教員採用試験に出る教育時事ランキング2022

教員採用試験の教職教養で鬼門と言われる「教育時事」。
問題集や参考書のみで対策するのは非常に難しく、「どの資料」の「どの部分」が出るか、検討をつけること自体に苦労している方も多いはず。
そこで、月刊『教員養成セミナー』元編集長で教育ジャーナリストの佐藤明彦氏が、独自に収集した膨大なデータから2021年実施試験を分析し、2022年実施試験の傾向と要チェックな資料を予測します。

目次

難解な教育時事をどう攻略するか

教職教養の中でも、最も対策が難しい領域が「教育時事」です。中央教育審議会の答申や文部科学省の通知などは内容が難解な上に、新しいものが次々と出てくるからです。加えて、問題集や参考書等にもほとんど載っておらず、「どの資料」の「どの部分」が出るか検討をつけるのは非常に困難です。

教育時事で扱われる答申・資料等は実に幅広く、2021年度実施試験では83種類、2020年度実施試験では74種類に上りました(筆者調べ)。その半数以上は、出題が1自治体のみというマイナーな資料です。教育時事対策がいかに難しいかがお分かりいただけるかと思います。

「的を絞って」対策

推奨しているのは、ある程度「的を絞って」対策することです。数ある資料の中から10~15程度にターゲットを定め、よく問われる内容・用語だけを徹底的に覚えていくのです。

もちろん、試験本番では必ずしもそれら10~15の資料から出されるとは限りません。しかし試験対策に費やせる時間は限られています。出題範囲が広大な教育時事対策に労力を使いすぎると、他の部分が疎かになりかねません。

2021年教員採用試験 教育時事の出題数ランキング

資料別の出題数ランキングをまとめると以下のようになります(資料名をクリックすると資料提供元にアクセスできます)。

2021年 出題ランキング

順位出題資料(外部リンク)出題自治体数
1位「令和の日本型学校教育」の構築を目指して ~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(教育課程部会による「審議のまとめ」を含む)23
2位教育の情報化に関する手引(「追補版」(2020年6月)を含む)13
3位幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)※関連資料・通知を含む10
4位人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]9
5位不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)8
6位いじめの防止等のための基本的な方針[平成29年3月改定]6
7位第3期教育振興基本計画5
7位共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)5
7位新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)5
10位発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン~発達障害等の可能性の段階から,教育的ニーズに気付き,支え,つなぐために~4
10位交流及び共同学習ガイド4
教育時事の出題状況一覧(資料別)


全国の自治体でどの資料が出題されているのか、一目で分かります。どのような用語がよく問われているのかも含め、確認しましょう。

▼2020年以前のランキング(参考)

よく出るもの、出題が増えているものは

最頻出は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」
昨年度の本コーナーで、「来年度、最も要注意な資料」とお伝えしていた「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」が、大方の予想通りダントツの1位となりました。出題自治体数は23自治体と、全体の約3分の1にも上ります。当然、2022年度実施試験でも要チェックの資料です。
空欄補充問題でよく問われたキーワードは、「個別最適な学び」「協働的な学び」「指導の個別化」「学習の個性化」などです。これらの用語は、子供たちの学びが大きく変革していくことを意味するもので、それぞれの意味を説明できるレベルまで理解しておきたいところです。文科省のサイトに概要が掲載されているので、参考になさってください。

「教育の情報化に関する手引」
2020年度の3位から順位を一つ上げたのが「教育の情報化に関する手引」です。2019年12月に約10年ぶりの改訂版が出され、さらには2020年6月には「追補版」が出されました。周知の通り、コロナ禍で「GIGAスクール構想」が前倒しされ、全国のほぼ全ての小中学校に1人1台のデジタル端末が配備されました。昨今は、学習者用デジタル教科書の導入も進むなど、学校のICT環境は目まぐるしく変化しています。こうした状況を見ても、この手引からの出題は、当面の間続きそうです。
空欄補充問題で問われている用語は非常に幅広く、的を絞るのは難しいですが、「情報モラル」「情報活用能力」「個別最適化された学び」「プログラミング的思考」などの用語は押さえておきたいところです。

「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」
学習指導要領改訂に関わる中央教育審議会の答申は、公表されてから5年が経過しましたが、2021年度も10自治体が出題し、3位にランクインしました。以前に比べれば減りましたが、2022年度試験でもノーマークにするわけにはいかなさそうです。
学習指導要領の総則にも出てくる「社会に開かれた教育課程」「主体的・対話的で深い学び」「カリキュラム・マネジメント」などの用語は、その概念も含めて理解しておきたいところです。

「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」
もう10年以上前に出された資料ですが、ここ数年で出題する自治体がじわじわと増え、2021年度実施試験ではついに4位にランクインしました。児童生徒の多様化が進む中で、学校ではこれまで以上に人権への配慮が求められているとの見方ができます。
空欄補充問題で問われている用語に共通性がなく、非常に対策が難しい資料です。なので、ざっくりと全体に目を通し、現場の教師にどのような人権感覚が求められているのかを押さえておく程度がよいと考えます。

