【実例で学ぶ論作文講座 (11)】神奈川県の過去問を使った演習

明海大学外国語学部教授/教職課程センター副センター長 大池公紀
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 いよいよ各都道府県の教員採用試験が始まります。これまでの皆さんの蓄積の全てをその一点に出し切るつもりで頑張ってください。今回は、神奈川県の2019年度2次試験の論文の問題を提示します。

 神奈川県では、生徒や学校等の実態に応じ、教材・教具や学習ツールの一つとしてICTを積極的に活用し、必要な資質・能力を育成する主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に取り組んでいます。このことを踏まえ、あなたは、ICT活用の利点を生かした授業実践にどのように取り組みますか。ICTを活用する意義や狙いとともに、あなたの考えを600字以上825字以下で具体的に述べなさい。

 上記は中学校・高校の問題文ですが、小学校では「児童」に書き換えられています。全体としては新しい教育の流れの中で、ICTをどのように活用していくかを述べることが求められています。文字数の条件は「600字以上825字以下」となっているので、最低でも上限の9割に当たる743字(825×0.9)以上、理想は800字以上です。この字数であれば、序論・本論・結論の三論構造を土台に論作文の「黄金比」を活用しながら、本論を2本構造にするのがよいでしょう。

 設問中にいくつか下線を引いておきました。この下線部分を意識しながら記述していきましょう。

 技術上のポイントはこれまでの連載で示した通りで、それらを参考に、自分自身の「集大成」を書くつもりで執筆を試みてください。以下に模範回答例を示します。

 Society5.0の到来に向けて、生徒がICTを十全に活用できる能力育成を図る教育の情報化推進が求められている。現場にはタブレット端末が配布されたものの教師がICT活用方法や授業改善への情報を共有ができていないことによって、生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に結び付いていない現状がある。こうした課題を踏まえ、私は高校の英語教師として以下の2つの観点から発達段階に応じた学びの質の向上に結び付く指導に全力を尽くす。

1 ICTを活用して分かる授業づくりを実践する

 私は、いまだに存在する板書中心の授業像をICT活用によって改革する。授業資料や動画をICT画面で共有し、生徒が作成したものや意見交換をプロジェクター画面に投影することで、視覚的理解の深化を促す。授業データや課題、発展問題等を共有フォルダに残すことで、生徒がいつでも学習できる環境を作り出す。生徒の自己評価を生徒自身の課題発見に結び付けながら、私自身の事業改善に生かす。ICT活用には教員間にも得手・不得手がある。私は学校全体の教育力の向上に貢献できるように、これらの授業に関わる情報を学年や学校内で共有できるシステムを提供する。

2 ICTを活用して主体的に考えることができる授業を展開する

 問題を発見・解決する力を定着させるには、自らが主体的に考え収集した情報や与えられた情報を整理・活用することが重要である。私はICTを活用し、与えられた英作文の条件をまず生徒個人に問題解決を図らせる。次にグループでタブレット端末を通じて集めた情報や解答を共有し、協働してさらにより良いものをつくり上げ発表させる。これによって日常の中で必要な情報活用能力を英語学習を通じて身に付けさせる。

 ICTは学力向上に直結した魅力的で有用なツールであるが、その活用にはモラル意識の形成も必要である。私は授業の質的向上を図りながら、県民から託された生徒たちを危険から回避させる教育の実践も並行して実施する決意である。

 少し力が入り過ぎている感もありますが、出題者の意図を踏まえた文章が書けていると思います。今回は上限が850字のため、教育実習やボランティア活動などの経験は加えていませんが、指定字数がこれより多い場合はそれらも書き記して具体性を高めてください。逆に上限が600字程度の場合は、本論を一つ削って対応しましょう。「本論2」の別の模範回答を以下に示しておきます。

2 情報活用能力の向上を図る授業づくり

 ICTは学力向上に直結した有用なツールであるが、その活用にはモラル意識の形成も必要である。私は特別活動や探究の時間を活用して、情報活用の光と影について学習する機会を設定する。著作権や活用上のマナー・ルールなどについてロールプレーを取り入れながら体験的に課題をクローズアップさせ、課題などを浮き彫りにする話し合いをさせながら危機回避の視点で対応能力の向上を図る。

 日本社会は新型コロナウイルスを乗り越え、新たなフェーズに突入してきているようです。そうなると教育の変革も「待ったなし」で加速します。「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現する「令和の日本型学校教育」の構築のためには、ICTを使った情報活用能力や情報モラルの育成、教員のICT活用指導力向上が必須のファクターになります。これら教育の情報化は、教員採用試験のキーワードとなり得ますので、ラストスパート時には最新動向をチェックしておきましょう。

【ちょこっとコラム9 読み手を意識し、文章であっても「演じる」べし】

 本連載で繰り返しお伝えしてきたことの一つに、「読み手を意識して書く」ということがあります。私は学生の面接指導の場面では、「演じる」ことを強く主張します。たとえ30分であっても、与えられた面接の機会の中で「力ある人物」「信頼に足る人物」であることを全力で面接官に伝える、そのためには舞台に上がった役者のごとく「一流の演者」となるのです。

 これは、論作文でも全く同じことが言えます。自身が「育てがいがある人物」「実践力がありそうな人物」であることを文章中で「演じる」ように書き、端々でそれらを読み手に伝えていくのです。


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