【神谷正孝の教育時事2021(10)】児童生徒の自殺予防

kei塾主任講師 神谷 正孝

現状把握と対処を押さえよう

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾(http://www.kei-juku.jp/)主任講師の神谷です。今年の採用試験もいよいよ1次試験が始まりました。コロナ禍で、試験内容の変更などもあるようですが、最終合格に向けてしっかりと備えましょう。さて、そうした中で、今年のトピックとして押さえておきたいのは、(重たいテーマで恐縮ですが)児童生徒の自殺についてです。本紙でも話題になっていましたが、改めて記事のバックナンバーも確認しておきましょう。

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児童生徒の自殺は、各所で報道されている通り、コロナ禍の中で増えています。統計資料は複数あります。文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では年度で集計しているので、手元の最新データは2019年のものです。1月から12月までの年単位で集計しているのが、警察庁・厚労省の自殺統計(21年3月16日)です。それによると、「令和2年中における児童生徒の自殺者数」は499人で、そのうち、女子中高生の自殺者数は209人となっています。なお、文科省「児童生徒の自殺予防について(通知)」(21年3月1日)でもこの統計の数字に触れています(暫定値)が、本稿に示した数字が最新の確定値です。通知では、自殺者数増加を踏まえ、児童生徒の自殺予防に向けた取り組みの実施について示しています。

児童生徒の自殺の背景にはさまざまな要因があります。そして、それらの要因は複雑に絡まりあっていることも多くあります。背景の分析や具体的な対処については、専門家に委ねたいと思いますが、教員を目指す上で持っておきたい知識事項としては、文科省が進める行政政策や各種資料です。面接などでは、先に挙げた通知や各種資料などを押さえた上で、対処する必要があります。

医学や心理学など、必要以上に深い知識は求められませんが、当事者として目の前の児童生徒へどのように対応するかが問われることになります。過去の面接で、「夜中に、あなたの家に、これから自殺しますと書かれたFAXが送られてきました。差出人は分かりません。どのように対応しますか」などと聞かれる質問がありました。もちろん、前提となる事情が分からない中で完全なる正解はありません。しかし、さまざまな資料で得た知識やそこからの想像力、さらに自分が問題意識として感じていることをもとに、回答するのとそうでないのとでは大きく差が開くことになります。自殺の兆候としてどのようなサインがあるのか、自殺につながる環境的な要因や、個々の事情、児童生徒の性格や病歴など具体的な状況がイメージできれば回答も変わってきます。掘り下げの質問などで、このテーマについての問題意識も問われるかもしれません。

文科省が進めている施策に「自殺予防教育」があります。また、「困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育(=SOSの出し方に関する教育)」も重要です。児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議も「自殺の危険とその対応について、正しい知識を子供に与える必要がある。この世代の心の健康な発達は、現時点での自殺予防にとどまらず、生涯にわたる心の健康の基礎作りとしても重要である」としています(同会議「20146・7審議のまとめのポイントについて」)。

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同会議は「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」マニュアルを発表しています。この中で第2章に示された「自殺のサインと対応」の項目は一度目を通しておきましょう。この中で示されている「TALKの原則」は1次試験の筆記でも出題されています。

 

1.下のア~オの文で、「児童生徒の自殺予防について(通知)」(2021年3月1日 文部科学省)の内容として正しいものの組合せを下の1~5の中から一つ選べ。

ア 児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす等の書き込みを発見することは,自殺を企図している児童生徒を発見する端緒の一つであるため、教員が分担してネット上のパトロールに当たること。

イ 学校が把握した悩みを抱える児童生徒や,いじめを受けた又は不登校となっている児童生徒等については,長期休業期間中においても,全校(学年)登校日,部活動等の機会を捉え,又は保護者への連絡,家庭訪問等により,継続的に様子を確認すること。

ウ 児童生徒に自殺を企図する兆候がみられた場合には,児童生徒と信頼関係を築いた特定の教職員が一人で対応し、特に必要な場合に限り、保護者,医療機関等と連携しながら対応すること。

エ 保護者に対して,長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りを行うよう促すとともに、保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については,積極的に学校に相談するよう,24時間対応可能な学校の相談窓口を周知しておくこと。

オ 「困難な事態,強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育」(「SOSの出し方に関する教育」)を含めた自殺予防教育を実施するなどにより,児童生徒自身が心の危機に気づき,身近な信頼できる大人に相談できる力を培うとともに,児童生徒からの悩みや相談を広く受け止めることができるようにすること。

 

1 ア・イ  2 イ・オ  3 ア・エ  4 ウ・エ  5 ウ・オ

 

2.次の文は、文部科学省「教師が知っておきたい子どもの自殺予防(2009年3月)」の一部で,「自殺の心理」について述べられた部分である。空欄に当てはまる語句の組み合わせを選びなさい。

1)ひどい[ ア ]:「誰も自分のことを助けてくれるはずがない」「居場所がない」「皆に迷惑をかけるだけだ」としか思えない心理に陥っています。現実には多くの救いの手が差し伸べられているにもかかわらず、そのような考えにとらわれてしまうと、頑なに自分の殻に閉じこもってしまいます。

2)[ イ ]:「私なんかいない方がいい」「生きていても仕方がない」といった考えがぬぐいされなくなります。その典型的な例が、幼い頃から虐待を受けてきた子どもたちです。愛される存在としての自分を認められた経験がないため、生きている意味など何もないという感覚にとらわれてしまいます。

3) 強い怒り:自分の置かれているつらい状況をうまく受け入れることができず、やり場のない気持ちを他者への怒りとして表す場合も少なくありません。何らかのきっかけで、その怒りが自分自身に向けられたとき、自殺の危険は高まります。

4) 苦しみが永遠に続くという思いこみ:自分が今抱えている苦しみはどんなに努力しても解決せず、永遠に続くという思いこみにとらわれて絶望的な感情に陥ります。

5)[ ウ ]視野狭窄:自殺以外の解決方法が全く思い浮かばなくなる心理状態です。

 

1 ア:孤立感  イ:無価値感  ウ:心理的

2 ア:閉塞感  イ:無価値感  ウ:物理的

3 ア:孤独感  イ:自己否定  ウ:心理的

4 ア:孤立感  イ:自己否定  ウ:物理的

 

解答・解説

1.解答 2

[解説]ア:正しくは「児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす等の書き込みを発見することは,自殺を企図している児童生徒を発見する端緒の一つである。このため,都道府県教育委員会等が実施するネットパトロールについて,長期休業明けの前後において,平常時よりも実施頻度を上げるなどしてネットパトロールを集中的に実施すること。」である。ウ:正しくは「長期休業の終了前においては,当該児童生徒の心身の状況の変化の有無について注意し,児童生徒に自殺を企図する兆候がみられた場合には,特定の教職員で抱え込まず,保護者,医療機関等と連携しながら組織的に対応すること。」である。エ:正しくは「保護者に対して,長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りを行うよう促すこと。保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については,積極的に学校に相談するよう,学校の相談窓口を周知しておくこと。その際,「24時間子供SOSダイヤル」をはじめとする電話相談窓口も保護者に対して周知しておくこと。なお,これらの各家庭における保護者による見守りについては,長期休業の開始前又は長期休業期間中における保護者会等の機会や学校(学級)通信を通じて,保護者に促すことが考えられること。」である。

 

2.解答 1