印象に残る模擬授業のポイントは② 指導の理由なども考える指示、指名、教科書など

印象に残る模擬授業のポイントは② 指導の理由なども考える指示、指名、教科書など
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前回に続いて、授業テクニックから学ぶ、試験官の印象に残る模擬授業のポイントを紹介する。指示、指名、教科書についてである。〈指示〉〇具体的でイメージできるものを指示がてきぱきと出されている授業はスムーズで、気持ちのいいものである。模擬授業でも、そのようにしたい。教員の指示一つで子供たちが次の活動や作業にさっと移る、ノートの板書を書き写すなどのように、である。授業をスムーズに、学習を効率的に進めるには、上手な指示が必要である。主なポイントは次のようなものである。▽基本は「短く、はっきり」。「〇〇してください」「□□しましょう」と端的に言う。▽数を入れる=「あと5分でまとめなさい」「この中から3つ選びましょう」など数字を入れると目安が付きやすい。また「先生が説明しているときは貝のように口を閉じていましょう」など比喩を入れるのもイメージがしやすくなるので有効である。▽小さな声の指示などで緩急をつける=子供たちを集中させたいときは、ささやくなど小さな声で指示を出すと効果的である。▽活動を褒める=「しっかりとまとめることができて素晴らしいです」「これができるとは、さすが〇年生です」など指示した活動や作業ができていたら、しっかり褒める。次の指示がしやすくなる。発問の後の指示は重要である。写真や図を見せて、「ここから分かることは何でしょう」の後、「グループで話し合いましょう」「ノートにまとめましょう」などとしっかり指示を出すことが大事。優れた発問でも、その後の指示があいまいだと生きてこない。何を考え、何をするべきか、発問と指示はセットであることを意識しよう。〈指名〉〇全員参加を目指して一般的な指名方法は、教員が「この問題が分かる人はいるかな」と問い、それに対して子供たちが挙手し、「では、○○さん、答えてください」という流れである。このように「挙手↓指名」をワンパターンで行うと、回答者・発言者が固定化する恐れがある。全員が授業に参加できるようにするための指名方法はどのようなものか、以下にいくつか例を挙げる。▽列指名=教室で子供たちが座っている列で指名していく。この場合、曜日で指名する列を決めるルールなどを作ってもよい。例えば、廊下側から1列目が月曜日、2列目が火曜日のように、である。その列の一番前か後ろから一人ずつ指名していく。これなら指名に偏りが起きない。▽数指名=回答がいくつか考えられるとき、答えの数が少ない子供から答えさせる。「図から気付いたことは何でしょうか」と発問した後、「答えが1つの人は起立しましょう。一人ずつ発表してください」という流れ。これを「答えが2つの人」「3つの人」と続けていく。これだと発言や回答が少ない子供が優先される。▽完全挙手=全員がどちらかの選択肢を選んで挙手する。「3つのうち、どれを選びますか」「1と2はどちらがよいですか」などと発問し、必ず挙手をさせる。これだと挙手できるので、全員が授業に参加するようになる。積極的な子供を満足させる、一人でも多くの子供に発言させるような指名ができるとよい。模擬授業でもこのような指名を行い、終了後の面接でなぜこのような指名をしたのか、理由を述べられるとよく考えられた授業と捉えられる。また、机間指導しながらあらかじめ指名するという手法もよい。子供たちの作業中などに机間指導をして、ノートや解答を見て回る。そして、「この考えはいいね。最初に発表してください」などと指名する。こうすれば、自信のない子供でも準備の時間が取れる。模擬授業でもこのような机間指導の演技を取り入れるとよいだろう。〈教科書〉〇書き込みなどを指示する授業では、主たる教材である教科書を活用することになっている。教科書は専門の学者や現場の教員などスタッフとして作成されたものであるから、フルに活用したい。「本文を読ませて、あとは時々見るだけ」だけでは物足りない。どう活用するのか。▽しっかり読ませて基礎知識を付ける=本文だけではなく、図表、写真、脚注などにも目を通させる。模擬授業では、教科書を読ませる時間はないので、読んできた前提、読んだ直後からの前提で進めてもよいだろう。▽書き込みなどで学習の跡が分かるようにする=アンダーラインを引く、キーワードを〇で囲む、解けた問題はチェックする、などである。模擬授業でも「大事だと思うところにアンダーラインを引いてください」などの指示を出すとよい。模擬授業の課題があらかじめ指示されているなら、その教材が掲載されている教科書を買って、事前に「教科書研究」をしておくとよい模擬授業ができる。「教科書研究」のポイントにも触れておく。社会科の教科書研究を例に挙げる。まずは、本文や資料をじっくりと読む。資料には多くの情報がつまっているので、しっかりと読んで押さえておく。次に指導の目標と内容を決める。重点的に教えるところ、軽く扱うところを見分け、それをもとに目標と内容を決める。そして、具体的な指導法を考え、さらに、具体的な発問や指示を考えていく。ぜひ、「教科書研究」の練習をしておこう。〈個への対応〉〇机間指導などを取り入れる試験の模擬授業で行う授業形態は、通常一斉指導である。さまざまな授業形態で最も多いのも、一斉指導である。もちろん全体への指導は重要であり、これがきちんとできているかどうかは、試験でもまずはポイントとなる。しかし、その上で個に応じることができていれば、かなりよい印象となるだろう。一斉指導の中で個に応じるためのテクニックをいくつか紹介する。▽基本は小刻みなチェック=小刻みに全員をチェックすることが個への対応の基本である。「社会で調べ学習をする」「算数でドリルなどの計算問題を解く」などの活動場面などを上手に使うと個に対応することができる。例えば机間指導をしたり、ノートを教卓に持ってこさせたりする場面である。問題集やノートを短い時間でしっかりとチェックし、「これはいいね」「あっているね」「きちんとまとめられているね」などと声を掛け、場合によっては丸を付けたり、赤で励ましの言葉を書いたりする。試験でも、このような動きを取り入れよう。挙手で確認することもできる。「全問解くことができた人は」「考えを3つ書けた人は」などと手を挙げさせて個の状況を確認するのである。▽つまずきのある子供への対応=つまずいている子供への対応は、何よりも「分かりやすい言葉で」である。そして、指導の時間はできるだけ「短く」である。また、つまずいている子供を指導しているときに注意しなくてはならないのは、個別指導を受けている子供が「自分は勉強ができないんだ」という気持ちになってしまうことである。実際の授業では、丁寧な配慮が必要になる。▽進んでいる子供への対応=実際の授業では、一部のつまずきのある子供の個別指導をしていると作業や学習が早い子が退屈してしまうということがある。その対応にはあらかじめ発展問題で作ったプリントなどを用意しておくとよい。試験でも、「問題が早く解けた人には、先生がスペシャルプリントを作ってきました」などというと授業を多角的に捉えている印象となる。

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