【連載】探偵がみた学校といじめ 第7回 被害者も加害者も“その後はひどい”

NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部泰尚

 

被害者も加害者も“その後はひどい”

私は、あるネット上のコミュニティに参加をしている。過去にいじめを受けた人、いじめをいま受けている人、その保護者が集まる掲示板のようなものである。表面上は克服したかのように見えるいじめ体験者は、声をそろえてこう言う。「いじめられていたあの時期は、私の人生の中でポッカリと穴が空いたような時期なのです」。

彼らは、いじめによって青春を奪われていた。いじめによるトラウマは、周囲との関係性を悪化させ、人の好意を信じられず、常にネガティブな対応しかできない人間をつくり出す。

39歳になるある男性は、体が大きいというだけで幼稚園児の頃から中学生の終わりまでいじめを受けていた。彼のいじめ体験は壮絶だった。上履きに給食の牛乳を入れられて飲まされたり、息がつまるまでコッペパンを口に詰められたり、殴る蹴るは日常であった。学校はほとんど行かず、高校にも進学せず、いまだに部屋に引きこもっている。家族以外の人を恐れ、大声を聞いただけで体が萎縮してしまい、大勢の人を見ると足がすくむようになってしまった。

現在、自室でパソコンに向かっているときは、雄弁にキーボードを叩き、ネットワーク型のゲーム内では縦横無尽に動くことができる彼であるが、いじめの影響からかそのコミュニティの中でも卑屈な発言ばかりを繰り返し、仲間たちから相手にされなくなってしまった。

病気やけがには、よい薬があったり、治療法が確立されているが、心の傷には有効ではない。ただ、その時、誰かが親身になってくれたり、寄り添ってくれることがあれば傷は癒やされたのではないだろうか。

加害者についても同様のことがいえる。私は本業では、詐欺師なども追跡するが、10年以上もやっていれば、過去の調査対象者を再捕捉することも時にはある。過去、いじめの加害者として接したことのある子が、成人して詐欺をしていたという事例があった。事件は背後に反社会的勢力が絡んでいると言われていたが、その末端として彼は私の前に姿を現したのだ。

彼のことが気にかかったので、いじめ事案のその後について調査をしてみると、彼は過剰に保護されたせいで、貴重な更生のチャンスを失っていた。その後の彼は、物事の解決手段を暴力に頼るようになっており、それによって自らの欲求を達成させていた。結果、彼自身が暴力の世界に取り込まれ、再び私に捕捉され実態を解明されてしまったわけだ。

いじめは初期消火が最も重要というのは、被害者にとっても加害者にとっても心の傷が深くならず、自然治癒できるレベルで止めるために効果的だからであると私は思う。

その場だけでの対処や解消のみではいけない。いじめ加害者への教育や被害者へのフォローは継続し、予防と初期消火をするための具体的な対策をつくるのが望ましい。

子どもたちが学校に戻れるようになる第一段階は、いじめの解消であり、重要な第二段階は、具体的な再発防止策が存在することなのだ。私が知る限り、被害者のその後も、加害者のその後も、ひどいものである。

▽NPO法人ユース・ガーディアン=探偵業のノウハウを生かし、客観的ないじめの実態を調査、レポートを作成するなどして数多くのいじめ問題の解決に寄与している。URL=http://ijime-sos.com/