【実例で学ぶ論作文講座(7)】出題パターンの把握と本番当日までの計画

明海大学外国語学部教授/教職課程センター副センター長 大池公紀
この連載の一覧

1.ここまでの中間まとめとして

 第7回の前半では昨年度の出題パターンから論“策”文の「内容」と「形式」の傾向についてお話をします。また、後半では本記事が公開される3月から採用試験当日までの計画をどうするかについて、具体的なアドバイスをさせていただきます。

 連載の冒頭で伝えるべき事項とお思いの方もいるかもしれませんが、第7回・8回の2回は、これまでお伝えした「序論+本論(論・例・策1・策2)+結論」の三層構造、「黄金比」(連載1・2回)の法則、具体的な例文(3~6回)などを踏まえた中間まとめとご理解の上お読みください。

2.受験自治体の出題パターンを把握する

 以下に2つの自治体の出題例を示します。

 神奈川県では、生徒や学校等の実態に応じ、教材・教具や学習ツールの一つとしてICTを積極的に活用し、必要な資質・能力を育成する主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に取り組んでいます。このことを踏まえ、あなたは、ICT活用の利点を生かした授業実践にどのように取り組みますか。ICTを活用する意義やねらいとともに、あなたの考えを600字以上825字以下で具体的に述べなさい。(2021年・神奈川県)

 本県の目指す教師像の一つに、「豊かな人間性や社会性をもち、多様な他者と関わることができる教員」があります。この教師像に向かって、あなたはどのように取り組んでいくか、自身がこれまで培ってきたことに触れながら具体的に述べなさい。(2020年・青森県)

 一般的に、論作文試験の出題内容には次の3パターンがあります。

1 学校の先生はこうあるべき!「教師論」型

2 学習指導・生徒指導等の「指導論」型

3 教育課題や教育観を述べる「教育論」型

 上記の神奈川県は ICTというキーワードを受けて書く「教育論」型、青森県は受験者の姿勢や決意を把握しようとする「教師論」型と言えます。

 また、設問形式にも3パターンがあります。

1 「~について具体的に述べなさい」という「述べなさい」型

2 具体的指導場面を踏まえ、対応と指導上の配慮事項等について述べる「事例」型

3 グラフや文章から課題を見つけ出して解決策を問う「読解・データ分析」型

 上記の神奈川と青森県は「述べなさい」型です。全国で最も受験者が多い東京都は、例年「事例」型で出題しています。和歌山県や岐阜県は、幾つかのデータを提示してそこから読み取れる課題を述べさせているので「読解・データ分析」型です。

 論作文試験では、これら6つのパターンを組み合わせながら、教育の未来を託せる人物であるかについて、適性・人間性を見抜こうとしています。それぞれの自治体に出題パターンがあるため、その傾向に踏まえて対策をすることが重要です。

3.本番当日までの計画を立てる

 さて、3月中にやるべき大切なことが一つあります。それは論作文試験が開始される瞬間までの時間をどのように過ごすか、綿密な計画を立てることです。
 本番までにやるべきことは以下の3つです。

1 自力による完璧(!)論作文を3つ作成

2 模範論作文をアレンジして2つ作成

3 1週間前から当日会場まで5論作文を丸暗記

 論作文は、対応力が試される「暗記」科目です。「そんなことはない。積み重ねの科目だ」とおっしゃる方もいますが、実は最後の最後に必要なのは「暗記」なのです。そこまでどのようにたどり着くのかをご説明します。

 まず、当日までに論作文を5つ準備します。そのうち3つは自力で書いた「完璧論作文」、残りの2つは対策を通じて発見した「模範論作文」です。「これはすごい」と憧れるような論作文を2つ、当日までに探し出してください。ただし、これらは他人が書いたものですから、自分のものになっていないような感覚が残ります。そこで、自分なりの教育的提言などのアレンジを加え、自作の論作文に仕立て上げます。

 前期に教育実習がある人は、その前までに3つの「完璧“手前”論作文」を完成させておきましょう。そして、教育実習が終わった後に、実習を通じて経験したことを基に、自分なりの教育的提言を加えます。

 これら5つの論作文を覚えておけば、序論が5パターン、本論が10パターン、結論が5パターン、手元にあることになります。本番前の1週間は、これらのパターンを全て頭にたたき込みます。そして、当日は出題内容に合わせて、各パターンの中から選択して書きつづっていきます。

【ちょこっとコラム5 使役表現「~させる」を入れる】

 論作文の肝は、自分自身の「できる人物像」を訴えることです。その文章を読む相手のことを常に意識してください。具体的に、教室で指導する者としての表現を所々に入れることが大切です。望ましい教育者像を映し出す工夫の一つは、「(私は児童生徒に)~させる」という使役表現を入れ込むことです。本論の具体策の所にこれを挿入すると、全体が引き締まります。多く入れる必要はありません。具体策に一箇所、ズバッと入れ込むと効果絶大です。


この連載の一覧

あなたへのお薦め

 

特集