模擬授業・場面指導は現場経験の少ない学生の受験者にとっては、なかなかやっかいなものである。そこで試験官の印象に残る模擬授業のポイントを見ていこう。コロナ禍の影響で今夏の試験で模擬授業がどのように行われるかまだ分からないが、これは実際に現場に着任してからも授業テクニックとして実践に役立つものである。
〈板書〉
〇授業内容を視覚化する
板書は授業内容を視覚化できるものである。これがしっかりできていると、全体の印象がよくなるので、勉強しておきたい。
よい板書の基本は、授業終了時に「1時間の授業内容が分かりやすく表現されている」こと。主なポイントは次の通り。
▽「早く、丁寧に、正しく書く」=制限時間があるからと言って、書きなぐらないようにする。あくまでも丁寧さを忘れずに、早く書けるようにしておこう。板書は子供がノートに写したり、書き方をまねしたりするものだからだ。
▽カラーチョークを上手に使う=意外に赤青黄色の3種程度は用意されている場合が多いので、できるだけ活用する。例えば、「子供の意見は青で囲む」「まとめは赤で囲む」などである。あらかじめ考えておくこと。
▽記号や囲みなどを効果的に使う=チョークと一緒で、構造的で見やすい板書になるようにする。もし、板書に関わるグッズ、例えばマグネットなどが用意してあったら、できるだけ使おう。板書効果を高めるのに有効である。指示棒もあれば、ぜひ使用したい
▽子供たちに板書をノートに写させる=実際の授業では、どこを写すのか、教師と子供たちとでルールを決めておくとよい。試験では、「ここは大事です」などと言ってノートに写すことを指示するとよいだろう。
また、黒板は教師だけが利用するものではない。子供たちにも意見を書かせるなどで利用させたい。例えば、国語の場合、「物語の主人公に聞きたいことを書こう」などと言って黒板に書かせる。次に「同じ内容の質問をまとめる」などの作業を子供たちにさせるなどして、板書を生かしていく。
試験では子供たちに書かせるわけにはいかないが、そのような設定を混ぜておくのもよい。
〈発問〉
〇教材研究が必須である
同じ学習内容でも、発問の工夫で子供たちの反応が全く異なることがある。発問の原則を身に付け工夫することで、子供たちの反応はよりよいものに変わる。
発問の例としては次のようなものがある。
▽数を聞く=「〇〇していた人は、何人いましたか」などと数を問う。
▽選ばせる=「〇〇と□□では、どちらがふさわしいと思いますか」など選択肢から選ばせる。
▽矛盾に思われることなどを考えさせる=「いじめがなくなるようにみんなが努力しているのになぜなくならないのでしょうか」などを考えさせる。
▽提案を促す=「学校でできるエコについて、あなただったら何に取り組みますか」など理由を含めて提案してもらう。
よい発問をするには、何よりも教材研究が必要である。その教材には、その教材ならではの発問がある。それができるようになるには、教材研究をしっかり行わなくてはならないのである。
試験では、あらかじめ模擬授業で扱う教材が指定されているのであれば、じっくりと分析しよう。当日に示される場合もあるので、日頃から教材研究に取り組んでおけば対応できるだろう。
なお、教材によってはネットで発問例を検索できる。例えば、「宮沢賢治 やまなし 授業の発問例」で検索すれば、具体的な発問例を見ることが可能だ。都道府県立の教育センターのサイトでも指導案および発問例を探すことができる。大事なのは自分で発問を作れるようになることなので、ネットで得られる、このような時報は参照にとどめたい。