【神谷正孝の教育時事2021(6)】中教審「令和の日本型教育」答申について①

kei塾主任講師 神谷 正孝

答申本文を読む前に、キーワードを確認

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾(http://www.kei-juku.jp/)主任講師の神谷です。今回からは、1月26日に出された、中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」を解説していきたいと思います。採用試験対策としても重要な部分が多く含まれているので、複数回に渡って取り扱いたいと思いますが、1回目の今回は、答申本文に入る前の基礎的事項について確認していきます。

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本答申は、「第1.部総論」と「第2.部各論」の2部構成となっています。「総論」は別掲の通り5つ、「各論」は9つの内容から構成されています。採用試験対策という観点から、タイトルだけを見ても出題されそうな部分も多く、かつ時期的にも採用試験の半年前のタイミングでもあり、今夏の試験の重要トピックの一つになりそうです。

内容を見ても、今後の学校教育の在り方についての方向性が示されており、仮に筆記試験で出題されないとしても、論文や面接などの試験までを視野に入れると、押さえておきたい内容にあふれています。

述べられている内容をしっかり理解するためには、これまでも本連載で見てきたような時事的なテーマや動きについて、知識を持っていることが大切です。Society5・0、STEAM教育、GIGAスクール構想、学校現場の働き方改革、教育振興基本計画、学習指導要領など、各所で語られてきた今後の教育の在り方や、教育のトレンドと、答申で述べられていることはリンクしているからです。

また、審議の過程において、新型コロナウイルス感染症による、学校の長期休業が行われたことも提言内容に大きく影響しています。「総論」2において、学校長期休業で明確になった学校の役割として「(1)学習機会と学力の保障(2)全人的な発達・成長の保障(3)身体的、精神的な健康の保障(安全・安心につながることができる居場所・セーフティーネット)」の3つを挙げています。これは論作文のテーマや面接での質問項目などになり得る重要な内容で、それぞれについて自分の考えをまとめられるようにしておく必要があります。

この部分では、変化する社会の中で直面する課題を、別掲のように多岐にわたって指摘しています。それらを踏まえて、「教育振興基本計画の理念の継承」「学校における働き方改革の推進」「GIGAスクール構想の実現」「新学習指導要領の着実な実施」により、課題を解決し、「必要な改革を躊躇なく進める」ことで、「従来の日本型学校教育を発展」させ、「『令和の日本型学校教育』を実現」するとしています。

「令和の日本型教育」の意味するところも押さえておかなければなりませんが、大切なのは、この方向性の基礎となる「教育振興基本計画」「働き方改革」「GIGAスクール構想」「新学習指導要領」などのキーワードです。今後の教育の方向性に関わるキーワードを押さえることが、答申の理念や方向性の確かな理解につながります。逆に言うと、この答申で述べられている内容をたどっていくと、これまで個別に押さえていたキーワード同士が整理されて結び付いていくということです。

次回からは、内容に踏み込んで試験対策として重要な部分を解説したいと思いますが、スムーズに対策を進める上では、教育時事の基礎知識が必須です。別掲するようなワンポイントの理解からはじめて、答申本文の理解に入る前に、基盤となる知識を確認しておきましょう。

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5分でわかる教育時事 2021 第6回 問題編

 

1.次の文は、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)の一部です。空欄に当てはまる語句を書きなさい。

 

1.急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力

 

○ このように急激に変化する時代の中で,我が国の学校教育には,一人一人の児童生徒が,自分のよさや( 1 )を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と( 2 )しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるよう,その資質・能力を育成することが求められている。

○ この資質・能力とは,具体的にはどのようなものであろうか。中央教育審議会では,平成 28 年答申において,社会の変化にいかに対処していくかという受け身の観点に立つのであれば難しい時代になる可能性を指摘した上で,変化を前向きに受け止め,社会や人生,生活を,人間ならではの( 3 )を働かせてより豊かなものにする必要性等を指摘した。とりわけ,その審議の際に AI の専門家も交えて議論を行った結果,次代を切り拓く子供たちに求められる資質・能力としては,文章の意味を正確に理解する( 4 )力,教科等固有の見方・考え方を働かせて自分の頭で考えて表現する力,対話や( 2 )を通じて知識やアイディアを共有し新しい解や( 5 )を生み出す力などが挙げられた。また,豊かな情操や規範意識,自他の生命の尊重,自己肯定感・自己有用感,他者への思いやり,対面でのコミュニケーションを通じて人間関係を築く力,困難を乗り越え,ものごとを成し遂げる力,公共の精神の育成等を図るとともに,子供の頃から各教育段階に応じて体力の向上,健康の確保を図ることなどは,どのような時代であっても変わらず重要である。

 

解答 1:可能性 2:協働 3:感性 4:読解 5:納得解

 

2.次の文は、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)の一部です。空欄に当てはまる語句の組み合わせとして正しいものを選びなさい。

 

3.2020 年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿

○ 第2期,第3期の教育振興基本計画で掲げられた「自立」,「協働」,「( A )」の3つの方向性を実現させるための生涯学習社会の構築を目指すという理念を踏まえ,学校教育においては,2.(3)で挙げた子供たちの多様化,教師の長時間勤務による疲弊,情報化の加速度的な進展,少子高齢化・人口減少,感染症等の直面する課題を乗り越え,1.で述べたように,Society5.0 時代を見据えた取組を進める必要がある。これらの取組を通じ,一人一人の児童生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,( B )の創り手となることができるよう,その資質・能力を育成することが求められている。

○ このためには,2.(1)で述べてきた明治から続く我が国の学校教育の蓄積である「日本型学校教育」の良さを受け継ぎながら更に発展させ,学校における働き方改革とGIGA スクール構想を強力に推進しながら,新学習指導要領を着実に実施することが求められており,必要な改革を躊躇なく進めるべきである。

○ その際,従来の社会構造の中で行われてきた「( C )」や「同調圧力」への偏りから脱却し,本来の日本型学校教育の持つ,授業において子供たちの思考を深める「発問」を重視してきたことや,子供一人一人の多様性と向き合いながら一つの( D )(目標を共有し活動を共に行う集団)としての学びに高めていく,という強みを最大限に生かしていくことが重要である。

○ 誰一人取り残すことのない,持続可能で多様性と( E )のある社会の実現に向け,学習指導要領前文において「持続可能な社会の創り手」を求める我が国を含めた世界全体で,SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいる中で,ツールとしての ICT を基盤としつつ,日本型学校教育を発展させ,2020 年代を通じて実現を目指す学校教育を「令和の日本型学校教育」と名付け,まずその姿を以下のとおり描くことで,目指すべき方向性を社会と共有することとしたい。

A     B        C       D     E

1 創造  持続可能な社会  事なかれ主義  チーム   包摂性

2 判断  持続可能な社会  事なかれ主義  チーム   包摂性

3 創造  グローバル社会  正解主義    グループ  柔軟性

4 判断  グローバル社会  正解主義    グループ  柔軟性

5 創造  持続可能な社会  正解主義    チーム   包摂性

 

解答1