【神谷正孝の教育時事2022(3)】GIGAスクール構想・情報化 「実際の出題から考える」

kei塾主任講師 神谷 正孝

 皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。今回は、昨今の採用試験で実際に出題された論文や論述問題を題材に旬の話題である「GIGAスクール構想」について情報化と併せて取り上げたいと思います。

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 GIGAスクール構想では、1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することにより、「特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する」ことを目指しています(文科省リーフレット『GIGAスクール構想の実現へ』)。

 これまでの教育実践とICTのベストミックスを図ることで、児童生徒の学習活動の充実を図ったり、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善につなげたりすることが期待されています。

 採用試験においても、論文試験や面接試験などで問われています。2021年に実施された岩手県の採用試験では1次試験の論文試験で、GIGAスクール構想が問われています。内容は、別掲の通りですが、PISA2018の調査結果の読み取りをもとに論述させる形式でした。先に示したリーフレットにおいても参照されている、「学校外での平日のデジタル機器の利用状況」と「1週間のうち教室の授業でデジタル機器を利用する時間」についてのデータを関連付けて考察させるもので、20年実施の三重県の論述問題でも同系統の問題が出題されています。

 データの読み取り自体は、難しいものではありません。まずデータから「学校外での平日のデジタル機器の利用状況」から、学習面での利用頻度がOECD平均よりも低く、学習面以外の利用の頻度がOECD平均に比べて高いことを読み取ります。その上で、「教室の授業でデジタル機器を利用する時間が短く、OECD加盟国中最下位」であること、「利用しない生徒の割合は約80%に及び、OECD加盟国中で最も多い」ことに関連付けて、わが国の子供たちの実情として、「学校内外を問わずICT機器の学習面での利用が進んでいないこと」を考察できればOKです。

 岩手県の問題では、論じるに当たり、「個別学習」と「協働学習」の2つの学習場面を想定することが示されていますが、これはGIGAスクール構想について問われた時の答え方の大きな手掛かりです。協働学習は、これまでの実践でも多く取り入れられてきた形態であり、ICTを活用することで、どのように学びが変わり、どのような効果が期待できるかなどは、問題意識として持っておきたいところです。友達の考えが即時共有できること、友達と双方向のやりとりができることにより学びが深まることが期待できます。

 教師が全ての子供の意見や考えを瞬時に把握できることにより、一斉授業の中に双方向性を入れることもできそうです。また、個別学習については、「学習の個別化」「学びの個性化」から成る「個別最適な学び」にもつながります。各自の学習履歴を管理できることや興味関心、理解度の把握により、それぞれのニーズに応じた学習が可能になります。このようなことを押さえた上で、具体的に回答できるようにしておきましょう。

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 なお、この「個別最適な学び」と「協働的な学び」は、令和の日本型学校教育として重要なキーワードとなります。今後の対策の中でも取り上げていきたいと思います。

 ※論文の出題形式が異なる自治体や論文が出題されない自治体でも、例題の解説を参考に、問題意識を深めるようにしましょう。

 ※図表中の画像および問題中の画像は、ここから引用している。

 

1.次に挙げるのは「学校の情報化の推進に関する法律」の一部である。空欄に当てはまる語句を選びなさい。

第3条 学校教育の情報化の推進は、情報通信技術の特性を生かして、個々の児童生徒の能力、[  1  ]等に応じた教育、[  2  ]のある教育(児童生徒の主体的な学習を促す教育をいう。)等が学校の教員による適切な指導を通じて行われることにより、各教科等の指導等において、情報及び情報手段を主体的に選択し、及びこれを[  3  ]する能力の体系的な育成その他の知識及び技能の習得等(心身の発達に応じて、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを[  3  ]して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うことをいう。)が効果的に図られるよう行われなければならない。

ア 双方向性  イ 特色  ウ 創造性  エ 適性  オ 障害  カ 特性

キ 利用    ク 活用  ケ 利活用

解答 1:カ  2:ア  3:ク

 

2.次の図1、図2は、「OECD 生徒の学習到達度調査 2018 年調査(PISA2018)のポイント」(令和元年 12 月 文部科学省・国立教育政策研究所)に示されたものである。(※調査対象は義務教育終了段階の 15 歳児)日本におけるデジタル機器の利用状況について、図1、図2それぞれから読み取れることを具体的に述べなさい。また、それらを踏まえて、今後あなたがデジタル機器を活用して取り組みたい教育内容について、300字以内でまとめなさい。(令和2年実施・三重県)

 

解答例(三重県教委の解答例)

デジタル機器の利用について、日本はOECD平均に比べ、図1からは、学校外でゲームやチャットなどの日常生活での利用頻度が高い一方で、学習のための利用頻度が低く、図2からは、授業等での利用時間が短いことを読み取ることができる。私は、授業において、インターネットを用いた情報収集や、成果発表時に映像や音声、動画を用いるなど、デジタル機器を積極的に利用することにより、主体的・対話的で深い学びができる授業改善につなげられるよう活用していきたい。また、Society5.0に向け、さらにデジタル機器を自由に使いこなすことが必要なことからも、生徒が目的に応じたデジタル機器の利用ができる技能を高めていきたい。(298字)

解説

字数の制約があるため,具体的に記述する際に注意が必要である。詳しく述べすぎて内容が部分的にならないようにしよう。データの読解については,本編の解説で触れた通り,学習面での使用頻度が低いことや学校の授業におけるICT活用が進んでいないことを指摘できればよい。その上で,取り組みたい教育内容につなげるわけだが,データ読解から得られた問題意識をもとに,授業内における活用方策や平日の学校外での学習面での利用を促す働きかけなどにつなげるとよい。字数に余裕のある論文の場合,まず,序論でデータの考察結果を示す。次に本論において,授業内における活用方策とその期待される効果,授業内での活用と学校外での利用促進,個別最適な学びへの活用と協働的な学びでの活用,など2つ程度の視点から具体的な実践をまとめる。結論では,ICT活用により育てたい姿などに結び付けて締めくくるとよい。

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