【神谷正孝の教育時事2021(8)】中教審「令和の日本型学校教育」答申について③

kei塾主任講師 神谷 正孝

「今後の方向性やICTの活用」

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾(http://www.kei-juku.jp/)主任講師の神谷です。前回に引き続き、中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」を解説していきたいと思います。3回目の今回は、総論の「4」「5」について解説します。

◇ ◇ ◇

総論4「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性

答申では、これまでの日本型学校教育が果たしてきた3つの保障(①学習機会と学力の保障②社会の形成者としての全人的な発達成長の保障③安全・安心な居場所・セーフティネットとしての身体的、精神的な健康の保障)を学校教育の本質的な役割として重視し、これを継承していくことを示しています。そして、前回確認した目指すべき「令和の日本型学校教育」の実現のために、6つの方向性(4月19日付本紙)を示しています。

このうち、採用試対策としては、「(3)これまでの実践とICTとの最適な組合せを実現する」および「(4)履修主義・修得主義等を適切に組み合わせる」を中心に押さえておきましょう。(3)では、ICT環境や先端技術の活用により、新学習指導要領の着実な実施や、学びにおける時間的・距離的制約の除去、個別最適な学びの支援などに寄与する可能性が示されています。ICTについては討論や論文などでテーマとなることも多いのですが、「活用法・使い方」に走ってしまうのではなく、「何のためにICTを活用するのか」という目的から考えることが大切です。ここで示されている内容を参考にしておきましょう。

続いて(4)ですが、ここでは、「履修主義」「修得主義」などの語句の意味を確認しておくことが大切です。令和の日本型学校教育が目指す、「個別最適な学び」(「指導の個別化」、「学習の個性化」)、および「協働的な学び」)との関係では、「指導の個別化」に修得主義の考え方を生かすこと、「学習の個性化」に修得主義と履修主義の考え方を組み合わせること、「協働的な学び」に履修主義の考え方を生かすことが「期待される」としています。

◇ ◇ ◇

総論5「令和の日本型学校教育」の構築に向けたICTの活用に関する基本的な考え方

答申では、まず、全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びを実現するためには、ICTは必要不可欠であるとし、これまでの実践とICTとを最適に組み合わせることで、さまざまな課題を解決し、教育の質の向上につなげていくことの必要性を述べています。次に、ICTを活用すること自体が目的化しないようにすることや、健康面を含め、ICTが児童生徒に与える影響に留意することも必要であるとし、学校におけるICT環境の整備とその活用により、Society5.0時代にふさわしい学校の実現が求められるとしています。(1)で述べられている、「学校教育の質の向上に向けたICTの活用」や(2)で示されている「教師の資質・能力の向上」については確認しておきましょう。

◇ ◇ ◇

答申では、「一斉授業か個別学習か、履修主義か修得主義か、デジタルかアナログか、遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった「二項対立」の陥穽に陥らず、教育の質の向上のために、発達の段階や学習場面などにより、どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていくという考え方に立つべき」としています。近視眼的な視点を脱し、俯瞰(ふかん)的に考えてみることが大切です。

1.次の文は、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)の一部です。空欄に当てはまる語句の組み合わせとして正しいものを選びなさい。

家庭の経済状況や地域差,本人の特性等にかかわらず,全ての子供たちの知・徳・体を一体的に育むため,これまで日本型学校教育が果たしてきた,①( A )の保障,②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障,③安全・安心な居場所・セーフティネットとしての身体的,精神的な健康の保障,という3つの保障を学校教育の本質的な役割として重視し,これを継承していくことが必要である。

その上で,「令和の日本型学校教育」を,社会構造の変化や感染症・災害等をも乗り越えて発展するものとし,「全ての子供たちの可能性を引き出す,( B )と,協働的な学び」を実現するためには,今後,以下の方向性で改革を進める必要がある。

(略)

また,学校だけではなく地域住民等と( C )し,学校と地域が相互にパートナーとして,一体となって子供たちの成長を支えていくことが必要である。その際,コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)と地域学校協働活動を一体的に実施することが重要である。

さらに,一斉授業か個別学習か,履修主義か修得主義か,デジタルかアナログか,遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった,いわゆる「( D )」の陥穽に陥らないことに留意すべきである。どちらかだけを選ぶのではなく,教育の質の向上のために,発達の段階や学習場面等により,どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていくという考え方に立つべきである。

A        B        C      D

1 学習機会と学力  学習の個性化   分担・協力  二項対立

2 高水準の学力   個別最適な学び  分担・協力  二律背反

3 学習環境と学力  学習の個性化   分担・協力  二項対立

4 高水準の学力   学習の個性化   連携・協働  二律背反

5 学習機会と学力  個別最適な学び  連携・協働  二項対立

6 学習環境と学力  個別最適な学び  連携・協働  二律背反

 

2.次の文は、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)の総論で示された「ICTに活用」に関するものである。内容として適切なものを1つ選びなさい。

1.教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(コラボレーション)など,これまでの実践と ICT とを最適に組み合わせることで,学校教育における様々な課題を解決し,教育の質の向上につなげていくことが必要である。

2.ICT はこれからの学校教育に必要不可欠なものであり,基盤的なツールとして最大限活用していく必要があるが,その活用自体を目的とすることに留意が必要である。

3. ICT を活用することとは別に,教師には,協働的な学びを実現し,多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することが求められる。

4.児童生徒自身が ICT を「電子機器」として自由な発想で活用できるよう環境を整え,授業をデザインすることが重要である。

5.個別最適な学びと協働的な学びを実現するためには, ICT の効果的活用と少人数によるきめ細かな指導体制の整備を両輪として進め,児童生徒一人一人に寄り添ったきめ細かな指導,学習活動・機会の充実を図る必要がある。

解答・解説

1.解答 5

2.解答 5 解説 1:「コラボレーション」ではなく「ハイブリッド化」である。2:「活用自体を目的としない」ことが示されている。3:「教師には,ICT も活用しながら,協働的な学びを実現し,多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することが求められる。」と示されている。4:「電子機器」ではなく「文房具」である。