【神谷正孝の教育時事2021(5)】特別支援教育のポイント

kei塾主任講師 神谷 正孝

文部科学省通知から押さえよう

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾(http://www.kei-juku.jp/)主任講師の神谷です。今回は、以前もこの連載で取り上げた特別支援教育について、新しい内容も含めて時系列で整理していきたいと思います。

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■特殊教育から特別支援教育へ

2007年4月より、特別支援教育の枠組みがスタートしました。児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導、必要な支援を行うものであるとし、最初の段階で障害の有無により教育の場を切り分けないことが従来の特殊教育の考え方との大きな違いです。知的発達の遅れを伴わない発達障害も含め、特別なニーズに応じた教育を、それを必要としている人が在籍している場で行っていこうとする考え方です。この理念については、07年の通知「特別支援教育の推進について」で示されていますが、現在でも採用試験で出題の可能性がある重要部分です。

■障害者の権利に関する条約の批准・発効

07年に、当該条約に署名すると、条約発効に向けて、国内法を整備し、体制を見直す動きが加速します。12年中央教育審議会初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」では、就学先の決定方法の見直しを提言しています。それを受けて、13年の通知「学校教育法施行令の一部改正について」で、障害のある児童生徒も普通学校へ就学することを基本線とする制度変更が行われました。ここでは、特別支援学校へ就学することが決定した児童生徒を「認定特別支援学校就学者」とすることや、学校現場における「合理的配慮」の提供が重要ポイントです。

■高等学校段階における通級指導の開始

16年の通知「学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について」において、高等学校及び中等教育学校後期課程における「通級による指導」の制度化を示しました。これにより、18年4月より高校段階においても通級による指導が開始されています。

■個別の指導計画などの作成

17年の通知※では、学習指導要領改訂に関連し、特別支援教育の改善事項として、特別支援学級や通級による指導における個別の指導計画などを全員作成すること、および通常学級における障害のある幼児児童生徒などについて、個別の指導計画などの作成、活用に努めることを示しています。また、各教科などの指導に当たっては、学習上の困難に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うことを示しています。

■家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト

18年の通知「教育と福祉の移送の連携等の推進について」では、支援が必要な子供やその保護者が、地域で切れ目ない支援が受けられる支援体制の整備のため、文部科学省と厚生労働省による『家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告』で示された内容を推進することが示されました。また、教育と福祉の連携を推進するための方策、保護者支援を推進するための方策について示しています。

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以上、通知を中心に試験対策として重要な特別支援教育の要点を示してきました。図表の内容も確認しておきましょう。

※「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定並びに幼稚園教育要領の全部を改正する告示、小学校学習指導要領の全部を改正する告示及び中学校学習指導要領の全部を改正する告示等の公示について」

1.次の文は、文部科学省「障害者活躍推進プラン ②発達障害等のある子供達の学びを支える~共生に向けた「学び」の質の向上プラン~」(2019年1月23日公表)の一部です。以下の問いに答えなさい。

これからの(ア)に向けて、教育分野においては「一人も置き去りにしない教育」の実現が求められている。

その重要な方策のひとつに、(イ)で過ごしにくさを感じている(ウ)の子供への支援の充実があげられる。

特に、(ウ)の場合、他の障害については①特別支援学校等において指導実践の蓄積があることと比較し、指導方法が十分に確立しているとは言い難い。

そのため、②通級指導や(エ)での指導を受ける児童生徒の割合が増加する中で、今まで以上に多くの教師が、単に障害のある児童生徒を「理解」するだけではなく、一人一人の障害に応じた適切な指導方法を選択・実践する能力も求められている。

一方、(ウ)等のある子供達の指導については、学校以外にも、療育機関や放課後等デイサービス等でも取り組まれており、指導方法に関する一定の知見を有している。こうした指導法に関する知見を集約・整理し、特別支援教育に携わる教師に還元することにより、児童生徒が質の高い教育を受けられる機会を保障し、通級の質の向上とともに、通級での指導方策を通常の学級での指導に活かすことが求められる。

これらにより、障害の有無にかかわらず、学校全体で一人一人のよさを見つけ、それを伸ばしていく環境をつくっていく。

(1) 文中の空欄(ア)~(エ)に当てはまるものとして適切なものを、次の1~12からそれぞれ1つずつ選びなさい。

  1. ダイバーシティ社会
  2. インクルーシブ社会
  3. 共生社会
  4. 特別支援教室
  5. 特別支援学級
  6. 通級指導教室
  7. 保健室
  8. 教育支援センター
  9. 通常の学級
  10. 知的障害
  11. 情緒障害
  12. 発達障害

