【深い学び入門(8)】教採試験で問われる…構成主義 

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸
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 漢字や国名の学習ならば、すでに学習した漢字や国名に、新しいものを付け加えていくことが、学習の進歩となります。このような学習では、すでに学習した内容と、新しく学習した内容に直接の関連はありません。古いものに新しいものを付け加えることを学習と考える学習観を、「ブロック積み学習観」といい、「浅い学び」につながります。

 一方で「深い学び」が求められるようになると、これとは異なる学習観に基づいて学習を進めていかなければなりません。これからの採用試験では、「深い学び」を根拠付ける学習観として、構成主義の学習観、ないし構成主義の学習理論についての質問に解答できることが必要です。問題としてはかなり難しい問題となり、これに解答できるようならば、高く評価されます。もちろん「構成主義」と用語を答えれば済むような問題であれば、難しいとはいえません。

 構成主義の基本的な説明は「学習とは生徒がすでに持っている知識と、新しく学習した知識を比較して、問題があれば既存の知識を修正したり、新しい知識と入れ替えたりして、自分の知識の構造を作り出していくことと考える学習観または学習理論のこと」となります。もともとJ・ピアジェの認識論の特徴を示すものでしたが、1980年代以降、基本的な説明で示したような考え方まで発展しました。

 同じ構成主義でも社会的構成主義という考え方もありますが、これについて説明するような問題は、難しすぎるので採用試験に出題されることはないでしょう。ただしこの提唱者の旧ソ連のL・S・ヴィゴツキー(1896―1934)については、出題される可能性があります。最も可能性のあるのが、彼が提唱したZPD(発達の最近接領域)の概念についての説明です。簡単な問題としては、ZPDまたはそれの日本語訳を答えさせる問題が考えられます。

 ZPDの説明は「生徒が自分だけで達成できる学習の水準と、大人や優れた仲間の援助を受ける場合に達成できる水準の差」を示す概念です。この場合に大人らが行う援助を足場組と言い、この援助を生徒は自分のものとしていくことで学習が進歩すると考えます。この足場組と言われる援助は、生徒が発達するにつれて減らされていきます。

 ここまでが採用試験の問題として考えられますが、構成主義や社会的構成主義、ヴィゴツキー、ZPDをばらばらに覚えたのでは、「浅い学び」になってしまいます。教員採用試験対策でも「深い学び」が必要です。

 構成主義では、学習の進歩は個人内部での発達と考えますが、社会的構成主義ではZPDから分かるとおり、学習は生徒自身だけでなく、他者との社会的な交流を必要としていることです。構成主義と社会的構成主義の関係を理解することは、構成主義の学習観に基づいた「深い学び」そのものと言えます。 


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