【教員志望者のためのSDGs入門講座(10)】 目標をどう扱うか

大阪公立大学教授 伊井直比呂
この連載の一覧

 前回のSDGsの実践例の続きです。前回、実践の3段階目の「問題に対する解決方法を考察する段階」を示しました。その「解決」は私たちが直接的に課題を解消させることには至らないことばかりでしょう。しかし、自らが問題の一因を担う当事者であることが発見できれば行動を変えることができます。

 ご存じの通り海洋に放出されるマイクロプラスチックやレジ袋などのプラスチックごみが海洋生物の胃から大量に発見されることを知ると、私たちが原因を作っているとの認識でマイバッグを利用するようになりました。

 また、貧困問題では、例えば、国際的には、紅茶やコーヒー、カカオなど海外から輸入される嗜好品など一次産品の中には、多くの場合に安い賃金で働く労働者(児童労働を含む)によって生産されたものがあり、それが輸出国の貧困の原因ともなっている事実を知る必要があります。同時に、指値注文という生産者にとっては不利で「公正」とは言えない商品取引(貿易)が行われていることも知ることができます。つまり、私たちの「よりよい商品をより安い価格で購入しようとする当然の消費行動」が生産国の低賃金化や貧困の一因ともなっているわけです。

 それ故に私たちはあえて値段の高いフェアトレード商品を購入するような消費行動へと移行することも行われています。同時に、フェアトレードを推進する企業が国際的に登録される「認証制度」があり、私たちの消費行動によっては「目標1・貧困をなくす」こと。そして、子供たちが児童労働を逃れて学校に通えるようになれば「目標4・質の高い教育をみんなに」が実現できます。これらは「学び+問題意識+探究+協働+身近な生活化」という学び(教育)を通じた持続可能社会づくりの一員化であり、グローバル・シティズン(目標4・7)の達成の姿ともなります。

 一方、前回、場合によっては「(ある)『解決』が一方の目標を切り捨てたりするような矛盾状態になる場合がある」ことを記しました。例えば、社会学の視点を借りますと、日本は超少子高齢社会による人口減少の「縮小社会」です。この結果、地方や中山間地域では次々と学校が消え、遠方の学校へバス通学をするような地域が増えました。教育だけではありません。医療を含む福祉サービスが縮小されて行きます。これではますます地域再生には程遠くなります。つまり、「目標11・住み続けられるまちづくり」と「目標3・全ての人に健康と福祉を」、そして「目標4・質の高い教育」はセットで達成されるべきことかもしれません。

 しかし、SDGsに取り組む時、なぜかある特定の目標だけが取り上げられて他の目標へのアプローチが考慮外に置かれることがあります。他にも、新型コロナウイルス感染の事例では、「目標3/ターゲット3・伝染病根絶」からのみで捉えられるべきことではなく、感染者や医療従事者らを忌避・排除することのないように「目標4/ターゲット7・人権」も同時に並行させた上で、高次に止揚された解決策を生活の中で具体化して行く必要があります。

 以上のように、目標を個別に実践化できる場合と、一見すると矛盾するような目標を同時に扱うべき実践とが求められます。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 

特集