(2) 下線部①「特別支援学校」の対象となる障害の一つに「聴覚障害者」があるが、これは学校教育法施行令に定める就学基準において「両耳の聴力レベル」が何db以上とされているか。数字で書きなさい。
(3) 下線部②「通級指導」の対象とならないものを、次の1~4から1つ選びなさい。

  1. 知的障害者
  2. 言語障害者
  3. 注意欠陥多動性障害者
  4. 自閉症者

解答

(1) ア:3(共生社会) イ:9(通常の学級) ウ:12(発達障害) エ:5(特別支援学級)

(2) 60

(3) 1

2.次の文は,障害者の権利に関する条約(訳文:外務省)第1条である。下線部については誤りが含まれているものがある。下線部A~Cの語句のうち,適切ではないもののみをすべて挙げているものを1~5から1つ選びなさい。

第1条 この条約は,全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し,保護し,及び確保すること並びに障害者のA固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。

障害者には,長期的な身体的,精神的,知的又は感覚的な機能障害であって,様々なB障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会にC部分的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。

1.A  2.B  3.C  4.A・B  5.B・C

解答 3 【解説】C:「効果的に」である。

3.下の条文は,障害者基本法の一部である。次の各問いに答えなさい。

第16条 国及び地方公共団体は,障害者が,その年齢及び能力に応じ,かつ,その(A)を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため,可能な限りA障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ,教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は,前項の目的を達成するため,障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な(B)の提供を行うとともに,可能な限りその意向を尊重しなければならない。

3 国及び地方公共団体は,障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒とのB交流及び共同学習を積極的に進めることによって,その相互理解を促進しなければならない。

4 国及び地方公共団体は,障害者の教育に関し,調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上,適切な教材等の提供,学校施設の整備その他の(C)の盤備を促進しなければならない。

(1)文中の(A)~(C)に当てはまる語句を下の語群から選んだとき,正しい組合せはどれか。次の1~6から1つ選びなさい。

〈語群〉

ア:地域 イ:状態 ウ:特性 エ:社会 オ:支援 カ:情報 キ:機会
ク:知識 ケ:条件 コ:施設 サ:環境 シ:資源

  1. A-ア B-オ C-サ
  2. A-エ B-オ C-コ
  3. A-ウ B-カ C-サ
  4. A-イ B-カ C-シ
  5. A-ウ B-キ C-コ
  6. A-ア B-ク C-ケ

(2)下線部Aのような教育の体制は,我が国において平成26年2月19日に効力が生じた障害者の権利に関する条約第24条の英文では何と書かれているか。次の1~6から1つ選びなさい。

  1. integrated education system
  2. exclusive education system
  3. isolation education system
  4. inclusive education system
  5. special education system
  6. special needs education system

(3)下線部Bについて,文部科学省が平成20年8月に出している「交流及び共同学習ガイド」で述べられている内容として誤っているものを次の1~5から1つ選びなさい。

  1. 小・中学校等において交流及び共同学習の評価を行うに当たっては,「各教科,領域等の学習においてどのような力が身に付いたか」「活動を通して,相互理解がどのように進んだか」の両面を適切に評価する。
  2. 交流及び共同学習は,小・中学校等の通常の学級と特別支援学校や小・中学校の特別支援学級等との間で行うことが考えられる。両者の教育目標にどのように合致しているのかを確認しておくとともに,両者にどのような教育的効果があるのかを明らかにしておく。
  3. 交流及び共同学習の実施に当たっては,年間指導計画や活動ごとの指導計画を作成する必要がある。その際には,教育課程上の位置付け,評価計画,交流及び共同学習の形態や内容,回数,時間場所,両者の役割分担協力体制等について事前に十分検討する。
  4. 交流及び共同学習は,特別支援学校と近隣の小・中学校等や児童生徒の居住する地域の小・中学校等で行われる。授業時間内に行われる交流及び共同学習については,活動場所によっては,在籍校の授業として位置付けられないことがあることに十分留意する。
  5. 交流及び共同学習を実施した後,活動してみてどう感じたか,今後どのような活動をしていきたいかなどについて,振り返ってみたり,周囲の人に伝えたりすることで,交流及び共同学習に対する関心を一層深めるようにする。

解答(1)3 (2)4 (3)4