【深い学び入門(2)】「ブロック積み」と「構成主義」の学習観

 

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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第1回では新学習指導要領で求められている「深い学び」を「浅い学び」と対比させてその特徴を説明しました。この両者の違いの背景には、学習観の違い、学習とはどのようなことをするものかについての考え方の違いがあります。

「浅い学び」の背景をなす学習観は、学習をレンガやコンクリートブロックを積み上げるようなものであるとする学習観です。レンガやブロックを積み上げるには、すでに積んであるレンガやブロックの上に新しいものを積み上げる作業を繰り返すことになります。学習も同様に、すでに学習した事項に、新しく学習した事項が積み重なっていくことと考えます。これをブロック積学習観と言います。

これに対して「深い学び」の背景をなす学習観は、構成主義の学習観です。構成主義の学習観では、学習とは新しく学習したことを前に学習したことと対比して、既に学習したことを修正したり、新しいものと入れ替えたりすることと考えます。ブロックで言えば、新しいブロックで古いブロックを入れ替えることを必要とする(もちろん本物のブロックではそのようなことはできませんが)と考える学習観です。

高校生に「四季の変化はなぜ起こるか」と聞いてみたことがあります。すると多くの生徒が、「夏は地球が太陽に近づき、冬は遠ざかるから」と答えました。中学校での学習で、地球の自転軸が公転面に対して傾いているため、季節によって太陽の高度が変化し、単位面積当たり受ける熱量が変化するためと学習したはずなのですが。

季節の変化を太陽との距離で説明するのは、ストーブに近づくと熱くなり、離れると寒くなるという日常生活の経験に基づいています。

中学校で新しい科学的な説明をする時には、これと生徒が以前から持っている日常生活の経験とを照らし合わせて、日常生活の経験では季節の変化を説明できないと明確に意識させる必要があります。単に科学的な説明を覚えているだけの場合には、時間がたつと科学的な説明は忘れて、もとの日常生活の経験からの説明に戻ってしまうのです。

構成主義の学習観では、新しい知識と既存の知識を比較させて、矛盾があるか考えさせる必要があると考えます。そのため、季節の変化を距離で説明した場合には、「日本では夏でも、オーストラリアでは冬になるのはどう説明しますか」などと問い掛けて、矛盾に気付かせて考えさせることを必要とします。

全ての学習を構成主義で行うべきだと言っているわけではありません。例えば、漢字の学習や、県の名前やその位置などの場合には、ブロック積み学習観に基づいた学習が必要です。ただし、ブロック積み学習観に基づく「浅い学び」で学習したことは、常に使っていないと忘れてしまいます。コンピューターでワープロソフトなどで文章を書いていると、漢字を自動的に変換してくれます。そのため、いざ手書きで漢字を書こうとすると、漢字を書けなくなっていることに気が付きます。


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