【神谷正孝の教育時事2020(2)】2017・18年告示学習指導要領の改訂経緯とポイント

kei塾主任講師 神谷 正孝

学習指導要領とは? 改訂はどのような流れ?

皆さんこんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。今回は、採用試験対策初学者向けに、学習指導要領について解説してみたいと思います。なお、学習指導要領の改訂については、これまでも何度か取り上げています。電子版のバックナンバーなどもご参照いただければ幸いです。

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2017年告示小中学習指導要領は、移行措置期間を経て、20年4月から、小学校で全面的に実施されました。来年度からは、中学校においても全面実施となります。そして、21年4月からは、18年告示の高等学校学習指導要領が学年進行で実施(=その年に入学した1年生から実施)となります。

教員採用試験においてもここ数年で一番のトピックです。学習指導要領の内容をしっかりと理解していることはもちろん、論文試験や討論においては、学習指導要領に基づいて自分の意見を論じなければならない場面も多く、受験者としては、試験までにしっかりと読み込み、改訂の方向性や内容を押さえておきたいものです。

今回の学習指導要領は、1989年版、98・99年版、2008・09年版に続く、平成に入って4回目の改訂で通算では9代目の学習指導要領となります。時代の変化や社会の要請に基づき、これまでおおむね10年に一度のペースで改訂されてきました。学習指導要領とは、各学校で編成する教育課程の基準で、現在は、全員に指導すべき内容を示した最低基準(=ミニマム・スタンダード)と位置付けられており、学習指導要領に書いていない内容を上乗せして指導することも認められています。

学習指導要領改訂までの流れは、およそ以下の通りです。文科大臣が中教審に、新しい学習指導要領について諮問を行います。この諮問に当たり「諮問理由」が示されるのですが、そこではどのような時代の変化や社会背景で指導要領改訂の必要性があるのかについて、書かれています。この諮問を受けて中教審が審議を重ね、「中間まとめ」などの報告も挟みながら、文章に取りまとめ文科大臣に答申します。

文科省では、答申の内容をもとに、学習指導要領の本文をまとめますが、最近では、大きな政策については「パブリックコメント(以下パブコメ)」を実施することが多く、学習指導要領の改訂についても、パブコメを実施しました。パブコメ期間中に、寄せられた意見も踏まえながら、最終的な学習指導要領の本文をまとめ、閣議決定を受け、文科大臣から公示されます。この公示は、官報に告示という形で行われます。

公示された学習指導要領は、教科書の作成が必要な各教科に関する内容については、3年程度の周知徹底と、移行措置期間を経て実施となります。教科書が関わらない内容(=総則や特別活動、総合など)については、順次実施となります。冒頭に示した、実施年度は、各教科の内容までも含む、全面実施となる時期です。

今回の学習指導要領改訂では、情報化の進展やグローバル化の拡大などを見据え今後の社会の変化に対応できる人材を育成するという基本理念のもと、児童生徒に身に付けさせるべき「資質・能力」について、再検討して、具体化しています。今後の未来予測を踏まえて、具体的な人材育成について、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」などの視点から整理するとともに、記述の仕方を大幅に見直しています。

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今回取り上げた内容は、1次試験の筆記試験においてもよく出題される内容です。過去の指導要領がどのような性格だったのかも含めて変遷を確認しておきましょう。次回は、内容の詳細を確認していきます。

【例題】

次の文章は学習指導要領の改訂の経過について述べたものである。文章中の空欄にあてはまる語句を,下の語群から選びなさい。

  • 昭和33年の改訂では,学習指導要領の改訂に先立ち,学校教育法施行規則の一部を改正した。小学校の教育課程は,各教科,( 1 ) ,特別教育活動及び学校行事等によって編成するということを明示した。また,戦後,新教育の潮流となっていた( 2 )や単元学習への偏りすぎる傾向にかんがみ,知識の( 3 )を重視すべきではないかという観点に立ち,小学校では国語・算数,中学校では数学・理科の内容充実が図られ,授業時数を増加させた。高校では,必修科目を増加させた。
  • 昭和43年の改訂では,めざましい社会情勢の進展とともに教育内容の一層の向上が求められるようになった。小・中学校では特別教育活動と学校行事を統合し,( 4 )とし,中学校,高等学校では( 5 )を必修とした。この改訂後,我が国の学校教育は急速な発展を遂げ,高等学校への進学率が90パーセントを超えるに至った。
  • 昭和52年の改訂では,真の意味における知育を充実し,児童生徒の( 6 )の調和のとれた発達をどのように図っていくかが課題となった。具体的には,( 7 )のある学校生活を実現するため,各教科の指導内容を( 8 )し,標準授業時数を( 9 )した。
  • 平成元年の改訂では,( 10 )の基盤を培うという観点に立ち,21世紀を目指し社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることを基本的なねらいとした。具体的には,基礎的・基本的な内容を身に付けさせるため,個に応じた指導など指導方法の改善が図られ, ( 11 )に配慮した道徳教育の充実,人間としての( 12 )に関する教育の充実が提唱された。
  • 平成10年の学習指導要領は,各学校が( 7 )のなかで( 13 )を展開し児童生徒に( 14 )を育成することをねらいとして改訂されたものである。各学校が創意工夫を生かした教育活動を行う時間として( 15 )が創設された。
  • 平成20年の改訂では,引き続き( 14 )をはぐくむことが規定されたが,基礎的基本的な知識技能を確実に習得させ,それらを用いて課題解決するために必要な思考力・判断力・( 16 )の育成をねらい,約30年ぶりに授業時数を増加させた。また,小学校高学年で,新たに( 17 )を設定し教育課程に位置付けた。各教科や( 15 )を通して討論・発表など児童生徒の( 18 )を充実することが示された。なお,戦後60年を経て,( 19 )が,初めて改正され,それを受けた( 20 )の改正で明確になった義務教育の目的・目標を踏まえて指導要領が改訂された。
  • 〔語 群〕
系統性  言語活動  経験主義  構造主義  系統主義  知・徳・体 道徳 総合的な学習の時間  クラブ活動  特色ある教育  生涯学習  心・技・体  在り方生き方  外国語活動  英会話  学校教育法  学校教育法施行規則 ゆとり  生きる力  特別活動  道徳的実践力 行動力 課題解決  能力 増加 削減  精選  厳選  表現力  教育基本法  グループ学習
解答
1:道徳 2:経験主義 3:系統性 4:特別活動 5:クラブ活動 6:知・徳・体 7:ゆとり 8:精選 9:削減 10:生涯学習 11:道徳的実践力 12:在り方生き方 13:特色ある教育 14:生きる力 15:総合的な学習の時間 16:表現力 17:外国語活動 18:言語活動 19:教育基本法 20:学校教育法
解説