「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」
2020年度実施試験では1位でしたが、2021年度は4ランクダウンして5位となりました。ただ、出題自治体数は10→8とさほど減っているわけではないので、引き続き最重要資料と捉える必要があります。重要用語を押さえておくとともに、不登校対応の在り方が以前とは変わってきていることなども、この通知を通して理解しておきたいところです。

「いじめの防止等のための基本的な方針[平成29年3月改定]」
いじめは依然として、学校教育における大きな課題です。この「いじめの防止等のための基本的な方針」の他、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」からも2自治体が出題しています。いじめの定義、重大事態の定義などを中心に、要点を押さえておきましょう。

「第3期教育振興基本計画」
2020年度の2位(9自治体)から7位(5自治体)へと順位が下がりました。その要因として、この計画を受けて各自治体が個別に「○○県教育振興基本計画」を策定し、そこからローカル問題として出題されていることとが挙げられます。つまり、ローカル問題対策という意味でも、この計画の概要を押さえておくことは有効です。

「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」
 約10年前に出された報告ですが、いまだ多くの自治体が出題しています。特別支援教育関連の資料は他にもありますが、問われる内容や用語は「共生社会」「教育的ニーズ」「合理的配慮」「交流及び共同学習」など共通するものが多いので、この報告をしっかりと対策すれば、他の特別支援教育関連資料から出された場合も対応できる可能性があります。

「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」
 2020年は6位(6自治体)だった働き方改革の答申は、2021年度も7位(5自治体)と、多くの自治体が出題しました。特によく問われているのは、答申内で示されている「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」の3区分についてです。最低限、ここだけでも押さえておきましょう。

2022年実施試験で初出題が予想される資料

教育時事の対策が困難な理由の一つは、過去に出題されたことのない新しい資料から出題される可能性があることです。2021年実施試験では、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」が、初登場で1位(23自治体が出題)となりました。2022年度試験では、どのような資料が初出題されそうなのかを見ていきます。

文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(2021年6月)
2013年に公表された「教育支援資料」(2021年度実施試験では3自治体が出題)の改訂版に当たるものです。特別支援教育については、障害の有無にかかわらずさまざまな子供が共に学ぶこと、一人一人の教育的ニーズを踏まえて「連続性のある多様な学びの場」を整備することなどが以前から提唱されてきましたが、その方向性はこの資料も踏襲しています。全文を読むのはなかなか大変なので、文部科学省から出ている通知を読んでポイントをつかむとよいでしょう。

文部科学省「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)」(2021年8月)
2021年8月に出された通知です。通知名だけだと何なのかは分かりませんが、端的に言えば「学校で働く教員以外の職員」に関連する通知と言えます。学校教育法施行規則が改正され、新たに「医療的ケア看護職員」「情報通信技術支援員(いわゆる「ICT支援員)」「特別支援教育支援員」「教員業務支援員(いわゆる「スクールサポートスタッフ」)などが法令に位置付けられました。この通知には、各職員の職務内容などが書かれているので、目を通して理解しておきましょう。

閣議決定「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針について」(2021年12月)
中教審の答申、文科省の通知ではない資料なのでどれだけ出題されるか未知数な部分はありますが、話題の「こども家庭庁」の創設について定めた閣議決定です。全文の他に、計5枚にまとめられた「ポイント」が公開されているので、こちらを中心に対策をするとよいでしょう。

その他に、現在改定作業中の「学校安全の推進に関する計画」も、2022年3月までに公表されるようならば注意が必要です。奈良県のように最新の資料からよく出す自治体の受験者は、2022年2~3月に出される答申・通知などをチェックしておきましょう。

【佐藤明彦】合格を勝ち取る教採対策講座 ウォーミングアップ編
月刊『教員養成セミナー』前編集長/教育ジャーナリスト 佐藤明彦氏
月刊『教員養成セミナー』前編集長/教育ジャーナリスト 佐藤明彦氏

合格者に、試験対策をいつごろスタートしたかを聞くと、「試験前年の10月ごろ」と言う人もいれば、「年明けごろ」と言う人もいます。中には、「直前の4月ごろ」という強者もいますが、これはやや例外的で、確実に合格を勝ち取りたいのであれば、前年の秋ごろには着手した方がよいでしょう。最初にすべきは試験内容の確認です。教員採用試験は自治体単位で行われ、試験内容も自治体ごとに異なります。まずは募集要項を見て、筆記試験、面接試験、論文試験、実技試験などの中から、自分が何を受けなければならないか確認しましょう。

※2020年実施教員採用試験の合格率。学割購読者から抽出した519名を対象にしたアンケート結果(回収率23.3%)。

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