【最新の教育評価入門講座(6)】誰が評価するか…生徒の自己評価 目標と自分の現状を比較する

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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評価をするのは誰ですかと聞かれれば、「教師」と答えるのが普通です。また入試のような評価の場合には、大学入試センターとか志望する大学という答えもあります。しかし教育評価の研究で今注目されているのは、生徒の自己評価です。今回は生徒の自己評価が注目されている理由を説明したいと思います。

生徒の自己評価とは、生徒自身が自分の学習について自分で評価することです。学校では授業の最後に用紙などを配って「よく分かった」とか「分からなかった」などと生徒に答えさせることが行われています。これも一種の自己評価ですが、初歩的なものと考えられます。

自己評価が注目されているのは、生徒の学習の向上に必要なものとみられるようになったからです。以前、筆者の勤務していた高校に、指導力の優れた美術教師がいました。この教師が指導した生徒の作品が、多くの賞を獲得していました。印象的だったのは、校内に展示された作品に、「作品の意図、工夫した点、うまくいった所、改善したかった点」などについて、制作した生徒自身が書いた説明が添付されていたことです。作品もよくできたものでしたが、生徒自身による作品の説明が非常に印象に残っています。今から考えればこの説明は自己評価と言えるものです。優れた作品がたくさん制作されたのは、この自己評価が優れていたことも関係していたと思われます。多分この美術教師の指導によると推定しています。

美術の作品を制作する場合には、教師の指導も重要ですが、生徒自身も時折自分の作品から一歩離れて、「作品の意図(学習の目標)と実際の出来栄え(現状の評価)を比較してみること」つまり自己評価して、修正を繰り返すことが必要です。これは美術に限りません。音楽の演奏でも、自分の演奏が楽譜の通りに演奏できているか常に自分自身でチェックすること、自己評価が必要です。

このような自己評価は実技教科に限りません。どの教科でも必要と考えられます。例えば国語の「書くこと」でも、自分の書いた文章の出来栄えを自分で評価して修正していくことが必要です。用いている語句が文脈から考えて適切であるか、効果的な表現となっているかなど、自分で評価することが必要です。

自己評価に必要なことは、目指す学習の目標を生徒自身が理解することです。美術の場合には、制作する作品の課題について、優れた作品の例を生徒に見せることです。それによって、生徒自身が求められている作品のレベルを暗黙ですが感じ取ることができます。さらに可能ならば、作品のどこが優れているかを言葉で説明することです。作品自体と、その作品の優れたところを言葉で説明されると、何が求められているか生徒は理解できるようになります。これは美術に限りません。国語の「書くこと」でも、優れた文章の例と、その例のどこが優れているかを説明することで、生徒は「書くこと」の目標を知ることができます。この目標と自分の現状を比較する自己評価により改善を繰り返すことで、学習の向上が可能になると考えられます。


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