【実例で学ぶ論作文講座(9)】東京都の過去問を使った演習①

明海大学外国語学部教授/教職課程センター副センター長 大池公紀
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 以下は、2017年の東京都の採用試験で出題された論作文問題(中高一般A問題)です。

 年度始めの職員会議で、教務主任から「昨年度、学校で独自に実施した生徒対象の学習に関する調査の『授業中に自分の考えを表現することができた』の項目で、『できなかった』の回答が多くありました。また、各教科の教科主任からも、自分の考えはもっているものの、それを的確に表現できない生徒が多いという報告を受けています。そこで今年度、各教科の指導において、『自分の考えを的確に表現する力を育む』を重点事項にしたいと思います」と報告があった。

 職員会議終了後、指導教員からあなたに、「先ほどの重点事項に基づいて、どのように学習指導に取り組んでいくか、具体的に考える必要がありますね」と話があった。

問題

 指導教員の発言を受けて、あなたならどのように学習指導に取り組んでいくか、志望する校種と教科等に即して、具体的な方策を2つ挙げ、それぞれ10行(350字)程度で述べなさい。また、その方策を考える上での問題意識やまとめなどを含めて、全体で30行(1050字)以内で述べなさい。ただし、 26行(910字)を超えること。

東京都教員採用試験のパターンを読み解く

 東京都の出題形式は、ここ何年も変わっていません。A問題はカリキュラム・学習指導、B問題は生徒指導などの学習以外の指導についてです。書き手の得意分野があると思いますから、A問題とB問題のどちらを選ぶかは、事前に決めておくことが重要です。A問題は教務主任から、B問題は生活指導主任から学校の課題が提示され、それをどのように解決していくかを書くことが求められます。どのように書くかも、明確に提示されます。問題文から引用すると――。

 ①どのように指導に取り組んでいくのか(を具体的に述べる)

 ②志望する校種と教科に即して(書かないといけない)

 ③具体的な方策を2つ(挙げる必要がある)

 ④それぞれ350字程度(で記す)

 ⑤全体で910字以上1050字以内(70分でこれだけは書く)

 東京都の論作文問題は、このパターンを見抜ければおのずと対応方法が決まってきます。また、このパターンを踏まえて各道府県の論作文作成技術を定着させておけば、どのような形態であっても対応できます。他の都道府県の人も、上記問題のテーマ「自分の考えを的確に表現する力を育む」で記述をしてみてください。

 以下に具体例を示します。幾つかの傍線と番号を挿入してありますので、筆者(大池)が何を言いたいのか考えてみてください。これが皆さんへの課題です。

 人に何かを伝える表現力は、これからの社会に適応していくために、①重要なものかもしれない。②近年の学力調査によると、日本の児童生徒は知識技能の習得に一定の成果は見られるが、それらを使って考える力や考えたことを表現する力が十分とされていない。私は中学の英語教員として「自ら発表しにいく」と「表現を学ぶ」の観点から、以下のように取り組んでいく。

1.自ら話しやすい環境づくり ③ 

 生徒が発言しやすいような環境をつくることが④大切である。④いきなり大勢の前で発表をしろと言われても、できる生徒とそうでない生徒に分かれる。その対策として、生徒が1対1で話していく機会を増やしていく⑤つもりだ。⑥私は○○区民講座のボランティアに参加していた際に授業を始める際の会話の練習として「回転寿司」という区民の方が1対1で1分の間話してペアを変えて同じことを繰り返すことに取り組んでいた。このことを積み重ねていくことにより、緊張がほぐれ話しやすい環境につながる。私は、授業を始める前にペアワークを取り入れたいと思う。  ⑦  。英語を間違えてもいいから話し続けることを生徒に知ってもらい、主体的に英語を話すことができるように生徒になじみのある題材を授業に取り入れていきたいと考える。

2.表現を引き出す授業 ③ 

 ⑥生徒が英語で言いたいことがあっても表現することができないのは、自身が話している単語や文法が間違っていることを恐れ、自信がない、話すことが恥ずかしい、などということから来ている。私が⑧参加していたボランティアでは、話す話題に関連する語句などをグループで話し合い出し合う活動を行っていた。その場で出た語句などを用いて話す内容をつくり、会話の練習を行う。この経験から私は授業において⑨間違いを恐れずに会話に臨めるように単語や語句を出し、その場で文をつくる練習に取り入れたい。そうすることにより生徒が今使うべき単語などがはっきりと理解でき⑨場面や状況に応じてどのように使えばいいかが分かるため言いたいことが言える自己表現につながる。教材や英単語などだけでなく本を取り入れることにより場面や状況を正確に把握でき⑨かつ生徒自身の表現力を増やして⑤いきたい

 以上の2点の取り組み以外にも、学校全体として生徒の英語表現力向上のために、外国語指導助手や同僚の教員にも協力を仰ぎ連携していく。生徒が海外の人に英語が通じる喜びを知ってもらい、積極的に英語に関われる⑩教員として努力し続ける覚悟である。

 いかがでしたでしょうか。以下のチェックリストの観点からも確認をしてみてください。

(1)「(仕事が)できる」人材であるふうがにじみ出る文を書く

(2)少し危なっかしくても、この人物に賭けようと思わせる文を書く

(3)児童生徒への愛情がにじみ出る文章を心掛ける

(4)評論家・批評家のような外部者の文章を書かない(組織の一員としての文を意識する)

(5)文字は「大きく」「丁寧に」書く

(6)指定字数の×0.9以上の記述と、誤字脱字のない記述を心掛ける

(7)テーマの繰り返しなど分かりきっていることは記述しない

(8)試験当日までに鉛筆書きに慣れる(H以下の薄い鉛筆は使わない)

 次回は、上記の回答例について解説していきます。

【ちょこっとコラム7 鉛筆で書く練習は早速今日からすべし】

 「文字は人を表す」という言葉があります。大きく丁寧で、おおらかな性格を表した文字を書く。これは一朝一夕にできることではありません。ひたすら練習を重ねてください。マス目(枠)に小さくまとめるのはNGです。可能な限り大きめ、マス目ギリギリでも構いません。人物を大きく見せる工夫が、必要です。また、Hや2Hといった薄い鉛筆は、読みにくく望ましくありません。受験者の答案の原本は役所に大切に保存され、採点者にはそのコピーが渡されます。そのため、文字が薄いとはっきりと読めず、採点者はその段階で良い印象を持てません。できればB、せめてHBの鉛筆で少し筆圧を上げて記述する練習をしてください。読めない文字、薄い鉛筆は命取りになります。


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