【連載】教育現場の課題をひもとく アクティブ・ラーニングⅡ① 「新しい」のか「今さら」なのか

(一財)教育調査研究所研究部長 寺崎千秋

文科大臣からの中教審への諮問「初等中等教育における教育課程の基準の在り方について」(昨年11月20日)では、新しい時代を生きる上で必要な資質・能力およびそのために必要な学習・指導方法や評価の在り方の検討を求めている。

なかでも「何を教えるか」という知識の質や量の改善とともに、「どのように学ぶか」という学びの質や深まりを重視し、「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や、そのための指導方法などの充実の必要性を強調している。

「アクティブ・ラーニング」については、前述の諮問文の中で「子供たちが基礎的な知識・技能を習得するとともに、実社会や実生活の中でそれらを活用しながら、自ら課題を発見し、その解決に向けて主体的・協働的に探究し、学びの成果を表現し、更に実践に生かしていけるようにすることが重要である」と趣旨を論じている。

アクティブ・ラーニングはこれ以前の中教審でも取り上げられ、次のような解説がされている。

「教員による一方的な講義形式の教育と異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」(同答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」(平成24年8月28日。その用語解説から)。

このほかにも、京都大学の溝上慎一教授はその著書で、概念規定を提示している。「一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこに生じる認知プロセスの外化を伴う」(溝上慎一著『アクティブ・ラーニングと教授学習パラダイムの転換』(2014、東信堂))

アクティブ・ラーニングが脚光を浴びて以来、その反応を捉えてみると、おおむね次の2点に分けられる。

1つは「これからはアクティブ・ラーニングが教育課程における新しい視点であり、これに取り組む必要がある」という受け止めである。他の1つは「アクティブ・ラーニングと騒ぐが、義務教育ではこれまでもずっとやってきたことではないか。何を今さら」というものである。

しかしながら、これらはいずれも見直す必要がある。その理由は、次の通り。

前者については、アクティブ・ラーニングの意味するキーワードである「課題の発見・解決」「主体的な学習」「協働的な学習」「能動的な学習」「発見学習」「問題解決学習」「体験学習」「調査学習」などは、少なくとも戦後において取り組まれてきたものであり、目新しいものではない、ということによる。後に述べるが、教育課程編成の基準である学習指導要領においても、何らかの形でこれらが大切にされていることも周知の事実である。したがって、何か全く新しいものに取り組むという感覚は、ずれているといわざるをえない。

後者については、前述のように間違ってはいないが、アクティブ・ラーニングが「新しい時代を生きる上で必要な資質・能力」の育成とそのための学びの質や深まりの重視という視点から求められているということ、いわば新たな付加価値を求められていることを認識する必要がある。

知識・技能の習得を重視してきたこれまでの教育課程から、そればかりでなく資質・能力の育成を重視する教育課程においてアクティブ・ラーニングが求められているのである。

以上、アクティブ・ラーニングの捉え方を確認し、今後取り組むことが必要である。