指導要領改訂のあらましについては,中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(平成28年12月)でも以下のように示されている。一読しておこう。

  • これまで学習指導要領等は、時代の変化や子供たちの状況、社会の要請等を踏まえ、おおよそ10年ごとに、数次にわたり改訂されてきた。例えば、我が国が工業化という共通の社会的目標に向けて、教育を含めた様々な社会システムを構想し構築していくことが求められる中で行われた昭和33年の改訂、また、高度経済成長が終焉を迎える中で個性重視のもと「新しい学力観」を打ち出した平成元年の改訂など、時代や社会の変化とともに、学習指導要領等の改訂も重ねられてきた。
  • そこでは常に、学校内外の様々な立場の関係者との幅広い対話を通じて、時代の変化や社会の要請などを踏まえながら、将来への展望を描いてきた。このような将来展望とともに、その時点での成果と課題の検証を踏まえながら、未来に向けてふさわしい学校教育の在り方を構築するという作業の積み重ねの上に、学習指導要領等は築かれてきたと言えよう。
  • 改訂に向けた議論においては、教育内容や授業時数の量的な在り方も常に焦点の一つとなってきたところである。教育内容の一層の向上を図った昭和43年の改訂において、学習指導要領等の内容や授業時数は量的にピークを迎えたが、これに対し、学校教育が知識の伝達に偏りつつあるのではないかとの指摘がなされるようになった。その後の改訂では、子供たちがゆとりの中で繰り返し学習したり、自分の興味・関心等に応じた学習にじっくり取り組んだりすること等を目指した平成10年の改訂まで、教育内容の精選・厳選と授業時数の削減が図られてきた。
  • 教育行政がこのような量的軽減を目指す方向性を打ち出す中、時代は21世紀となり、新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域で重要性を増す、いわゆる知識基盤社会を迎えることとなった。こうした社会を生きていく子供たちには、知識を質・量両面にわたって身に付けていくことの重要性が高まる一方で、平成10年の改訂を受けた指導については、子供の自主性を尊重する余り、教員が指導を躊躇する状況があったのではないか、小・中学校における教科の授業時数が、習得・活用・探究という学びの過程を実現するには十分ではなく、学力が十分に育成されていないのではないか、といった危機感が教育関係者や保護者の間に生じた。こうした危機感を受けて、学校においては、知識の量を確保していくための様々な工夫も展開された。
  • 平成15年の学習指導要領一部改正において、その基準性を明確にし、学習指導要領に示されていない内容も加えて指導することができることを明確にしたのも、子供たちの現状と未来を考え、知識を含め必要な力をバランス良く育もうとする、教職員の努力を後押しするものであった。こうした各学校の地道な工夫や努力が、平成20年の改訂に向けた基盤となっていった。
  • 平成20年に行われた前回の改訂は、教育基本法の改正により明確になった教育の目的や目標を踏まえ、知識基盤社会でますます重要になる子供たちの「生きる力」をバランス良く育んでいく観点から見直しが行われた。
  • 特に学力については、「ゆとり」か「詰め込み」かの二項対立を乗り越え、いわゆる学力の三要素、すなわち学校教育法第30条第2項に示された「基礎的な知識及び技能」、「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力」及び「主体的に学習に取り組む態度」から構成される「確かな学力」のバランスのとれた育成が重視されることとなった。教育目標や内容が見直されるとともに、習得・活用・探究という学びの過程の中で、記録、要約、説明、論述、話合いといった言語活動や、他者、社会、自然・環境と直接的に関わる体験活動等を重視することとされたところであり、そのために必要な授業時数も確保されることとなった。