【深い学び入門(4)】「対話的な学習」はなぜ必要か

 

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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「主体的・対話的で深い学び」について、前回は「主体的な学習」がなぜ必要かを説明しました。今回は「対話的」に焦点を当て、「対話的な学習」がなぜ必要かを、2つの点から説明していきたいと思います。

1つ目として、対話の必要性を社会的構成主義の学習観から説明したいと思います。構成主義の学習観については、すでにこの連載で紹介しました。学習とは児童生徒が新しく学習したこととすでに学習したことを比較検討して、矛盾や問題があれば、これまでの知識などを修正したり組み替えたりすることを考える学習観を構成主義といいます。

この構成主義の学習観では、知識などを修正したり組み替えたりするのは、あくまで学習者個人の内部で行われる個人的な営みと考えます。これに対して、知識などの修正や組み替えを学習と考える点では同じですが、これは個人内部で生じるのではなく、他者との対話や相互交流により起こるとする考え方を社会的構成主義と言います。

構成主義の考え方はスイスのJ・ピアジェ(1896~1980)から始まっていますが、社会的構成主義は旧ソ連のL・S・ヴィゴツキー(1896~1934)が最初に提起したものです。ヴィゴツキーは「発達の最近接領域(ZPD)」を提唱したことで著名な心理学者です。「発達の最近接領域」とは、学習者が自分だけで課題を実行した場合と、該当の学習分野で習熟した者からの支援を受けた場合に到達できる水準の差異を示すものです。習熟した者が学習者に与える支援を「足場組」といいます。学習者は、受け取る支援の内容を少しずつ自分自身でもできるようになり、そのため支援は学習者が発達するにつれて減らされていきます。

ヴィゴツキーは、指導者の支援を受けるためには指導者とのコミュニケーション、言い換えれば対話が重要であるとしました。さらに現在の社会的構成主義では、指導者との対話だけでなく、仲間の学習者との対話により自分の考え方を修正したり発展させたりすることも必要であると考えています。社会的構成主義の学習観では、対話が学習の発達に重要な役割を果たすものとしているのです。

対話が求められる2つめは、形成的評価によるものです。評価の結果を学習の向上に用いる場合、このような評価を形成的評価といいます。

最近では形成的評価を「学習のための評価」ということもあります。形成的評価のためには、児童生徒の学習の状況を知ることが必要ですが、最も手っ取り早い方法は教師の質問です。ミニテストや宿題、課題などの出来具合をみて学習状況を把握することもできますが、臨機応変に用いることができる点で教師の質問は優れています。児童生徒の答えを聞いて学習状況を把握し、問題があれば改善方法を示したり、さらに質問して生徒に考えさせたりすることもあります。このような生徒との対話により、生徒の学習の向上を図ることとなります。

このように形成的評価のためにも、児童生徒と教師の対話が必要となるわけです。


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