【深い学び入門(1)】「深い学び」と「浅い学び」

 

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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新しく「教員志望者のための『主体的・対話的で深い学び』入門」の連載を始めます。この現在の教育活動の最大のキーワードを教員志望者として、どのように理解し、試験においてどのように対応するか、に焦点を当てます。連載の前半は概説を、後半は採用試験の問題例を解説します。教育評価の研究の第一人者である鈴木秀幸氏が執筆します。

この連載では20年度の小学校を皮切りに順次実施されている新学習指導要領で目指している「主体的・対話的で深い学び」についての理解を深めることを目標として、関連する事項も含めて説明していきたいと思います。

「主体的・対話的で深い学び」は「アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善」を目指すこととも言われており、アクティブ・ラーニングという言葉を最近よく聞くのではないでしょうか。

そこで第1回は「主体的・対話的で深い学び」の中の「深い学び」について考えてみたいと思います。「深い学び」を、これと対極にある「浅い学び」と比較して考えます。

新学習指導要領で「深い学び」を強調するようになったのは、これまでの生徒の学習が「浅い学び」ではなかったかという問題意識によるものです。「浅い学び」とは、学習した知識や概念、原理などの表面的な意味しか理解していなかったり、なぜそうするのか分からないまま手順だけ身に付けていたりすることです。また、相互に矛盾する見方や考え方をそれと気付かず持っているのも特徴です。

「浅い学び」の例を挙げてみます。高校生に次のような問題を解かせたことがあります。「消費税8%を含めた値段が918円の商品の消費税を除いたもとの値段はいくらですか」というものです。多くの高校生が「918×0・08」という計算をして消費税の金額を計算し、「918―消費税額=もとの値段」を導き出そうとするのです。

私は大変驚きました。もちろん最初の計算で小数点以下の数字が出てくるので、おかしいと思いながらもどうしていいか分からなくなっています。「918÷1・08」と計算する生徒は少数派です。問題を解かせた高校生は、中学レベルの計算はほとんどできたはずなのですが、高校生になるとすっかり忘れているのです。中学のころもできなかったとしたら、これも「浅い学び」の例となります。「浅い学び」をしていると、学習したときはできるのですが、時間がたつと忘れてしまいます。学習したことを応用することができないのも「浅い学習」の特徴です。

これに対して「深い学び」は、「浅い学び」とは対照的に、学習した知識や概念、原理などの根本的な意味まで理解したり、なぜそうするのかその理由や考え方を理解した上で、しかるべき手順を用いることができたりすることです。このような学習が行われると、学習した知識や概念をどのような場合に用いて良いか、逆に用いるべきでないかを判断できるようになります。さらに、「浅い学び」と異なり、学習が終わった後も長く記憶に残るのも特徴となります。

このような「深い学び」と「浅い学び」の違いの背景には、学習とはどのようなものであるかという学習観の違いがあります。次回はこの学習観の違いについて説明します。


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