【実例で学ぶ論作文講座(6)】テーマ「主体的・対話的で深い学び」②

明海大学外国語学部教授/教職課程センター副センター長 大池公紀
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1.論作文の“テッパン”法則

 これまでのおさらいとなりますが、論作文の“テッパン”とされる法則は次の通りです。

 Ⅰ.論作文は、「論・策・文」であることを意識する

 Ⅱ.三論構造(序論・本論・結論)で展開する

 Ⅲ.何よりも書き手の姿勢が伝わる「強い文章」を書く

 この先も同じことを述べることになりますが、この3つの柱を意識したものが試験本番で書ければ、合格論文に近づいていきます。

2.第5回B君論作文の課題点

 今回は、前回(第5回)示したB君の論作文について、課題点を解説していきます。

 ①文体の統一は、中学生でも指導を受けます。常体(だ・である体)で攻めます。

 ②教師という立場、教育者という立場が極めて薄い文章でした。これでは合格までたどり着けません。関与者である立ち位置で記述をします。

 ③論作文は「強い文体」で記述することが大切です。例えば、最初の※□入るには※□を入れ、中に 私は、を配しますを入れ、書き手の姿勢を何気なくアピールします。また、「~と思う」「~と考える」の表現はNGです。

 ④このテーマに限らず、どこかに「協働」「協同」などの言葉を必ず入れましょう。読み手が、書き手を肯定的な気持ちで受け止めてくれるような文章を意識して書いてください。

 ⑤実践例が足りていません。机上の空論のような文体になっています。後ほど示す改定版では、教育実習や参加したボランティアの話が有用な体験として記述され、そこから変容した自己をアピールしています。現職の受験者は、日常的な場面から「書けるエピソード」を残しましょう。大学生は、教育実習で何を拾ってくるかが大事で、その点を意識してください。実習が試験の後であれば、どのようなものでも構わないので、ボランティアを体験してください。そこにお宝が埋もれています。

 ⑥最後に、主述のねじれはご法度です。日々文章を書く練習あるのみ。皆さんの論作文を採点する人(主に管理職)は、違和感のある文章にはとても敏感です。肝に銘じておいてください。

3.B君論作文・改定版

 では、以下に第5回で示したB君の論作文の改訂版を示します。冒頭部は、コロナ禍を踏まえて筆者が記述を変更していますが、多くはB君の手によって修正・改善されたものです。

 コロナ禍を経て世界は大きく変貌し、学習や働き方だけではなく全ての場面でICTを通して世界とやりとりを展開し、いかに持てる知識を活用できるかが求められる時代が本格的に始まった。教育活動では、これからの時代で生徒が活躍できるよう、日々の授業から他者の価値観を認め協働しながらも自己の主張を適切に伝える力の育成が求められている。私は普段の授業内でアクティブラーニング(AL)等を取り入れながら生徒が自身の気付きを整理し、様々な方面に発信することができる授業を改善と修正を加えながら実践的に実現していく。

1.思考力・判断力・表現力を育成できる授業展開を徹底する

 私は主体的で対話的な授業を行うためにALを積極的に取り入れ、自ら考えた意見を共有し、自身の思考力や表現力の育成を図った授業を行う。例えば自分の考えをペアで共有し、さらにグループ・クラス全体で共有させて生徒が自分の考えを表出・共有・相互評価できる機会をつくる。このことにより生徒が他者の意見に傾聴し、相互の豊かで多様な価値観を通して思考力の育成を図る。私が教育実習で受け持ったクラスでは、自分の考えを自信を持って意見が言える生徒が少なかった。そこで私はペアやグループでの活動を積極的に取り入れ、発表する機会を多く与えることで間違いを恐れず表現することができる授業を展開した。この経験から教員として生徒たちのさまざまな思考を引き出し、気付きを大切にする環境づくりを心掛け、生徒が自信をもって考えを発信できる授業づくりを徹底する。

2.既存の知識を活用し考えを深化できる授業を展開する

 私は東京都教育委員会施策のボランティアで、英語に苦手意識を持った高校生に英語の授業支援を行ってきた。生徒からは、構文や文法を理解しても実際にどのように活用してよいか分からないという声が多かった。そのため私は、英語の知識をどのような場面や状況で使用するのかをロールプレイを通して実際に活用できるようにさせた。この経験を通して私は教員として、実際の場面や状況を想定した簡易な寸劇型の指導を反復的かつ継続的に導入する重要性を学修した。私は簡易な事例から英語を学ぶ楽しさやわかる喜びなどの達成感を味わうことができるように教材研究に励み、学習定着の深化につなげていく。

 私は、上記二策を職員間で共有して学内で協働できる可能性を探り、より良いものを生徒に提供できるよう全力を尽くし、東京都の教育公務員として都民に奉ずる覚悟である。

 いかがでしたでしょうか。ある程度は、合格論作文の域まで達していることがお分かりいただけると思います。ぜひ、第5回と比較をしながら読んでみてください。

 【ちょこっとコラム4 ICT機器を駆使して活用できる資料を貯めていくべし】

 教職に就いた後、学校でICTを活用して指導をするためにも、駆使できるスキルを磨きましょう。具体的に、パソコンやタブレット端末、スマホのメモアプリ(「Memo」「OneNote」「EverNote」「GoodNote」など)を活用して、教育資料をファイル化します。ペンを使って記入できるアプリもあります。前回のコラム3で紹介したPISAやTIMSS、学習指導要領などの教育資料も、手元の端末に入れて持ち運びましょう。自分の書いた論作文やこれをまねたいという論作文を端末に入れ、ペンでポイントを書き入れるなどの方法も、効率的に対策ができてお勧めです。


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