【連載】探偵がみた学校といじめ 第8回 保護者の願いが探偵呼び寄せる

NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部泰尚

講演会やいじめ対策の話し合いの中でよくある質問が、「なぜ探偵にいじめを相談するんでしょうか」というものである。私自身もいじめの相談が入り始めていたころ、なぜ私に相談してくるのか、疑問であった。

当時、ラジオやテレビでは、「いじめに探偵!?」というテーマでコーナーがあったほど。そこでは、「現代のいじめは、ひどいからだ」とか「教育界自体にいじめを解決する力がないからだ」などと言われていたが、私はそうは思わなかった。なぜかというと、大人社会の歪みがそのまま子どもたちの世界に反映されているという仮説をもっていたからである。

いじめの現場で窃盗の強要や性的な事案などが発生するのは、社会の変容によって、子どもでも実行可能になってしまうほど、大人からの情報が氾濫しているからではないだろうか。だから、確かにいじめの内容は酷いが、子どもをモンスター視できなかった。

さて、なぜ探偵がいじめに、という答えは、単にいじめを認定するにあたり証拠が不可欠、という考えが広がり、教育界が証拠を求めたからに他ならない。

ある地方都市の小学校では、高学年でいじめが頻発していた。主には物隠しや物壊し、落書きなどである。被害を受ければ見た目で分かるため、一部の保護者が学校へ相談にいくと、学校側は「証拠がないので何もできません」と言うだけで、個別の面談もしていなければ、証言すら確認しようとはしていなかった。保護者は私からのアドバイスに基づいて、学校にアンケートを取ることを依頼したが、学校側は、警察ではないので捜査のようなことはしないし、児童を疑うことはしないと主張したそうだ。

とはいえ、校内で発生し、侵入者の可能性がないのならば、児童か職員がやる以外、物は壊れないし、隠されたりもしない。私は調査機材を、被害を受けた子どもの持ち物に仕掛け、様子をみることにした。案の定、子どもたちの声が入り、次は誰のものをやるかという相談やジッパーを開ける音、物が壊れる音などが記録されていた。「証拠があれば教育的な指導をします」という逃げと、保護者の子どもを守りたいという願いが、探偵をその場に呼び寄せたのだ。

その点では、教育界自体に解決能力が足りず、探偵などが出てきたのだとする意見は一見正当に思えるが、そうではないと思うのだ。このケースのように、何もしない学校は言語道断であるが、なぜ学校が証拠を求めるようになったのかと問えば、それは教育的な指導をする場合に何らかの強い根拠に基づかなければ難しくなってきたからであろう。大きくは保護者と学校の関係性の変化に原因があると私は思っている。

相談に来る保護者は、学校と対決する意志を少なからずもっているのかもしれない。私は、学校と対決するのを前提にしてはいけないと訴え続けていかなければならないだろう。その代わり、学校に関わる方には、人は間違えることがあるということを前提に、間違えを起こしてしまった児童生徒には、やれるべき指導を粘り強く続けてほしいと思う。

▽NPO法人ユース・ガーディアン=探偵業のノウハウを生かし、客観的ないじめの実態を調査、レポートを作成するなどして数多くのいじめ問題の解決に寄与している。URL=http://ijime-sos.com/

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