上越教育大学教職大学院教授 西川純

「学び合い」を一緒に
私の教師としての原体験は、最初に勤めた定時制高校です。学力的には最底辺で、分数の計算ができない生徒が多数を占める学校でした。生徒の中には暴走族とそのOBやOGも多数いました。そんな生徒たちに物理を教えたのです。当然、駄目でした。 ただ、先輩教師には恵まれました。先輩たちに慰められ、教えられて教師として成長することができました。しかし、どこまでやっても全員の生徒に学習内容を理解させることはできませんでした。私がしたのは、全生徒を分かった気にさせることです。これはできました。なぜなら、生徒の多くは「分かる」感覚を体験していないからです。生徒に「お前は分かっている」と言えば、生徒はそう思っていました。 生徒たちが抱えている業の深さと重さを知ったとき、私はおののきました。……

元東京都立西高等学校長 石井杉生

 前回は、C(検証)段階の課題として、集計に要する膨大な作業時間を挙げたが、これはカードリーダーの導入で簡単に解決した。  カードリーダーの導入で、担当者が約1カ月かけていた集計作業は、わずか数時間で終わってしまった。初期投資は、カードリーダーの数万円だけ。マークシートカードは1枚7円で、生徒と保護者合わせて2千枚。合計1万4千円程度、これがランニングコストである。  しかも、このカードリーダー導入には、思わぬ副産物があった。……

スクールロイヤーに対する相談で多いのは「保護者対応」と呼ばれるものである。そこには、さまざまな事案が含まれている。よくあるのは「無理な要求をする困った保護者にどう対応するか」である。  保護者の要求には、自己中心的な考えとしか思えないものや、不当とまでは言えないが学校として受け入れることが困難なものがある。このような要求が繰り返し出された場合、直接関わる学校としては、保護者に対して対立的な見方になるのもやむを得ない面がある。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門家から助言を受けることで、効果的な対応策が見つかる場合もある。  学校は、これら専門家からの意見を参考に、保護者の行動や考え方の傾向・特徴の背景を理解でき、適度な距離感を保って対応することが可能になる。……

上越教育大学教職大学院教授 西川純

カリキュラム・マネジメントとは、子供と教師の一生涯の幸せを保証するために教師集団がアクティブ・ラーニングをすること。それを成功させるにはどうしたらいいでしょうか。 第一に、その理論と方法が教科横断的である必要があります。例えば、国語科教師と社会科教師が考えるアクティブ・ラーニングの理論と方法論が違っていれば主体的・協働的に学べません。せいぜいiPadのようなツールの使い方でしか通じ合えません。 第二に、効果がなければいけません。……

元東京都立西高等学校長 石井杉生

前回は、D(実行)段階の課題として、ジョブアサインメントが明確でない点を挙げた。今回は、C(検証)段階の課題について考えてみたい。いわゆる学校評価である。 学校評価については、学校教育法第42条で「小学校は、文部科学大臣の定める所により当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い、(以下略)」と定めている。43条では「当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとする」としている。 この規定は、小学校だけでなく、中学校や高校などへも準用されている。……

学校からの相談事例には、児童生徒の問題行動や保護者対応での困難事例が多い。児童生徒の問題行動では▽他の児童生徒と教師に対する暴言・暴力や注意・指導をしても規律違反が減らない▽反抗的でうそが多い――など。保護者対応の相談では、▽精神上の課題や虚言、矛盾な挙動▽思考過程が不明瞭で情緒も不安定なために話し合いのらちが明かない▽学校攻撃が繰り返されて疲弊感や閉塞(へいそく)感で教員が押しつぶされそう――などである。いずれも困難な問題だが、解決に向けたモデルケースにこんな例え話がある。 注意欠陥多動性障害の疑いがある男子児童が、数人の児童らと集団下校していた際、転倒して膝を擦りむいて泣いたので同級生らが保健室に連れてきた。担任も駆け付け、養護教諭とけがの状態を確認した後問題がないと判断。児童に「男の子なのだから泣いてはいけない」と励まし、泣いている背中を「ポン」と押して帰宅させた。翌日、保護者から学校に「子供が先生にたたかれたと言っている。痛がる子供を叱りつけ無理やり帰宅させた。『体罰』『人権侵害』ではないか」「普段から担任には粗暴な振る舞いがみられると保護者から心配の声が上がっている。学校は問題を把握していたのに放置していた責任がある」と苦情が寄せられた。 校内研修でこの話をすると、多くの教員は「保護者・児童生徒対応の困難事例だ」と感想を述べた。……

上越教育大学教職大学院教授 西川純

 連載の最初に述べたように「カリキュラム・マネジメントとは何か」の正解を探すのは無駄です。正解などありません。  一人一人が自分のカリキュラム・マネジメントを想像する必要があります。私はカリキュラム・マネジメントとは、子供と教師の一生涯の幸せを保証するため、教師集団がアクティブ・ラーニングをすることであると考えています。それは答申の中にもあります。  現学習指導要領の背景になっている中教審答申にも、カリキュラム・マネジメントについて書かれています。……

eye-catch_1024-768_takashina-school教育創造研究センター所長 髙階玲治
 教職員支援機構による図書『主体的・対話的で深い学びを拓く』(学事出版、2018)を読んだ。特に機構内に設置された次世代型教育推進センターの諸論考は興味深かった。機構の前身は教員研修センターであるが、このような図書発行は初めてであろう。より啓発的な組織となったことに期待したい。  機構内センターは、何校もの実践フィールド校を抱えていて、各校のアクティブ・ラーニング(AL)の3年間の実践について、センター研修協力員(各地域の教員)がそれを観察し、テーマに応じて分析的に解説を行っているものである。  特にALは中・高校の授業実践を大きく変えるものとして影響力が大きいが、その意味では始まったばかりの授業実践の感じであった。……

元東京都立西高等学校長 石井杉生

 今まで、計画(P段階)の課題を述べてきたので、今回は実行(D段階)の課題に触れてみたい。  この実行段階の課題は、一言で言えば、ジョブアサインメントができていないということである。ジョブは仕事でアサインとは割り振るという意味。つなげれば、仕事を一人一人に割り振ることを意味する。  リクルートワークス研究所の用語解説によれば、「ジョブアサイン力は、マネジャーの部下育成スキルともいえ、どれだけストレッチした目標、役割を与えられるかで、人材の成長も組織力の向上も左右される。……

対教師暴力を振るった生徒に対する被害届を出すべきかどうか――。スクールロイヤーの下には、時にそんな相談も入り込む。通り一遍の法的アドバイスだけすれば、「被害を受けた教員が決めることができる」の言葉にとどまるであろう。 スクールロイヤーとして相談を聞く際、取っかかりになるのは、当該生徒がどうして暴力行為に及んだのか、動機を含めた背景や事情を探ることだ。 教員とカンファレンスの場も持ち、当該生徒のこれまでの学校生活の様子、友人関係、家族構成や家庭環境などを聴取する。……

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