【教員志望者のためのSDGs入門講座(1)】SDGsとはいったい何なのか

大阪府立大学教授 伊井直比呂
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 いま、教育界でも大きな課題となっているSDGs。教採試験の場でも問われるようになってきている。そこで、長くESDに取り組み、SDGsを目指している大阪府立大学の伊井直比呂教授に教採受験者としてどのようにSDGsを捉えたらよいのか、基本的な知識から、論作文や面接などでの対応まで、解説してもらうこととなった。

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 いま、SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)がメディアや企業活動を通じて頻繁に聞かれるようになりました。既にテレビコマーシャルなどを通じてご存知の方も多いのではないかと思います。きれいな色の17のアイコンがとても目を惹きます。ところが、このアイコンを目にしたりSDGsの名称を知っていたりする人でも、実際のところはその背景や意味をあまり詳しくは知らない、という方が多いのではないでしょうか。

 新学習指導要領に「持続可能な開発のための教育(ESD)」や「持続可能な社会」など、SDGsと似たような表記が記載されていますので、何となく「関係があるのかな?」と不安にもなったりします。そこで、本連載は持続可能性概念やSDGsとは一体何なのか、またこれらは教育とどのように関係していて、なぜこれらが教育の中に取り入れられているのか、などについて記していきたいと思います。特に本連載は教員を志している方を対象としていますが、教員志望者に限らず、企業や公務員志望の方にとっても、今後ますますスタンダードとなる概念だと言えますので、これを機会に関心を深めてみてはどうでしょうか。

 早速ですが、私の約半世紀ほど昔の小学生時代の思い出を書きます。当時、私は「石油はあと30年ほどで枯渇する」というようなことを先生から教わりました。小学生なりに私は「(自分が)大人になった時、石油がなかったら世の中どうなるのだろう?」と不安になったことを覚えています。

 同時に、当時はさまざまな公害問題が深刻さを増していた時だっただけに、例えば「このまま空気が汚れていったらみんな新鮮な空気を購入しなければならないのではないだろうか」などと子供ながらに真剣に心配していました。現にその後中学生のころには光化学スモッグの影響で私を含めて多くの人が目や気管支を痛めた時代があったのです。しかも「公害」はかつての4大公害裁判でも知られる通り、ある地域に集中して発生している傾向がありました。

 そして、昔のわずかこれだけの姿を記すだけでも、その中から多くの課題や人々が抱えていた問題などに気付くことができます。例えば、環境問題(大気・海洋・河川・陸地などの汚染)、多様な企業の責任、健康・安全問題、健康被害の苦しみ、福祉問題、生活環境、エネルギー問題、経済問題、人間以外の生命(生きもの)、そしてこれらを知らずに生まれてくる将来世代の人たちのことなどです。

 実は、持続可能性の問題はこのような時代を通して世界が共通して経験してきた崩れゆく自然環境や軽んじられる人々の暮らしと人間の尊厳、あるいは失われゆく社会への信頼性の現実の中で、少しずつそれらを「逆転」させるために形成されてきたものです。ひと言でいうならば、社会の基底にある自由や平等、人権などのような社会を支える価値と同様、現在と未来社会とを支えるための新たな価値として生み出されたものと言えます。

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