【実例で学ぶ論作文講座(3)】例文を批判的にチェックする

明海大学外国語学部教授/教職課程センター副センター長 大池公紀
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1.前回までの復習

 論作文は、論「策」文。教育を担っていける人材を発掘するためのものだということを踏まえ、前回は「三論構造(序論・本論・結論)」で書くこと、序論は「テーマ背景+課題解決視点」、本論は「論例策サク」で構成すること、論策文には「黄金比率」が存在することなどを解説しました。これらのポイントを押さえた上で、今回からは具体的な論策文の実例を見ていきます。

2.例文を批判的にチェック

 以下の文章は、以前指導をしたA君(関東圏の中学校で立派に勤務しています)のもの(ここでは「論策文」とは言っていません)です。テーマは「信頼される教師となるために何をするのか」(1000字程度)。人の作文を読むことはとても勉強になりますので、まずは一度読んでみてください。次に批判的に読み直し、この文章の課題を探してみてください。視点としては「構成」「段落・句読点」「文末」「書き手の視点」です。また、見ているだけではなく直接書き込みを入れてみてください。 

 テーマ「信頼される教師となるために何をするのか」

 ある高校で、簡易な計算を繰り返すことでも単位を認定したなど、学習指導要領から大きく逸脱した不適切な単位認定を行っていた事件や、保健体育の教師が30年以上にわたり教員資格を持たないまま授業をしていたことなど、保護者から大事な生徒たちを預かり指導していく学校・教師として信頼を欠くような信じられない出来事が記憶に新しいと思います。

 こうした一部の学校・教師に対する過激な報道も、学校・教師全体への不信感を人々に与える可能性もあります。そこで、まずは個々の教師、それから学校組織が生徒、保護者、地域の方々、そして同僚から信頼される教師として認めてもらえるように努め、学校はとんでもない所だという先入観を払拭(ふっしょく)していく必要があると考えます。

 まず、生徒からの信頼を築く必要があります。生徒の前に立ち、教える立場は生徒からの信頼なしに成り立たないと考えるからです。生徒に信頼される教師の条件として、私が大事にしたいのはカウンセリング姿勢です。これは子供の話に耳を傾ける傾聴、子供をありのままに受け入れる受容、子供の問題発見・解決能力への信頼、これら3つからなる生徒との関り方です。生徒の相談を受け止め、支援しながら、生徒自身の力で問題解決へと導く過程が「困ったらまた先生に相談しよう」という信頼を築くと考えます。そして、問題解決による、生徒一人一人の満足感・安定感がクラス、学級、学校全体、そして保護者・地域の信頼へとつながると考えます。

 生徒だけでなく、学校組織の同僚との信頼関係も、重要だと考えます。職場で多様な人々と協力するために必要な社会人基礎力にもチームで働く力が含まれており、また、多様な価値観・資質がある中で、一人の教師ができることには限界があると考えるからです。同僚に信頼される教師に、私が必要だと思うのはあいさつなどの礼儀と情報交換、それから、自他受容の姿勢です。いずれも同僚との積極的なコミュニケーションを基とし、「普段から頼り、頼られやすい環境」を築くことを目標としています。協力しなければならない問題が起きた時、いつも通りのチームワークで取り組むことが迅速かつ安定した問題解決につながると考えます。

 述べるより、実践することがはるかに難しいのは分かりますが、熱意と責任感をもって取り組んでいきます。そうした課題に取り組む教師の姿勢も、また、生徒や同僚からの信頼につながると考えるからです。(996字)

 いかがでしょうか。教員採用試験だと意識をしながらも、最初は多くの受験者がこのように書きます。これはいわゆる「あるある作文」であり、合格論策文にはまだほど遠いものがあります。

3.チェックリストNO.1で再度の見直し

 次の「チェックリストNO.1」を活用して、先ほどの文章をもう一度見直してみてください。自分であればどのように書くのか、そんなつもりで見直しをしてみましょう。

 

 チェックリストNO.1 

(1)まず、出題された主題・テーマに正体する(「何を求めているか」を的確に捉え応える)

(2)文章構造のパターン化を徹底する

(3)序論・本論・結論(決意)の三論構成で統一する

(4)各論の表現構造もパターン化(本論:論例策サク)する

(5)序論(テーマ)・本論(策)の出題背景考え、必ずその根拠を示す

(6)結論(決意)に都道府県の方々に「尽くす」姿勢を訴える

(7)読み手を意識した文を書く

(8)教育に関わっていく覚悟を訴える

 完成論策文は、そうすぐには書けません。誰でも同じです。次回以降、幾度かに分けてこのようなチェック項目を示しますので、それらを土台に少しずつ進んでいきましょう。大丈夫です。必ず合格論策文が書けるようになります。

 【コラム1 「、」は、一文に一カ所を目指すべし】

 どこに「、」を打つのか、これって悩みませんか?答えは「一文に多くて一度」。復文であれば2回まででしょうか。「えーっ、ショック!」という声が聞こえてきそうですが、このことはある世界的な作家を育てたフランス文学の先生が教えてくれました。人はどうしてもbreath(呼吸)のところで「、」を打ちがちです。また「from」「in」「at」のところにも入れてしまうのですが、英語では前置詞の前に「,(コロン)」を入れません。特別なレトリックを使わないのであれば、じっと我慢をして「一文に一カ所」を目指しましょう。


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