【授業づくりのポイント(9)】教育実習を振り返り、自身の教育実践経験を基に語る(小学校編)

東京学芸大学教授・櫻井眞治/東京学芸大学教授・宮内卓也
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A生とB生の「教育実習で心に残ったこと」

 A生とB生は教育実習で心に残ったことを、次のように振り返っている。

 「小学5年生を担当しました。私の学級には、良い考えは持っているのだけれど、なかなか発言することのできない子供がいました。その子のことが気になっていたので、自ら発言したくなるような授業はできないものかと、いつも考えて取り組んでいました。そこで、『漢字のつくり』について学ぶ授業で、その子の名前にある漢字を教材として提示しました。すると、表情がぱっと明るくなり、自ら挙手・発言ができたのです。その姿がとてもうれしかったです」(A生)

 教育実習生が、その子が力を発揮する授業はできないものかと工夫して実践し、子供がその思いに応えてくれた。振り返りからは、A生が子供の可能性を実感したことと、子供の成長に関わることができた喜びが伝わってくる。

 「小学4年生を担当しました。わんぱくな男の子たちがいて、最初のうちは私の指示を聞いてくれないことが続き、とても困っていました。しかし、授業を通して子供たちと関わるうちに、少しずつ子供たちの様子が変化してきました。『学生が来た』と思っていたのが、『先生なんだな』と思ってくれるようになってきたのです。そして、最終日のお別れ会の時、大泣きをしていつまでも私につかまって離れなかった子供たち。それは、最初になかなか指示を聞いてくれなかった男の子たちだったのです」(B生)

 教育実習を通して、B生と子供たちとの心の触れ合いがぐっと深まり、その関係性が変化していった。B生は「学生から先生になる」という経験をしたのである。

自身の教育実践経験を基に語る、書く

 このように、教育実習日誌、学習指導案、授業や子供の記録などから、教育実習で学んだことを振り返ってみるとよい。また、教育実習の評価規準を基にして、成果と課題を明確にしていくこともできるであろう。

 A生とB生のように、教育実践の経験を採用試験に生かしていきたい。形成的評価に基づいた授業づくり、子供の主体性の発揮、子供の自信、教育実習生の喜び、教育実習生の困り、授業を通した子供との関係の変化……。A生とB生の振り返りには、このようなことが表れている。きっと、採用試験においてどのようなテーマが問われたとしても、自身の経験を基に語ること、書くことができるのではないだろうか。

 大切なのは、「十八番(おはこ)」となるエピソードを持つことである。借り物ではない、自分自身の経験に基づいた言葉で語ること、書くことは、相手の心に響き、説得力をもって伝わるからである。

 教育実習ができることに感謝する気持ちを忘れず、一人一人の子供の成長を願って関わることを通して、子供の可能性、教育のロマン、教職のやりがいを、ぜひ実感してきてほしい。

(第9回担当・櫻井眞治)


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