【教員志望者のためのSDGs入門講座(5)】2つの大きな流れを見る

大阪府立大学教授 伊井直比呂
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 地球環境サミットの8年後、西暦2000年を迎えた世界が共有すべき未来への希望とは何か。私たちの生活レベルでこれらの希望を共有することができるようになったのが21世紀かもしれません。

 これには大きな2つの流れがあります。1つは00年9月に開催された国連ミレニアム・サミットで採択された「国連ミレニアム宣言」、並びに同宣言と90年代の主要な国際開発目標(アジェンダ21など)を統合してまとめた「ミレニアム開発目標」(MDGs)があります。2つ目は02年に南アフリカ共和国で開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグ・サミット)で採択され、同年の国連総会において決定された「国連持続可能な開発のための教育の10年」(UNDESD)です。

 ミレニアム宣言は、21世紀の国際社会の方向性として「開発および貧困撲滅」「平和と安全保障・軍縮」「自由・人権・民主主義」「環境保護」「弱者の保護」を示しました。そして、それを基に示されたMDGsは、目標1「極度の貧困と飢餓の撲滅」、目標2「初等教育の完全普及」、目標3「ジェンダーの平等」、目標4「乳幼児死亡率削減」、目標5「妊産婦の健康改善」、目標6「HIVほか疾病の防止」、目標7「環境の持続可能性確保」、目標8「グローバル・パートナーシップ」を掲げて、これらを15年までに達成することを目指しました。

 重要なことは、各目標が人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を取り除く「人間の安全保障」の概念と結び付けて捉えられたことです(05年世界サミット)。つまり、例えば飢餓や差別、環境破壊などの恐怖を取り除くことで人間の潜在力や自由を発展させることを保障します。

 15年の国連の成果報告書によると、開発途上国において1日1・25ドル未満で暮らす極度の貧困の人の割合が47%(90年)から14%に。初等教育就学率は83%(00年)から91%になった。他にも教育における男女格差がほぼ解消し、5歳未満児の死亡率は1000人あたり90人から43人に減少するなどの成果が報告されています。

 ただ、その一方ではMDGsの達成状況を国・地域・性別・年齢・経済状況などから詳しく見ますと、今なお国内外を問わず「取り残されている人」の存在が明らかとなりました。すなわち、15年からのSDGsはMDGsの未達成部分を引き継いでいるわけです。

 2つ目の「持続可能な開発のための教育」(ESD)は、UNESCOがその推進機関として指定され、05~14年までの間、世界で広がりました。特徴は、これまでの「持続可能な開発」への取り組みが、国単位や特定組織の活動・運動によって担われていたことが、私たち一人一人の生活や当事者の問題として扱われるべきものとして開始されたことです。

 また、連載(例えば第3回)からも分かる通り、生活・環境・開発・人口および資源などの各問題が相互に複雑な因果関係にあることを踏まえ、既存の教科、平和教育、人権教育、環境教育、開発教育など個別ではなく横断的かつ多角的視点で捉えられる性質がありました。何より大きな特徴は、そもそも学習者が育成される地位にあるのではなく、「人権」に基づく学習主体者と位置付けられている点です。

 次回はSDGsとESDの関係についてです。

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