誤りを露呈する「教育の破壊行為」でもあります。

加えて、学校教育法第十一条で禁じられた明々白々の違法行為です。暴行罪・傷害罪に問われたり、損害賠償という形で民事上の責任を追及されることもあります。

教育的措置としての「懲戒」

「懲戒」とは、「懲らしめ」「戒める」ことです。児童生徒の誤った言動を「教え諭す」のは教員としての責務とも言えます。体罰を禁じた学校教育法13条の冒頭には、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる」とあります。

懲戒には、法的効果を伴う退学・停学と、事実行為としての訓告・叱責(しっせき)などがありますが、あくまでも「教育的措置」ですから、学校教育法施行規則では、「心身の発達に応じる等の配慮」が求められています。

必要な「教育的配慮」

児童生徒への懲戒について文科省では、「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底」(2013年3月)などの通知で教育的配慮をもって行うことの必要性を何度も強調してきています。

文部省発行の「生徒指導資料第2集」(66年)では、具体的な配慮事項として、①形式的、機械的にしない②感情的、報復的にしない③不公平、不当にしない④安易、無責任にしない――という4点を挙げています。

「出席停止」の意義

「出席停止」は、本人の懲戒を目的とするのではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から制度化されました。

学校教育法第26条には、「市町村の教育委員会は、(略)性行不良であって他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる」との定めがあります。

「体罰」のない生徒指導

「指導死」という言葉があります。教員から指導を受けた後に自ら命を絶つという痛ましい事案です。決してあってはならないのですが、誤った生徒指導が校内を席巻している場合は危険信号です。

これを「六過多指導」呼んでいます。「多人数で、長時間、詰問・追及を行い、反省を求め、謝罪をさせ、罰を与える」。指導者数・指導時間・詰問追及・反省・謝罪・罰則、の6つの「過多」です。

「あの叱責があってこそ、今の自分がいる」「あの一言が私の人生を変えた」など、「褒める=善・叱る=悪」とする紋切型の論陣に切り込むことは容易です。しかし、それはお互いの間に信頼関係があってこそ可能になります。「六過多指導」などとんでもありません。「体罰」もです。


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