【教員志望者のためのSDGs入門講座(9)】常に改善と変革をし続けて

大阪公立大学教授 伊井直比呂
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 前回、ESD実践(学習)の3段階の特徴を記しました。そして、その学習が持続可能社会の創造に向けた素養(主体性、当事者性、参加意欲、多様性の受容力、問題・課題発見力、考察力、探究力、協働する力、責任感、態度や振る舞い、最適解を導く力など)を高めることに結び付くことを関連付けました。

 もちろんこれらは学習者の能力を測るような一定の評価項目としてではなく、学習者自身が自己の背景や事実を引き受け、また自己のありようから出発して自らの権威によって課題に臨む個々の力の発展の要素と言えます。このことは学習者中心の「権利に基づく教育」を土台とする「質の高い教育と学習」とされます(GAP原則5、UNESCO)(連載第6回)。

 では、これらESDはどのようにSDGs達成に貢献するのでしょうか。改めてSDGsの全文「我々の世界を変革する 持続可能な開発のための2030 アジェンダ」に記された「目指すべき世界像」を見てみましょう。

 まず、宣言4には、「(誰一人取り残さない)この偉大な共同の旅に乗り出すに当たり、われわれは誰も取り残されないことを誓う。人々の尊厳は基本的なものであるとの認識の下に、目標とターゲットが全ての国、全ての人々および社会の全ての部分で満たされることを望む。そしてわれわれは、最も遅れているところに第一に手を伸ばすべく努力する」(外務省訳)と記されています。

 これによりますと、SDGsの17の目標群と169のターゲットの捉え方として、例えば、「日本ではどの目標が達成されているのか」や、「〝飢餓をゼロに〟の目標は途上国での問題だから私たちには関係がない」というように単純に「国家単位」の達成度の問題として扱うことは的を外していると言えます。大切なことは、「人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒し安全にすること」(前文)から、「誰一人取り残さない/取り残されない」ためには、目標群が「全ての人々及び社会の全ての部分で満たされ」なければならないということです。

 したがって、私たちは自己、学校、地域、国内、世界の全てのレベルにおいて常に改善と変革をし続け、力を合わせて「目指すべき世界像」(宣言8、宣言9)へ到達する学習と変革をしていくわけです。実践ではまずこのことを意識し、かつ学習者のまなざしを大切にして段階的に取り組みます。

 最初にSDGsの各目標が設定された背景や問題そのものを知る必要があります。例えば、さまざまな差別や不平等は人の何を奪うことになるのでしょうか。あるいは海や陸の豊かさが喪失された実態とその影響はどこまで連鎖するのでしょうか。もちろん発達段階による多様なプロセスが考えられます。

 次に、これら問題の原因などが身近な生活や社会とどのようにつながっているかなどを発見したり、探究したりすることが考えられます。また学習者視点で同種の問題が身近なところで起こっていることなどに気付くと、可視範囲での達成につながります。

 そして、問題に対する解決方法を考察する段階に至ります。重要なことはその「解決」が一方の目標を切り捨てたりするような矛盾状態になる場合がある、ということです。

 この点について次回に続きます。

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