【神谷正孝の教育時事2021(7)】中教審「令和の日本型教育」答申について②

kei塾主任講師 神谷 正孝

「令和の日本型学校教育」とは

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾(http://www.kei-juku.jp/)主任講師の神谷です。前回に引き続き、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」を解説していきたいと思います。2回目の今回は、総論の「3 2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿」について解説したいと思います。

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新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善ということが求められています。また、1982(平成元)版の学習指導要領以降、重視されている「個に応じた指導」の一層の重視・充実が示されています。答申によれば、この「個に応じた指導」は、支援を要する子供への重点的な指導や個々の特性に応じた指導方法・教材などを提供・設定する「指導の個別化」と、各自の興味関心などに応じ、一人一人に応じた学習活動・学習課題に取り組む機会の提供という「学習の個性化」の2つから成ります。

併せて、学習指導要領には、コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用することも示されており、このことも「個に応じた指導」の観点からも重要です。今般の、GIGAスクール構想の実現により、学校現場のICT環境が整備され、1人1台端末が実現されるとそれらを活用した指導方法の工夫や指導体制の改善が行われることになるでしょう。

このような状況の中で、「令和の日本型学校教育」の姿として、前述したような「個に応じた指導」を学習者の視点から整理した「個別最適な学び」が提言されています。

また、答申では、「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないよう、これまでの「日本型学校教育」で重視されてきた、探究的な学習や体験活動などを通じ、子供同士・多様な他者と協働する「協働的な学び」の充実も提言されています。その上で、「個別最適な学び」の成果を「協働的な学び」に生かし、それをさらに「個別最適な学び」に還元するなど、両者を一体的に充実させることで、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなぐことが必要であるとしています。

以上より、目指すべき「令和の日本型学校教育」の姿とは、「すべての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」とされました。採用試験対策としては、「個別最適な学び」(「指導の個別化」、「学習の個性化」)、及び「協働的な学び」について述べられた答申の本文について空欄補充できるようにしておくことが必要です。

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さらに答申では、上記内容を基に、各学校段階において実現されるべき「学びの姿」についてまとめています。義務教育や高校教育、特別支援学校における「子供の学びの姿」について確認しておきましょう。このうち、高校では「STEAM教育」など実社会の課題解決に生かすための教科横断的な学びについて言及されていることは要チェックです。

また、子供の学びとは別に「教職員の姿」についても言及されています。その中で、「主体的な学びを支援する伴走者の役割」が示されていることについては、自己の教育観と関連付けて、深めておく必要があります。

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今回取り上げた、「令和の日本型学校教育」の姿は重要です。答申本文も確認しておきましょう。次回は、この続きに示されている、「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性やICTの活用について取り上げていきたいと思います。

1.次の文は、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)の一部です。空欄に当てはまる語句の組み合わせとして正しいものを選びなさい。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による臨時休業の長期化により,多様な子供一人一人が( A )として学び続けていけるようになっているか,という点が改めて焦点化されたところであり,これからの学校教育においては,子供が ICT も活用しながら自ら学習を調整しながら学んでいくことができるよう,「個に応じた指導」を充実することが必要である。この「個に応じた指導」の在り方を,より具体的に示すと以下のとおりである。

全ての子供に基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させ,思考力・判断力・表現力等や,自ら学習を調整しながら粘り強く学習に取り組む態度等を育成するためには,教師が支援の必要な子供により重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや,子供一人一人の特性や学習進度,学習到達度等に応じ,指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなどの「( B )」が必要である。

基礎的・基本的な知識・技能等や,言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力等を土台として,幼児期からの様々な場を通じての体験活動から得た子供の興味・関心・キャリア形成の方向性等に応じ,探究において課題の設定,情報の収集,整理・分析,まとめ・表現を行う等,教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで,子供自身が学習が最適となるよう調整する「( C )」も必要である。

以上の「指導の個別化」と「学習の個性化」を教師視点から整理した概念が「個に応じた指導」であり,この「個に応じた指導」を学習者視点から整理した概念が「( D )」である。

A          B        C        D

1 自立した学習者     指導の個別化  学習の個性化  個別最適な学び

2 自立した学習者     学習の個性化  指導の個別化  個別最適な学び

3 持続可能な社会の担い手 指導の個別化  学習の個性化  個別最適な学び

4 持続可能な社会の担い手 学習の個性化  指導の個別化  最適個別な学び

5 主体的な学習者     指導の個別化  学習の個性化  最適個別な学び

6 主体的な学習者     学習の個性化  指導の個別化  最適個別な学び

 

2.次の文は、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)の内容として適切でないものを1つ選びなさい。

1.「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないよう,これまでも「日本型学校教育」において重視されてきた,探究的な学習や体験活動などを通じ,子供同士で,あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,様々な社会的な変化を乗り越え,持続可能な社会の創り手となることができるよう,必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」を充実することも重要である。

2.「協働的な学び」においては,集団の中で個が埋没してしまうことがないよう,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなげ,子供一人一人のよい点や可能性を生かすことで,異なる考え方が組み合わさり,よりよい学びを生み出していくようにすることが大切である。

3.「協働的な学び」は,感染防止対策のため、異学年間の学びや他の学校の子供との学び合いなどは含まず同一学年・学級を原則とする。知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」のよさを生かし,学校行事や児童会(生徒会)活動等を含め学校における様々な活動の中で同学年間の交流の機会を充実することで,子供が自らのこれまでの成長を振り返り,将来への展望を培うとともに,自己肯定感を育むなどの取組も大切である。

4.授業の中で「個別最適な学び」の成果を「協働的な学び」に生かし,更にその成果を「個別最適な学び」に還元するなど,「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなげていくことが必要である。

5.人間同士のリアルな関係づくりは社会を形成していく上で不可欠であり,知・徳・体を一体的に育むためには,教師と子供の関わり合いや子供同士の関わり合い,自分の感覚や行為を通して理解する実習・実験,地域社会での体験活動,専門家との交流など,様々な場面でリアルな体験を通じて学ぶことの重要性が,AI 技術が高度に発達する Society5.0 時代にこそ一層高まるものである。

 

解答・解説

1.解答 1

2.解答 3 解説 正しくは以下の通り。「「協働的な学び」において,同じ空間で時間を共にすることで,お互いの感性や考え方等に触れ刺激し合うことの重要性について改めて認識する必要がある。人間同士のリアルな関係づくりは社会を形成していく上で不可欠であり,知・徳・体を一体的に育むためには,教師と子供の関わり合いや子供同士の関わり合い,自分の感覚や行為を通して理解する実習・実験,地域社会での体験活動,専門家との交流など,様々な場面でリアルな体験を通じて学ぶことの重要性が,AI 技術が高度に発達する Society5.0 時代にこそ一層高まるものである。」