【深い学び入門(6)】学習の自己コントロール

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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この連載の第3回「『主体的な学習』がなぜ必要か」で自己評価の重要性に言及しました。

「主体的な学習」それ自体重要な教育目標ですが、これはさらにより根本的な教育目標に通じるものです。それは「主体的な学習」が形成的評価における自己評価能力の育成を通じて、学校教育の最終的な目標の1つ、学習を自分でコントロールできるようになることに通じているからです。学習の自己コントロールができることは、生徒が独立した学習者になるために必要なことです。

ここまで形成的評価についても簡単に言及してきました。形成的評価について、主として教師の視点から述べました。教師の役割が重要であることは当然ですが、形成的評価においては生徒の役割も重要です。それは、教師から生徒に重点を移すことが、形成的評価を教師から改善の助言をするフィードバック重視から、生徒自身が自分の学習を自己コントロールすることへの重点の移行と考えることができるのです。

前に述べたように、学校教育の最終的な目標の1つは、生徒が独立した学習者になることですから、形成的評価を通じて生徒が自分の学習を自己コントロールできるようにすることは極めて重要です。そのための出発点は、形成的評価を通じて自己評価能力を育成することなのです。

オーストラリアのR・サドラーは形成的評価が機能するための3つの条件を示したことで有名です。その3つは次のことになります。

①学習の目標や、どのようなレベルの学習の成果が求められているかを生徒自身が知る必要がある。

②生徒は学習の目標やレベルと、自分の実際の学習状況がどの程度乖離(かいり)しているかを知る必要がある。

③生徒は学習の目標やレベルとの乖離を埋める方法を指導される必要がある。

①と②で生徒の役割が強調されていることに注意しましょう。また③の乖離を埋めるのは最終的には生徒自身なのです。つまり、形成的評価が機能するには、フィードバックを中心にした教師の指導が必要ですが、生徒自身も積極的に学習の改善に動く必要があることを意味するのです。

サドラーが形成的評価において生徒の役割を重視しているのは、教師が学習の改善に役立つ助言、つまりフィードバックをしても、生徒はそれを生かそうとしないため、改善が見られないという現実でした。この点を改善するためには、生徒自身の役割をもっと重視すべきことに気が付きました。つまり、生徒自身が学習の目標を自分自身の目標でもあると自覚し、その目標と自分の学習状況との乖離を認識して、それを埋める努力をしようとすることが重要であると考えました。

そこでまず必要なのは、生徒自身が学習の目標と自分の学習状況の乖離を自分で認識すること、すなわち自己評価が必要となるのです。この自己評価能力の育成は、学習の自己コントロール能力の育成につながるのです。


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