【神谷正孝の教育時事2022(4)】「障害のある子供の教育支援の手引」のポイント

kei塾主任講師 神谷 正孝

 あけましておめでとうございます。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。本年もよろしくお願いします。

 さて、今回のテーマは、「特別支援教育」です。採用試験対策として特に重要な項目ですので、これまでも取り上げてきましたが、最新状況をチェックしておきます。

◇ ◇ ◇

 2021年6月に「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(以下「手引」)がまとめられました。これは13年の「教育支援資料」の改訂版という位置付けで、インクルーシブ教育システムも踏まえながら、特別な支援を必要とする児童生徒への対応についてまとめられています。

 手引の第1編においては「障害のある子供の教育支援の基本的な考え方」として、特別支援教育の最新動向とともに、基本的な考え方としての一貫した教育支援や今日的な障害の捉えと対応についてまとめられています。以下、ポイントを整理しておきます。

 まず、「特別支援教育」の理念を確認しましょう。従来の「特別な場できめ細かな指導を行う」特殊教育から、「教育的ニーズに応じた適切な指導、必要な支援を行う」特別支援教育へ転換されたのが07年です。これにより従来まで特殊教育の対象とされてこなかった知的障害を伴わない発達障害も対象に加えられ、特別な支援を必要とする児童生徒が在籍する全ての学校で実施されるものとされました。

 さらに、「障害者の権利に関する条約」に基づくインクルーシブ教育システムの構築の流れの中で、就学先の学校の決定方法も改められ、学校教育法施行令22の3に規定される「就学基準」の性格も「特別支援学校入学可能な障害の程度を示すもの」という位置付けに見直されました。

 また、学習指導要領改訂(17・18年)の際に、特別支援学級在籍者や通級指導を受けている者へ「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の作成を位置付けるなど(その他の特別な支援を必要とする児童生徒に対しては、2つの計画の策定の努力義務を規定)、早期から一貫した教育支援体制をとることが重要視されています。手引では、これらにより「就学支援中心の『点』としての教育支援だけでなく、早期からの教育相談・支援、就学相談・支援、学校や学びの場の変更を含む就学後の継続的な支援に至る『線』としての教育支援へ、そして、家庭や関係機関と連携した『面』としての教育支援」を目指すとしています。

 障害の捉え方では、疾病などに基づく側面と社会的な要因による側面を考慮したICF(国際生活機能分類)が重要です。WHOがICFを採択した後、わが国においても各種政策の中で、障害者が日常・社会生活で受ける制限とは、心身の機能の障害のみならず社会におけるさまざまな障壁と相対することによって生ずるものという、「社会モデル」の考え方が取り入れられています。

 この他、重要なキーワードでもある「基礎的環境整備」「合理的配慮」という概念は「障害による差別の解消に関する法律(障害者差別解消法)」条文と関連付けて理解しておきましょう。

 障害のある子供への対応にあたっては、子供の自立と社会参加を見据え、その時点で必要な教育を提供するという考え方が大切です。教育的ニーズに応える多様な学びの場を整備するとともに、ニーズの変化に応じて学びの場を変えられるようにすることが基本です。

 手引の第1編の内容を押さえた上で、第3編「障害の状態等に応じた教育的対応」について確認しておきましょう。

 

1.次に挙げるのは文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月)の一部である。空欄に当てはまる語句を選びなさい。

学校教育は,障害のある子供の自立と社会参加を目指した取組を含め,「( 1 )」の形成に向けて,重要な役割を果たすことが求められている。そのためにも「( 1 )」の形成に向けた( 2 )教育システム構築のための( 3 )の推進が必要とされている。

( 2 )教育システムの構築のためには,障害のある子供と障害のない子供が,可能な限り同じ場で共に学ぶことを目指すべきであり,その際には,それぞれの子供が,授業内容を理解し,学習活動に参加している実感・達成感をもちながら,充実した時間を過ごしつつ,( 4 )を身に付けていけるかどうかという最も本質的な視点に立つことが重要である。

そのための環境整備として,子供一人一人の自立と社会参加を見据えて,その時点での( 5 )に最も的確に応える指導を提供できる,多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である。このため,小中学校等における通常の学級,通級による指導,特別支援学級や,特別支援学校といった,連続性のある「多様な( 6 )」を用意していくことが必要である。

( 5 )とは,子供一人一人の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等(以下「障害の状態等」という。)を把握して,具体的にどのような特別な指導内容や教育上の( 7 )を含む支援の内容が必要とされるかということを検討することで整理されるものである。そして,こうして把握・整理した,子供一人一人の障害の状態等や( 5 ),本人及び保護者の意見,教育学,医学,心理学等専門的見地からの意見,学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から,就学先の学校や( 6 )を判断することが必要である。

語群

ア 施設・設備  イ 学びの場    ウ 教育的ニーズ  エ アセスメント

オ 共生社会   カ 全員参加型社会 キ 交流      ク インクルーシブ

ケ 生きる力   コ 障害による困難を克服する力

サ 特別支援教育  シ 交流および共同学習  ス:基礎的環境整備  セ:合理的配慮

解答 1:オ 2:ク 3:オ 4:ケ 5:ウ 6:イ 7:セ

 

2.個別の教育支援計画の作成・活用等により,期待される効果について、「障害のある子供教育支援の手引」に示された内容として適切でないものを選びなさい。

1.教育的ニーズの整理

2.支援の目標や教育上の合理的配慮を含む必要な支援の内容の検討

3.関係者間の情報共有の促進と共通認識の醸成

4.家庭や医療,福祉,保健,労働等の関係機関との連携強化

5.教育的ニーズと必要な支援の内容の定期的な見直し等による継続的な支援

6.児童生徒等一人一人の指導目標、指導内容及び指導方法を明確にしたきめ細やかな指導

解答6 解説:6は個別の指導計画の話である。1~5については「障害のある子供の教育支援の手引」の第1編で示すとともに、その参考資料に掲載された、文部科学省「個別の教育支援計画の参考様式について(事務連絡)令和3年6月30日」でも、以下のように示されている。

○ 平成 15 年度から実施された障害者基本計画においては、教育、医療、福祉、労働等の関係機関が連携・協力を図り、障害のある児童生徒等の生涯にわたる継続的な支援体制を整え、それぞれの年代における児童生徒等の望ましい成長を促すため、個別の支援計画を作成することが示された。この個別の支援計画のうち、児童生徒等に対して、校長が中心となって児童生徒の在学時に作成するものを、個別の教育支援計画という。

○ 個別の教育支援計画の作成を通して、児童生徒等に対する支援の目標を長期的な視点から設定することは、学校が教育課程の編成の基本的な方針を明らかにする際、全教職員が共通理解をすべき大切な情報となる。また、在籍校において提供される教育支援の内容については、教科等横断的な視点から個々の児童生徒等の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を検討する際の情報として個別の指導計画に生かしていくことが重要である。

○ 個別の教育支援計画の活用に当たっては、例えば、就学前に作成される個別の支援計画を引き継ぎ、在学中の教育支援の目的や内容を設定したり、在学中の教育支援の目的や内容を進学先に伝えたりするなど、就学前から就学時、そして進学先まで、切れ目ない教育支援に生かすことが大切である。その際、個別の教育支援計画には、多くの関係者が関与することから、保護者の同意を事前に得るなど個人情報の適切な取扱いに十分留意することが必要である。

関連トピックス

#神谷正孝の5分でわかる教育時事2020~2021 #神谷正孝の5分でわかる教育時事2019~2020 #神谷正孝の5分でわかる教育時事2018~2019 #押さえたい教育時事

あなたへのお薦め

 

特集