【最新の教育評価入門講座(1)】評価の目的…形成的評価と総括的評価

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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学習の目標と生徒の状況の乖離を知らせる

教育活動には、指導と評価が必ずあります。評価に関しては、教採試験の筆記、論作文、面接などでよく取り上げられます。教育評価の実践研究の第一人者である教育評価総合研究所の鈴木秀幸代表理事に教採対策としての教育評価入門講座を連載してもらいます。

何のために評価するかと聞かれれば「成績を付けるため」と普通は答えることでしょう。または通知表や指導要録(生徒の学籍、学習や行動の記録を記した公簿)に記入するためという答えもあるかもしれません。

しかし、評価の目的は主として2つあり、前の答えは総括的評価のことを言っています。もう1つは形成的評価です。さらに診断的評価という、学習活動を始める前に学習の障害になることを発見する評価もありますが、専門的な知識を要するので、普通の教員が用いることはあまりありません。

総括的評価とは、一定期間の学習の状況や成果を要約して示すものです。通知表は学期全体、指導要録は学年全体の学習の要約です。大学入学共通テストや高校入試の学力検査なども総括的評価の1つですが、これらの総括的評価は生徒の将来に大きく影響したり、間接的に学校の評価に影響したりするものです。このような影響力の大きい総括的評価を特にハイ・ステイクス(high stakes)な総括的評価と言います。

総括的評価の一部は、このようなハイ・ステイクスなものであったため、長年にわたり総括的評価に対する関心が高かったのです。その一方で、形成的評価に対する関心は低いままでした。形成的評価とは、評価の結果を学習の改善に用いることを目的とした評価のことです。例えば、分数の足し算の授業の終わりにミニテストをしてみたら、できていない生徒がいたので、その生徒にはもう一度学習させる機会を作ることです。この形成的評価のへの関心が1990年代の後半に一気に高まりました。それは形成的評価を実施した場合の学習の改善効果が、極めて高いことが研究の結果分かったからです。

総括的評価をする前に、生徒の学習の向上を図るのは当然のことです。そのために学習指導の工夫をすることはこれまでも行われてきましたが、評価を用いて学習の向上を目指す形成的評価に世界が注目し始めています。これを受けて、わが国でも新学習指導要領での学習評価について、形成的評価の重要性を強調することとなりました。

形成的評価が重要であると言っても、実施するにはいくつかの課題があります。学校では定期テストや、時折行われるミニテストをはじめとしていろいろな方法で評価が行われていますが、評価の結果を学習の改善に用いなければ、総括的評価であり形成的評価にはなりません。最大の課題は、学習指導要領に規定された内容を授業で扱うのに精いっぱいで、形成的評価の結果を用いて生徒の学習の改善をしようとしても、そのための時間を取れないことです。この点はどの国でも似たような状況です。

生徒に評価の結果を伝える場合、点数や順位を用いて知らせることはほとんど学習の改善効果がないことが分かっています。最も効果的な伝え方は、学習の目標に対して、生徒の学習の状況がどのような点で乖離(かいり)しているか、またその乖離を埋める方法を指導することです。


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