【実例で学ぶ論作文講座(4)】例文を振り返って改善する

明海大学外国語学部教授/教職課程センター副センター長 大池公紀
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 まず、連載第3回に提示したチェックリストNO.1を活用してA君の例文を振り返ってみてください。今回はそれを基にお話をします。

1.徹底した論策文の構造化

(1)課題出題の背景を考える

 出題されたテーマには必ず理由があります。例えば、「信頼される教師とは」というテーマであれば、「信頼されてない教師の現状」がその後ろに隠れています。各都道府県で出題される題目には、そのようなテーマを出さざるを得ない理由があるのです。そのことをしっかりと受け止めてテーマに正対する必要があります。A君の文例は、その部分が「甘い!」「見えない!」と言わざるを得ません。

(2)論策文全体を構造化する

 教職採用試験の論策文では、文章の構造化、パターン化を徹底します。背景には、各都道府県の管理職任用試験が、同じ形式の論文を提出させられることがあります。そのため、採点者もその記述パターンで論策文を見がちです。そういうわけで、「序論・本論・結論」の三論構成が必須で、この鉄則を外すわけにはいきません。A君の文章は、その構造化ができておらず、まずはその部分が最初に修正すべき点と言えます。

 序論では、テーマの背景を述べ、その課題解決へ向けての具体的方策を提示します。次に本論では表題として方策を短文で示した後、解決に向けた具体的事例とそれをどのように実現するか示します。可能であれば、その「策」によって児童生徒がどのように変容していくか、教育的効果を述べます。そこに「組織」の視点が加われば、さらにポイントが高くなります。

2.記述上の配慮事項

 「です」「ます」などの敬体よりは、「だ」「である」などの常体の文章の方がよいでしょう。また「…と考える」「…と思う」といった表現は避けます(「ちょこっとコラム2」を参照)。採用試験論策文は、文章がやさしくなってしまうような表現はあえてしません。クールに硬派を狙います。

 記述する上で配慮してもらいたいのは、これを読む「見えない相手」、すなわち教育委員会という仮想の相手を意識して文章を書くということです。そして最後に、地域の児童生徒に関わっていく教育者としての覚悟をどこかに落とし込みます。

3.A君論策文・第2弾

 さて、上述したような指導を受けてA君はどのように書き換えたでしょうか。以下を読んでみてください。

 「教育は信頼なり」という言葉がある。生徒や保護者、地域とのよりよい信頼関係を築くことが教育を支える最も大切な事項である。 しかし文部科学省の発表(R2.12)によれば令和元年に懲戒処分を受けた教員は、体罰550人、わいせつ行為273人と教員の不祥事が後を絶たないのが現状である。文部科学省も「国民が求める学校教育を実現するためには、子どもたちや保護者はもとより、広く社会から尊敬され、信頼される質の高い教師を養成・確保することが不可欠である」と述べている。私は、 信頼される教員になるために以下の2点、自らの授業改善とチームの一員としての報連相の徹底に全力を傾ける。

1.アクティブ・ラーニング(以下AL)の視点から不断の授業改善を図る

 一方通行型の指導方法からの脱却を図るALを導入するなど、教師は社会状況の変化に対応して授業を工夫・改善・変革していくことが求められている。学習指導要領でも言語活動を充実させ、生徒の思考力・判断力・表現力を育むことが重要だとされる。そこで私は、授業を生徒中心のコミュニケーションの場に転換する。生徒には、教科書に載っている内容を読んで考えて自分の意見を言わせる。互いに質問し合い、答えさせる。自分たちで調べて発表させる。このように授業を話したり書いたりする練習の場として双方向の授業を実現する。また、私は公開授業や研究会にも積極的に参加し、先輩の先生方の授業を見たり自分の授業を見てもらったりすることで、授業の質の向上に励む。

2.ホウレンソウ(報告・連絡・相談)を徹底し情報の共有を図る

 学級内で問題が発生すると、「迷惑を掛けたくない」「指導力不足だと思われたくない」などの不安から、教員が一人で抱え込んでしまうケースが多い。その結果、事態が深刻化して解決が困難になり、児童生徒にも悪影響が及ぶ。そこで私は朝夕の打ち合わせだけではなく、日頃から周囲の教師とコミュニケーションを密にし、気になることがあれば些細(ささい)なことでも必ず報告・連絡・相談する。課題が大きいと感じた時は直ちに管理職に相談し、指示を仰ぐ。養護教諭、SC、SSWなどとも緊密に連携を図り、情報を隠さずに共有していく。私は、ホウレンソウを欠かさず、問題が起こった時にチームとして組織的に対応できる教師となることを誓う。

 以上、絶え間なき授業の改善とホウレンソウによる教師間の連携を通じて、生徒・保護者・地域からの信頼を勝ち取っていく。○○県の大切な児童生徒を預かる教育者としての責任の重さを自覚し、「信頼される教師」を目指して努力し続ける決意である。

 いかがでしたでしょうか。ちょっとびっくりされたと思います。筆者による若干の加筆はありますが、A君は幾度かの繰り返しを経てしっかり課題に正対して記述できるようになりました。

 【ちょこっとコラム2 「…と思う」「…と考える」は使わない】

 初期の段階では誰もが使いたがる「…と思う」「…と考える」という言葉ですが、できる限り避けます。理由は、この文章を採点する現場の管理職からすると「…と思う」「…と考える」は「考えているだけで肝心なところで行動に移さない」という思いがしてしまうからです。「だ」「である」でしっかりと強く言い切りましょう。


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