【深い学び入門(3)】「主体的な学習」がなぜ必要か

 

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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「主体的・対話的で深い学び」について、ここまで「深い学び」とその背景にある学習観について説明してきました。今回は「主体的な学習」がなぜ必要かを考えてみましょう。

学習に主体的に取り組むことの必要性は、以前より言われてきていますが、新学習指導要領で改めてその必要性が求められている理由を考えてみたいと思います。

1つめは、第2回で説明した構成主義の学習観によるものです。一部の学習事項は教師の指導する内容を、そのまま受け入れて記憶することでは、長く記憶に残ったり、適切に活用できたりするわけではありません。それまでの自分の持っていた知識や考え方を、新しい考え方で修正したり入れ替えたりする必要があります。このような入れ替えや修正は、生徒自身が自分で点検したり、考えて行ったりする必要があります。

例えば、酸化と還元について、中学校では酸素原子を受け取ったか失ったかで考えますが、高校では電子の受け取りと放出で考え、さらには酸化数の増減でも考えることとなります。このように酸化や還元を理解する場合、新しい考え方で以前の考え方を修正していくことが必要になります。この修正は生徒自身が自分で意図的に、言い換えれば主体的に行う必要があります。

もう1つの理由は、新学習指導要領で登場した評価の観点「主体的に学習に取り組む態度」によります。しかし、この観点により主体的な学習が求められると考えるのでなく、この観点の意味する内容(専門的には構成概念と言います)を理解することが必要です。

この観点には、その意味としてメタ認知能力や粘り強く学習に取り組む態度が含まれています。前者のメタ認知能力とは、自分の学習の状況、例えば自分の学習がうまくいっているか、改善すべき点があるかを自分で判断し、必要ならば改善方法を考え実行していく能力です。メタ認知能力を構成するものとして、自分の学習について自分で判断する自己評価が含まれます。学習を向上させるための評価として注目されている形成的評価の研究結果によりますと、自己評価が重要だということが分かってきました。

なぜ自己評価が重要かといいますと、最初のうちは教師が生徒の学習の状況について評価して生徒に伝えることを必要としますが、生徒自身も自分の学習について自己評価できるようになると、学習の改善が一層進むことが分かってきたからです。

自己評価できるためには、生徒自身が学習で何が求められているか知ることを必要とします。さらにこの学習の目標と自分の現在の学習状況を比較して、現状を判断しなければなりません。生徒自身が学習の目標を理解し、自分で自分の学習状況を判断することは、学習に対する受け身の態度ではできません。積極的に学習に取り組む態度が、すなわち主体的な学習が必要です。新しい観点が「主体的に学習に取り組む態度」の育成を求めているのは、自己評価を中心としたメタ認知能力を育成するためです。


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